地球生命は宇宙由来物質が起源だった可能性 北大らの研究

2022年5月24日 15:58

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隕石による原始地球への核酸塩基の供給に関するイメージ図(c) NASA Goddard/CI Lab/Dan Gallagher(画像: 北海道大学の発表資料より)

隕石による原始地球への核酸塩基の供給に関するイメージ図(c) NASA Goddard/CI Lab/Dan Gallagher(画像: 北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

 現在のところ人類は、地球以外の惑星で生命が誕生した痕跡を確認できていない。これは非常に奇妙な事実である。銀河系だけでも数千億個の恒星が存在し、宇宙全体では銀河系のような小宇宙が、少なくとも2兆個もある。つまり、宇宙には数えきれないほどの惑星があり、地球だけが宇宙で唯一の生命を育む惑星であるとは考えにくいのだ。

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 一方で生命が存在するのは地球だけと考えざるを得ない計算も成り立つ。ビッグ・バン理論の名付け親のフレッド・ホイルは、宇宙に偶然生命が誕生する確率は10の4万乗分の1であると主張している。1つの銀河に5千億個の恒星があり、1つの恒星系に10個の惑星が伴われていると仮定すると、宇宙全体の惑星数は5千億×10×2兆=10の25乗個である。これらを掛け合わせた値は限りなくゼロに近くなる。

 だが、この絶望的な数値を覆す可能性のある発見がなされた。北海道大学などの研究者は、炭素質隕石からDNAの構成要素となる核酸塩基4種(チミン、アデニン、グアニン、シトシン)に加え、RNAの構成要素となる核酸塩基ウラシルの合計5種を同時に検出したと発表した。なおRNAの構成要素は、ウラシル、アデニン、グアニン、シトシンの4種だ。

 研究には北大の他、九州大学、東北大学、海洋研究開発機構などの研究者が参加しており、研究論文はNature Communications 誌でhighlighting paperとして4月27日に公開されている。

 炭素質隕石は最古の太陽系物質となる。これまで炭素質隕石で同時に発見された核酸塩基は、グアニン、アデニン、ウラシルの3種類だけだったため、今回の発見は画期的と言える。

 また今回の研究では、オーストラリアで発見されたマーチソン隕石、カナダで発見されたタギッシュレイク隕石、アメリカで発見されたマレー隕石の3種の炭素質隕石を調査。この3種全てから5種の核酸塩基を発見している。

 これらが地球で偶然生成されたものではなく、宇宙にごくありふれた存在であり、それがたまたま地球に降り注いで生命誕生に繋がったとの仮説が成り立つ。そうであれば、火星や太陽系外惑星でも生命が誕生していたとしても、何ら不思議ではない。もしも、フレッド・ホイルがまだ健在で、この発見を知ったとしたら、生命誕生確率の数字を大幅修正するかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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