小笠原海溝の底の超深海水を成分分析、JAMSTECが新鋭船「かいめい」で

2018年7月15日 21:53

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海底広域研究船「かいめい」。(画像:海洋研究開発機構発表資料より)

海底広域研究船「かいめい」。(画像:海洋研究開発機構発表資料より)[写真拡大]

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海底広域研究船「かいめい」は、全海洋底に到達可能なフルデプス対応調査船である。今回の研究では、小笠原海溝の観測が行われ、その超深海の海水の成分に関する調査が行われた。

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 地球を包む海水の特徴を把握する研究分野を「海洋学」という。CTD多連採水装置というものがある。現代海洋学の発展には不可欠だった調査機器で、C(Conductivity、電気伝導度)、T(Temperature、温度)、D(Depth、水深)の3成分を連続的に測定し、指定する水深で海水を採取して、船上に上げたり、陸上に持ち帰ったりできる。

 CTD多連採水装置による海洋研究は全世界的に行われているが、水深7,000メートルクラスを超える超深海領域に関しては、これまでCTDによる調査は皆無であった。これは装置そのものの対深海性能の限界と、装置をそこまで運ぶことのできる調査船が少ないためである。

 そこに登場したのが、2016年運用開始の「かいめい」というわけだ。CTDセンサ、12リットルのX型ニスキン採水器を利用する36連採水装置およびフルデプスCTD採水観測を実現する1万2,000メートル長の繊維ケーブルが配備されている。

 今回の研究では、3回の航海で13の観測点と、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」による1航海(3観測点)を加えた計4航海で、伊豆・小笠原海溝を中心としたCTDによる鉛直観測が行われた。

 結果として分かったことは、生物活動の指標となる成分は極めて希薄かつ広範囲に均一に広がっており、これらのエリアにはほとんど生命活動の徴候は見られないということと、メタン、マンガン、有機物などの分布は深海から超深海にかけて一様でなく、複雑な空間分布を描いているということである。

 なお研究の詳細は、欧州地球科学連合(EGU)が主催する科学誌「Ocean Science」に掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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