マイクロン台湾労組が利益連動賞与を要求、ストライキの可能性も―HBM供給への影響焦点

2026年9月3日 11:35

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記事提供元:Tech Times

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米半導体メモリ大手Micron Technologyの台湾拠点で、賞与制度を巡る労使対立が表面化した。桃園と台中の従業員約1万人が所属する2つの労働組合は、会社の利益をより直接的に反映する制度への変更を求めており、交渉がまとまらなければストライキに向けた手続きを進める可能性がある。

現時点ではストライキの実施も正式な投票も決まっていない。台湾はMicron最大の製造拠点で、DRAMや広帯域メモリ(HBM)を生産していることから、今後の労使交渉はAI半導体のサプライチェーンを左右し得る動きとして注目される。

■約1万人の労組が賞与制度の見直しを要求

桃園と台中の2つの労働組合には、両地域で働くMicron従業員約1万5000人のうち、約1万人が所属している。労組によると、8月に実施したオンライン調査では、回答者の80%超がストライキを支持した。

もっとも、この調査は正式なストライキ投票ではなく、全組合員の意思をそのまま示すものではない。台湾の労資争議処理法では、原則として調停が不成立になった後、組合員による直接・無記名投票で全組合員の過半数の賛成を得なければ、労組はストライキを宣言できない。

今回の主な争点は、Micronのインセンティブ給与制度「IPP」である。IPPは会社業績と個人評価などを基に年間賞与を決める仕組みだが、労組は計算方法が十分に明確ではなく、会社の利益拡大が賞与に適切に反映されていないと主張している。

労組側の説明では、台湾の従業員に支給されるIPPは実績で月給約2.6カ月分、上限でも月給約5カ月分に相当する。2026年度については一時金の追加支給を求めており、労組の試算では従業員1人当たり月給約83カ月分になるという。

2027年度以降についてはIPPを廃止し、年間営業利益の15%を原資とする賞与制度へ移行したうえで、年1回ではなく四半期ごとに支給するよう求めている。これは会社側の裁量による支給額ではなく、利益に連動する明確な計算式を設ける要求である。

■Micronは「過去最高の業績賞与」と説明

Micronの台湾法人は、2026年の業績賞与が同社史上最高額になるとの見通しを示し、適用される法的手続きを尊重しながら既存の窓口を通じて従業員との対話を続けるとしている。

同社は、従業員の報酬がIPPだけで構成されているわけではなく、基本給、事業運営に連動する賞与、自社株購入制度、譲渡制限付き株式なども含まれると説明している。これに対し労組側は、Micronの利益拡大に比べて従業員への還元が十分ではないとの立場を取っている。

Micronの2026年度第3四半期の売上高は、前年同期の93億100万ドルから414億5600万ドル(約6兆5915億円、1ドル=159円換算)へ増加した。GAAPベースの純利益は282億4300万ドル(約4兆4906億円)、粗利益率は84.6%だった。調整後の非GAAP粗利益率は84.9%となっている。

AI向けデータセンター投資を背景にメモリ需要が拡大し、供給が逼迫したことが業績を押し上げた。労組はこうした収益環境を踏まえ、韓国の主要メモリメーカーが導入した利益連動型の賞与制度を比較対象としている。

■SamsungとSK hynixの制度を比較対象に

Samsung Electronicsでは、半導体部門の営業利益の10.5%を原資とする特別賞与制度について労使が合意し、予定されていたストライキが回避された。この制度には収益性に関する条件も設けられている。

SK hynixでも年間営業利益の10%を従業員への利益分配に充てる仕組みが協議されている。2026年8月の組合員投票では、分配額の一部を現金ではなく自社株で支給する提案への懸念などから暫定合意案が僅差で否決され、労使交渉が続いている。

Micron台湾の労組が求める営業利益の15%という比率は、両社の制度を上回る。各社では対象となる利益の範囲や支給条件、現金と株式の構成が異なるため、比率だけで従業員1人当たりの支給額を単純比較することはできない。それでも、裁量的な賞与から、公開された利益に連動する制度へ移行することが、今回の要求の中心となっている。

■台湾はMicron最大の製造拠点

台湾当局によると、台湾はMicronにとって世界最大の製造拠点であり、同社はこれまでに約1兆4000億台湾ドルを投資してきた。台湾ではDRAMに加え、AIアクセラレーターで使われるHBMも生産している。

Micronは2026年3月、台湾の半導体受託製造会社PSMCが所有していた苗栗県銅鑼のP5工場の買収を完了した。台中拠点から約24km離れた同工場には、約30万平方フィートの300mmウエハー対応クリーンルームがあり、先端DRAMやHBMの供給拡大に利用する計画だ。

既存クリーンルームからの本格的な製品出荷は、Micronの2028年度に始まる見通しである。同社は同じ敷地に同程度の規模を持つ第2施設も建設し、クリーンルームを約27万平方フィート追加する計画を示している。

中部科学園区管理局は労使対立を注視し、Micronと労組の連絡を支援するため職員を配置している。同局は、ストライキが行われた場合、従業員の生活やMicronの操業だけでなく、台湾の半導体サプライチェーンや経済にも影響する可能性があるとしている。

■HBM供給への影響はストライキの範囲と期間次第

HBMは、複数のDRAMダイを垂直に積み重ね、シリコン貫通電極(TSV)などで接続する高性能メモリである。AIアクセラレーターの演算装置へ大量のデータを高速に供給するために使われる。

Micronは、NVIDIAのAIプラットフォーム「Vera Rubin」向けに設計した36GB・12層構成のHBM4について、2026年第1四半期に量産出荷を開始した。同社発表では、ピン当たりの転送速度は11Gbps超、帯域幅は2.8TB/s超となる。

HBMではウエハー製造だけでなく、積層、接合、検査など複数の工程が必要であり、製造設備や工程条件はメーカーや拠点ごとに最適化されている。供給元を短期間で切り替えることは容易ではないため、台湾拠点で長期的または大規模な操業停止が発生すれば、Micron製HBMやDRAMの出荷に影響が及ぶ可能性がある。

一方、労組に所属する従業員全員がストライキに参加するか、どの施設や工程が対象になるか、操業停止がどの程度続くかは決まっていない。生産や顧客への供給に対する実際の影響は、正式な投票の結果とストライキの規模、会社側の対応によって変わる。

■今後は調停と正式投票が焦点

労組は会社側との調停や協議を続ける方針である。調停が不成立となった場合は正式なストライキ投票へ進む可能性があるが、投票の実施時期は確定していない。

予備調査で示された80%超という支持率は、ストライキを選択肢として検討する組合員が多いことを示している。ただし、正式投票では調査に回答しなかった組合員も含む全組合員の過半数から賛成を得る必要がある。

Micronは9月30日に2026年度第4四半期の決算を発表する予定だ。会社側が労使交渉や台湾拠点の操業見通しについてどのように説明するかも焦点となる。

今回の対立は、AI向けメモリ需要によって拡大した利益を従業員にどう分配するかという問題を浮き彫りにした。まだ生産への影響が生じた段階ではないが、台湾における調停と投票の行方は、Micronの報酬制度だけでなく、HBMを含むメモリ供給の安定性を見極めるうえでも重要になる。

元記事: Micron Taiwan Strike Risk: HBM Workers Claim Share of AI Memory Supercycle

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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