AI投資の巨額資金調達、米債券市場にも波及―長期金利は20年ぶり高水準

2026年9月26日 19:16

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記事提供元:Tech Times

米国の長期金利が約20年ぶりの高水準に上昇するなか、AIインフラ投資を進める大手テクノロジー企業による巨額の資金調達も、債券市場の供給増加要因として注目されている。原油高や根強いインフレ、米国の財政赤字、追加利上げ観測が長期金利を押し上げる一方、AI関連企業による社債発行の急増が市場に新たな供給圧力を加えている。

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日に3年超ぶりの利上げに踏み切り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.75〜4.00%とした。住宅ローン金利にも上昇が波及し、フレディマックによると、9月24日時点の30年固定住宅ローン金利は平均7.03%となった。

■米長期金利、2000年代半ば以来の高水準

米国債利回りは9月下旬に一段と上昇した。FRBの公表する日次データでは、25日の10年国債利回りは5.18%、30年国債利回りは5.47%だった。市場ベースでは10年債利回りは同日5.17%前後で推移し、長期金利は2000年代半ば以来の高水準にある。

前日の24日には30年債利回りが一時5.50%近辺まで上昇し、2004年以来の水準を付けた。10年債も5.2%台まで上昇し、2007年以来の高水準となった。長期債の売りは米国だけでなく欧州や日本にも広がり、世界的な国債市場の下落となっている。

背景には、インフレがFRBの2%目標を上回り続けるなか、米経済が底堅さを維持していることがある。中東情勢に伴うエネルギー価格の上昇や財政赤字への懸念も加わり、投資家は長期債を保有するためにより高い利回りを求めている。

FRBは9月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FF金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、3.75〜4.00%とした。採決は12対0だった。FRBは経済活動が堅調なペースで拡大する一方、インフレは依然として高いとの認識を示している。

■AI関連の債券発行が急増

長期金利上昇の主因は金融政策やインフレ、国債供給などにあるが、AIインフラ投資を進める大手テクノロジー企業による社債発行の急増も債券市場の供給を増やしている。

モルガン・スタンレーは、AIに関連した世界の債券発行額が2026年に約5700億ドルに達すると推計している。AI向けデータセンター、半導体、ネットワーク、電力設備などへの巨額投資を賄うため、ハイパースケーラーを中心に債券市場から資金を調達する動きが拡大している。

ロイター通信によると、米国ではAI関連企業の旺盛な資金需要を背景に社債供給が急増しており、投資家の選別姿勢も強まりつつある。発行量の拡大によって、AI関連社債にはより高い利回りや新発債プレミアムが求められるケースも増えている。

大手各社は2026年の設備投資計画を大幅に引き上げている。アルファベットは7月、年間設備投資見通しを1950億〜2050億ドルへ引き上げた。マイクロソフトは2026年暦年の設備投資を約1900億ドルと見込んでいる。

メタも2026年の設備投資見通しを従来の1150億〜1350億ドルから1250億〜1450億ドルへ引き上げた。こうした投資はデータセンターやAI計算基盤の整備を中心としており、企業のキャッシュフローだけではなく社債市場を通じた調達の重要性も高まっている。

■国債と社債が同時に供給増

債券市場では、政府と企業の双方による大量発行が重なっている。米国では財政赤字と政府債務の増加を背景に国債供給が高水準で続く一方、AI関連企業も過去にない規模で債券を発行している。

長期債の供給が増えると、投資家がそれを吸収するためにより高い利回りを要求する可能性がある。長期債を保有する際に投資家が求める上乗せ収益は「タームプレミアム」と呼ばれ、国債供給やインフレ、財政見通しなど複数の要因から影響を受ける。

ロイター通信は9月14日、10年米国債利回りが5%を超えた背景として、原油高を受けたインフレ懸念、FRBの政策金利見通し、米国の財政状況に加え、AI関連投資を賄う企業の大型債券発行も供給面から影響していると報じた。

AI関連企業の社債供給だけで米国債利回りの動きを説明できるわけではないものの、巨額の企業債務が投資家の資金を国債と奪い合う構図となり、債券市場全体の需給に影響を及ぼす可能性がある。

