関連記事
ByteDanceと米映画業界団体がAI知財保護で合意、Seedanceなどのガードレール強化へ

Photo by Jonathan Kemper on Unsplash[写真拡大]
米映画業界団体のモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)とByteDanceは2026年8月17日、生成AIによる動画や画像を巡る知的財産保護の強化に向け、覚書(MOU)を締結したと発表した。対象には動画生成AI「Seedance」と画像生成AI「Seedream」が含まれ、両者は今後もガードレールの改善に取り組む。
今回公表されたのは継続的な協力の枠組みであり、具体的な技術基準や監査方法、権利侵害が疑われる場合の対応手続きは明らかにされていない。AIモデルの学習に使用されたデータを巡る法的問題についても、発表文では扱われていない。
■SeedanceとSeedreamの知財保護で協力
覚書は、ByteDanceのSeedanceとSeedreamをはじめ、TikTok、TikTok USDS Joint Venture、CapCut、Dreaminaなどを通じて提供される生成AI機能について、映画やテレビ作品の知的財産を保護するためのガードレールを維持・強化する共通の枠組みを定めたものだ。
MPAによると、同団体がAI企業とこの種の合意を結ぶのは初めてとなる。両者は、生成AI技術の進化に合わせ、世界各地の市場でクリエイティブコンテンツを保護するための協力を続けるとしている。
一方、公表された共同発表には、禁止対象を判定する基準値、権利者による申し立ての処理方法、外部監査の有無、違反時の措置といった詳細は記載されていない。覚書が実際のサービス運用にどのように反映されるかは、今後の実装と情報開示を見極める必要がある。
■2月の警告後に協議を開始
今回の合意に先立ち、MPAは2026年2月、Seedance 2.0とSeedream 5.0 Liteを巡ってByteDanceに停止要求を含む警告状を送っていた。MPAは当時、生成された動画に加盟社が権利を持つ映画やテレビ作品のキャラクター、映像表現などが無断で使われていると主張した。
Seedance 2.0の公開後には、俳優のトム・クルーズ氏とブラッド・ピット氏を想起させる人物が格闘するAI生成動画などが広く拡散し、生成AIによる著名人の肖像や既存作品の利用を巡る議論が強まった。ディズニーなどの大手スタジオも、著作権で保護されたキャラクターや著名人の肖像を許可なく生成できることに懸念を示していた。
MPAとByteDanceは警告状の送付後、SeedanceとSeedreamにおける知財保護について協議を開始した。今回の覚書は、その数カ月にわたる協議を継続的な協力関係として正式に位置づけるものとなる。
■新モデルで保護措置を強化
ByteDanceとMPAは、改良版の「Seedance 2.5」と「Seedream 5.0 Pro」において、ByteDanceによる知財保護の取り組みが進展したと説明している。
ただし、両モデルに追加された対策の詳細は共同発表では明らかにされていない。特定の人物やキャラクターの生成をどのように検出するのか、どの範囲の入力や出力を制限するのかといった技術仕様も公表されていない。
生成AIにおけるガードレールは、入力された指示や参照画像を検査し、権利侵害につながる可能性のある出力を抑制する役割を担う。今回の合意は、こうした出力段階の保護策を両者が継続的に改善するための枠組みと位置づけられる。
MPAの会長兼CEOであるチャールズ・リブキン氏は、著作権は映画・テレビ業界の礎であると述べ、ByteDanceとの協議を通じてSeedanceとSeedreamに有意義なガードレールを導入してきたと説明した。今後も両者で保護策をさらに強化する考えを示している。
ByteDanceの法務責任者であるジョン・ロゴビン氏は、同社が世界のクリエイティブ産業を支える知的財産権を尊重していると表明した。責任あるAI技術の革新と権利者に対する実効的な保護は両立するとの認識を示し、今回の覚書を複数の製品やプラットフォームにまたがる継続協力の枠組みと位置づけた。
■AI学習を巡る法的問題は別に残る
共同発表は、SeedanceやSeedreamがどのようなデータを使って学習されたのか、その利用について権利者から許諾を得ているのかといった問題には触れていない。
生成AIを巡る著作権問題では、モデルが生成する画像や動画だけでなく、モデルを構築する際に著作物を複製・利用した行為が米国著作権法上のフェアユースに当たるかが、複数の訴訟で争われている。事件ごとに使用されたデータや開発工程、生成物の性質が異なるため、それぞれの事実関係に基づく司法判断が必要となる。
