NASAが「宇宙アカデミー」誘致案を募集、2028年開校目標も議会の立法が前提

2026年9月13日 23:34

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記事提供元:Tech Times

米国宇宙アカデミーに関する大統領令を提示するトランプ米大統領。右はNASA長官のJared Isaacman。2026年8月28日、ジョンソン宇宙センターで撮影。写真:NASA/John Kraus

米国宇宙アカデミーに関する大統領令を提示するトランプ米大統領。右はNASA長官のJared Isaacman。2026年8月28日、ジョンソン宇宙センターで撮影。写真:NASA/John Kraus[写真拡大]

NASAは9月10日、構想段階にある「米国宇宙アカデミー」の受け入れを希望する州から提案を募る手続きを開始した。州知事または指定代理人は10月26日までに回答を提出する。政権は2028年の教育開始を目指しているが、アカデミーの制度や卒業後の勤務義務などは今後の検討事項であり、設立と予算措置には議会の立法が必要となる。

■候補地募集を開始、設立には議会の対応が必要

NASAは9月10日、米国宇宙アカデミーの誘致を希望する州を対象とした情報提供依頼(RFI)を公表した。各州からの回答は、州知事または指定代理人が2026年10月26日午後6時までに提出する。NASAは、候補地の概要や整備状況、環境・規制上の条件、周辺の教育・研究・産業基盤などについて情報を求めている。

同アカデミーを検討する「米国宇宙アカデミー大統領委員会」は、トランプ大統領が8月28日に署名した大統領令で設置された。NASA長官のジャレッド・アイザックマン氏が委員長を務め、委員会は9月9日に初会合を開いた。

大統領令が設置したのは、アカデミーそのものではなく、その制度設計を担う委員会である。委員会には、大統領令の署名から120日以内に、アカデミーの設立に必要な事項をまとめた報告書を大統領へ提出するよう求められている。

米国企業研究所(American Enterprise Institute)の宇宙政策専門家トッド・ハリソン氏は、この構想が実現する可能性について慎重な見方を示している。同氏はNewsweekに対し、米国には航空宇宙工学や関連分野で優れた大学がすでにあり、新たな教育機関がNASAや宇宙軍に必要なのか疑問があると述べた。さらに、設立には議会による認可と予算措置が必要であり、その実現は容易ではないとの見方を示した。

■委員会は制度を設計、実施には立法措置も

大統領令によると、委員会は統治体制、組織上の位置付け、認定制度、教育課程、学位プログラム、実地訓練、卒業後の勤務義務、応募資格、恒久的な所在地の選定方法などを検討する。

このうち卒業後の勤務義務については、軍務だけでなく、連邦政府の文民職を含めた仕組みを検討する。市民権、安全保障上のクリアランス、政府職員または軍人としての身分を応募要件にするかどうかも、今後の提言に盛り込まれる予定だ。

委員会は、既存の法的権限で着手できる試行プログラムや大学などとの提携に加え、勧告の実施に必要な立法措置も示す。大統領令は、委員会の提言について大統領の承認を得た後、必要な立法措置と予算の確保を経てNASA長官が実施すると定めている。

米国の陸軍士官学校、海軍兵学校、空軍士官学校は、それぞれ連邦法に基づいて運営されている。宇宙アカデミーを新たな連邦教育機関として恒久的に設置し、予算を計上するには、同様に議会の関与が欠かせない。

ハリソン氏は、委員会が報告書をまとめた後、議会が短期間で法案と予算を成立させられるかは不透明だと指摘する。委員会の120日間の検討期限は2026年12月下旬に当たり、次の議会期との境目に近い。

元NASA首席補佐官でVirgin Galacticの元CEOでもあるジョージ・ホワイトサイズ下院議員は、この構想を「興味深い」と評価する一方、資金と委員会の構成に懸念を示した。委員会に議員が含まれていないためである。同議員は、議会が迅速かつ実質的に関与しなければ、構想が「発射台で足止めされる」と述べた。下院科学・宇宙・技術委員会の民主党筆頭委員を務めるゾーイ・ロフグレン下院議員も、委員会に議会の代表を加えるよう求めている。

■宇宙軍の人員不足、必要数の算定にも課題

アカデミー構想の背景には、宇宙分野で働く人材をどのように確保し、育成するかという課題がある。

米政府説明責任局(GAO)が2026年7月に公表した報告書によると、米宇宙軍の2025会計年度の人員は約1万5400人だった。GAOは、宇宙軍が算定した総人員要件と実際に配置された人員を比較すると、25%の不足があったと分析している。

一方、GAOは、宇宙軍が部隊ごとに異なる分析方法を用いており、一部の部隊では任務の拡大を反映していない古い人員要件が使われているとも指摘した。このため、25%という数値は、正確に確定した必要人員に対する単純な欠員率としてではなく、宇宙軍が現在使用している人員要件との比較として捉える必要がある。

宇宙軍は人員を増やしてきたものの、GAOによれば、採用、訓練、適切な経験を持つ人材の維持は引き続き主要な課題である。さらに、宇宙軍には包括的な戦略的人員計画がなく、任務に必要な人員を一貫して算定する仕組みや、業務を支援する請負要員を正確に把握する仕組みも整っていない。

民間宇宙産業でも雇用需要は拡大している。Space Foundationが2025年に公表したデータによると、米国の民間宇宙産業の雇用は2019年から2024年までの5年間で18%増加した。打ち上げ回数の増加や衛星データの利用拡大に伴い、コンピューター科学やデータ分析、安全保障などの技能を持つ人材への需要が高まっている。