■FRBもAI投資の経済効果を注視

ケビン・ウォーシュFRB議長は7月の議会証言で、米国の設備投資が急速に伸び、その大きな部分をデータセンター建設やAI関連機器、ソフトウエアへの需要が占めていると指摘した。

ウォーシュ議長は、AIが経済全体の生産性をどの程度、いつ押し上げるのかはまだ分からないとしながらも、AI投資が経済活動や雇用、インフレに及ぼす影響をFRBが注視していると説明している。

FRBは7月、AIを含む新たな汎用技術が経済に与える影響を検討する「生産性・雇用」タスクフォースを設置した。AI投資が生産能力を高める一方、短期的には設備投資需要を押し上げるため、金融政策への影響も重要な検討課題となっている。

8月のジャクソンホール会議でもウォーシュ議長は、AI関連インフラへ巨額の資金が流入していると指摘した。AIが長期的な生産性向上につながる可能性がある一方、その効果がいつ、どの程度表れるかについては不確実性が残るとの認識を示した。

■FRB、年内追加利上げを示唆

9月のFOMC参加者による経済見通しでは、2026年末のFF金利中央値は4.1%となり、6月時点の3.8%から引き上げられた。現在の誘導目標レンジ3.75〜4.00%の中央値は3.875%であり、中央値ベースでは年内に追加利上げが想定されている。

政策金利見通しを提出した18人のうち、16人が2026年末のFF金利を4.125%以上と見込んだ。現在の政策金利からみれば、少なくとも1回の追加利上げを想定していることになる。

FRBのマイケル・バー理事も9月23日、インフレ率を目標へ戻すためには追加の政策調整が必要になる可能性が高いとの見方を示した。セントルイス連銀のアルベルト・ムサレム総裁も、さらなる利上げが必要になる可能性を指摘している。

追加利上げ観測は短期金利だけでなく、長期国債利回りにも影響を及ぼす。強い経済指標が続けば政策金利が高い水準に長くとどまるとの見方が強まり、債券価格には下押し圧力がかかる。

■住宅ローン金利は7%台

長期金利の上昇は家計の借入コストにも波及している。フレディマックによると、9月24日時点の30年固定住宅ローン金利は平均7.03%となり、前週の6.95%から上昇した。1年前の6.30%も上回っている。

住宅ローン金利は10年米国債利回りと機械的に連動するわけではないが、長期市場金利は住宅金融の資金調達コストを左右する重要な要因である。国債利回りが高止まりすれば、住宅購入者や借り換えを検討する家計にとって負担の重い環境が続く可能性がある。

企業にとっても同様である。社債の基準となる国債利回りが上昇すれば、信用スプレッドが変わらなくても新規借り入れの絶対的な金利水準は高くなる。AIインフラを大量の外部資金で建設する企業にとって、調達コストの上昇は投資採算を左右する要素となる。

■財務省は長期債市場の流動性支援を拡大

米財務省は8月19日、10〜20年および20〜30年の名目国債を対象とした流動性支援のための買い戻しについて、1回当たりの上限を従来の20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げると発表した。

拡大措置は9月9日から11月4日まで実施される。財務省は、長期国債市場で継続的に十分な売却希望があることを踏まえ、市場の流動性を高めることが目的だと説明している。

その後、財務省は10〜20年債を対象とする買い戻しで最大60億ドルを提示したが、国債市場の長期的な供給懸念を解消する規模ではないとの見方も市場では出ている。長期金利は買い戻し拡大後も上昇した。

■焦点はインフレ、政策金利、AI投資の持続性

FRBが9月に公表した経済見通しでは、2026年の個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は3.7%と予測されている。食品・エネルギーを除くコアPCE物価指数も3.4%と、2%の物価安定目標を上回る見通しだ。

長期金利の今後を左右する最大の要因は、インフレと金融政策、政府債務を巡る需給である。そこへAI関連企業の大型社債発行が加わり、国債と社債を合わせた長期債の供給量が増えている。

AI投資は米国の設備投資と成長を支える一方、その資金調達規模が拡大するほど企業は高金利環境の影響を受けやすくなる。今後はAI投資による収益拡大が巨額の設備投資と資金調達コストに見合うかどうかも、株式市場だけでなく債券市場にとって重要な焦点となる。

元記事: AI Bond Wave Drives Treasury Yields to 22-Year Highs, Lifting Mortgage Rates for All Americans

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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