H3ロケット打ち上げ成功が、三菱重工や防衛・宇宙産業にもたらす恩恵は?

2025年10月28日 19:35

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H3ロケット7号機の打ち上げの様子 (c) JAXA

H3ロケット7号機の打ち上げの様子 (c) JAXA[写真拡大]

●H3ロケット打ち上げが成功

 JAXAと三菱重工が共同で開発を進めてきた大型ロケット「H3」7号機が、10月26日に打ち上げに成功した。

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 H3の打ち上げは5機連続の成功となる。今回の成功により、今後は打ち上げ業務がJAXAから三菱重工へ段階的に移行する計画となり、民間主導でのロケットビジネスへの道が開ける。

 三菱重工は、2025年4‐6月期の連結業績も好調だ。北米で好調な火力発電向けガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)の恩恵も受けて、株価も過去最高値を記録している。

 H3の成功を受けて、27日の株式市場では一時4500円を突破し、最高値を更新した。

 H3の成功が三菱重工だけでなく、日本の防衛・宇宙産業にも大きな恩恵をもたらすのだろうか?

●失敗からのスタートだったH3ロケット

 2023年3月に行われたH3ロケット1号機の打ち上げは、失敗に終わった。2段エンジン制御系の電気回路で過電流が発生し、異常検知システムが作動、着火しなかった。

 失敗の原因究明を経て、約1年後の2024年2月に打ち上げられた2号機は、所定の軌道に投入され、成功した。2号機から今回の7号機まで、成功を続けている(6号機は計画中)。

 7号機はLE-9エンジンを2基、固体ロケットSRB-3を4本整備し、打ち上げ形態が増強された24形態として初の飛行となった。

 コストを半減できる(約50億円)30形態も開発が進められているが、現在難航が伝えられており、2026年度以降に打ち上げは延期される見通しだ。

●裾野が広がる?

 打ち上げ業務の移行により、三菱重工が打ち上げから運用まで責任を負うことになり、民生部品を活用してコストを削減することも可能になる。

 政府の人工衛星打ち上げを担うだけでなく、商業利用や海外からの受注も可能になる。

 H3の開発には、IHIの子会社IHIエアロスペースや東レ、SUBARUなども関わっており、民間主導になると裾野が広がり、関連する多くの企業が恩恵を受けることも期待できる。

 ただ三菱重工の株価は、この1年ですでに倍以上となっている。PER60倍・PBR6倍と買われ過ぎの水準にあり、ネガティブなニュースで一気に売られるリスクもある。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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