ビジュアルアーティストらがStability AI、Midjourney、DeviantArt、Runwayなどを相手取った「アンダーセン対Stability AI訴訟」も、こうした学習データの利用を巡る係争の一つだ。同訴訟はカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で審理が続いているが、ByteDanceは被告ではなく、今回の覚書と直接結びつく裁判ではない。
また、ディズニー、NBCユニバーサル、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーなどの映画会社は、画像生成AIを提供するMidjourneyを相手に、それぞれ著作権侵害訴訟を起こしている。生成AIの出力に対する制限と、学習データの利用を巡る法的責任は、関連しながらも別個に検討される問題となっている。
■透明性対策を求めるEUのAI規制
生成AIによるコンテンツの識別を巡っては、欧州連合(EU)でも透明性規制が具体化している。EUのAI法では、対象となる生成AIシステムの提供者に対し、人工的に生成または加工されたコンテンツを機械可読な形式で識別できるようにすることなどを求めている。
同法の透明性に関する規定は2026年8月2日から適用が始まった。もっとも、同日より前にEU市場へ投入されていた一部の生成AIシステムについては、機械可読な識別措置への対応に2026年12月2日までの移行期間が設けられている。
生成物の来歴を示す方法の一つとして、C2PAが策定する「Content Credentials」がある。これは、コンテンツの作成や編集に関する情報を暗号学的に署名されたメタデータとして記録し、来歴を確認できるようにする技術規格だ。
ただし、今回のMPAとByteDanceの共同発表は、覚書に基づいて採用する個々の技術や、EUのAI法への適合状況を具体的に示したものではない。知財保護のガードレールと生成物の透明性措置がどのように組み合わされるかは、今後の製品情報で確認する必要がある。
■他のAI企業との交渉にも影響する可能性
MPAは今回の覚書について、生成AI分野でも知的財産は保護されるべきだと示す重要な一歩だとしている。訴訟や警告状だけでなく、AI企業との協議を通じて製品上の保護策を整備するという選択肢が示された点に意義がある。
OpenAIも動画生成サービス「Sora」を巡って、著作権で保護されたキャラクターなどの生成に対する批判を受け、ガードレールを導入していた。その後、Soraのウェブ版とアプリ版は2026年4月26日に提供を終了した。APIについても同年9月24日に終了する予定だが、OpenAIは公式の終了案内で、著作権問題や特定の計算コストを終了理由として明示していない。
ByteDanceはSeedanceとSeedreamの提供を続けながら、MPAとの協議によって保護策を強化する道を選んだ。今回の枠組みが他のAI企業にも広がるかは、ガードレールの実効性、具体的な運用方法、権利者への情報開示がどこまで進むかに左右される。
●MPAとByteDanceの覚書で著作権問題は解決したのですか?
すべての問題が解決したわけではありません。覚書はSeedanceやSeedreamなどの知財保護を強化するための協力枠組みですが、具体的な技術基準や、AIモデルの学習データを巡る法的問題は共同発表で扱われていません。
●どのサービスが覚書の対象ですか?
動画生成AIのSeedanceと画像生成AIのSeedreamが中心です。両モデルはTikTok、TikTok USDS Joint Venture、CapCut、Dreaminaなどを通じて提供されています。
●どのようなガードレールが導入されるのですか?
共同発表では、知財保護のための強力なガードレールを維持・強化するとしていますが、個々のフィルター、判定基準、監査方法などの詳細は公表されていません。
●AIの学習に著作物を使うことは適法なのですか?
米国では複数の訴訟が進んでおり、個々の事案における複製行為や利用目的、モデルの開発方法などに基づいて争われています。今回の覚書は、この問題について法的な結論を示すものではありません。
元記事: MPA Strikes First AI Copyright Pact; ByteDance Training Liability Stays in Court
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