■新キャンパスか、既存大学を活用する制度か

専門家の間で意見が分かれているのは、独立したキャンパスを持つ新たな連邦教育機関が、人材問題への適切な対応策なのかという点である。

ハリソン氏は、予備役将校訓練課程(ROTC)をモデルにした奨学金制度を代替案として提案している。政府が既存大学で航空宇宙などの関連分野を学ぶ学生を支援し、その代わりに卒業後の一定期間、NASA、宇宙軍または他の連邦機関で勤務してもらう仕組みだ。

同氏は、既存の大学と競合する新組織をつくるよりも、大学が育成した人材を政府の宇宙部門へ導く方が効率的だと主張する。物理的なアカデミーの設置には数年を要する一方、奨学金制度なら早い段階から始められるとの考えである。

これに対し、ミッチェル研究所のSpacepower Advantage Center of Excellence所長、チャールズ・ガルブレス氏は、学生や研究者が一つの場所に集まることには、分散した大学プログラムでは得にくい価値があると指摘する。専門家から直接学び、異なる分野の人材が日常的に交流する環境が、新しい発想を生む可能性があるという。

制度の形は、単一の大規模キャンパスに限らない。委員会は、恒久的な施設の規模や、複数の拠点に機能を分散させる可能性も含めて検討する。ガルブレス氏は、単一キャンパスと分散型拠点のどちらを採るかが、事業費を左右する重要な要素になるとみている。

■既存の空軍士官学校も宇宙軍へ人材を供給

宇宙軍には、既存の教育機関を通じた人材供給ルートがある。米空軍士官学校では2026年5月、卒業生931人のうち809人が空軍、93人が宇宙軍の少尉に任官した。

宇宙軍の士官は、空軍士官学校のほか、ROTCや士官訓練学校を通じても任官している。このため、新たなアカデミーを既存の教育・任官制度とどのように役割分担させるかも、制度設計上の論点となる。

セントラルフロリダ大学教授で空軍士官学校の元助教授でもあるエリック・メリアム氏は、宇宙アカデミーが既存の士官学校と異なる特徴を持つとすれば、無償教育と軍務を必ずしも直接結び付けない点になるとの見方を示した。

大統領令では、卒業後の勤務先として軍だけでなく、連邦政府の文民職も検討対象になっている。制度設計によっては、宇宙計画に携わりたいものの軍人になることを希望しない学生にも選択肢を提供できる可能性がある。ただし、学費、学位、定員、勤務義務の期間や具体的な就職先は、現時点では正式に決まっていない。

■有力州が誘致に動く

候補地を巡る競争は、NASAがRFIを公表する前から始まっていた。トランプ大統領は8月28日、テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターで開かれた大統領令の署名式で、テキサス州の誘致への関心を念頭に置いた発言をしている。

テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員は、NASAを所管する上院商業・科学・運輸委員会の委員長を務める。ブライアン・バビン下院議員も下院科学・宇宙・技術委員会の委員長で、ジョンソン宇宙センターを含む選挙区を代表している。

フロリダ州選出のアシュリー・ムーディ、リック・スコット両上院議員は9月3日、ホワイトハウスとNASAに書簡を送り、同州を候補地とするよう要請した。書簡では、NASAのケネディ宇宙センター、ケープカナベラル宇宙軍基地、州内の大学や宇宙関連企業などを強みとして挙げている。

アラバマ州ハンツビルも候補として名前が挙がっている。同地にはNASAマーシャル宇宙飛行センターや米国宇宙・ロケットセンターがあり、米宇宙コマンドはコロラドスプリングスからハンツビルのレッドストーン兵器廠へ司令部を段階的に移転している。

ジョージ・ワシントン大学宇宙政策研究所の創設者で名誉教授のジョン・ログスドン氏は、こうした宇宙関連機関の集積を理由にハンツビルを有力候補に挙げる一方、議会の意向も立地に影響し得ると指摘した。

コロラド州コロラドスプリングスには、移転途上の米宇宙コマンドの機能に加え、複数の主要な宇宙軍部隊と空軍士官学校が置かれている。既存の教育・軍事基盤を利用できる点は、候補地を比較するうえで重要な要素となる。

■委員会に議員は含まれず

委員会はアイザックマン氏が委員長を務め、科学技術担当大統領補佐官のマイケル・クラツィオス氏と経済政策担当大統領補佐官のケビン・ハセット氏が副委員長、NASA副長官のマット・アンダーソン氏が事務局長を務める。

このほか、戦争長官、大統領首席補佐官、行政管理予算局長、国家安全保障担当大統領補佐官、空軍長官またはその代理人が委員となる。委員会は連邦政府職員を追加で参加させることもできるが、大統領令で議員は委員に指定されていない。

委員会は必要に応じて、政府機関の代表者で構成する作業部会を設け、大学、産業界、その他の関係者から意見を聴くことができる。作業部会の提案は、委員会による審議を経て正式な勧告に反映される。

■2028年の教育開始を目標、実現時期は議会次第

NASAが公表したRFIでは、2027年までに着工し、2028年に暫定施設で最初の学生300人を受け入れ、2031年までに恒久的な拠点の運用へ移るという日程が示されている。

州知事または指定代理人によるRFIへの回答期限は2026年10月26日である。委員会は同年12月下旬ごろまでに、制度、教育課程、立地選定、行政措置、立法戦略などを盛り込んだ提言を大統領へ提出する。

もっとも、この日程はアカデミーの設立を確約するものではない。委員会の報告後には、大統領の承認に加え、必要な法律と予算を議会で成立させる作業が残る。州による誘致提案は候補地選定の材料になるが、アカデミーが実際に開校できるかどうかは、今後示される制度案と議会の判断に左右される。

元記事: Space Academy Site Competition Opens as Congress, Not the Commission, Controls Its Future

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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