ソフトバンクGが進めるアームの売却で、英政府が安全保障上の懸念調査に着手

2021年4月23日 07:24

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 19日、英半導体設計大手アームが米半導体大手エヌビディアに買収されることについて、英政府が安全保障上の懸念の有無を調査すると発表したことから、両社の動向に再び世界の注目が集まっている。

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 アームは16年にソフトバンクグループ(SBG)に買収されている。当時孫会長兼社長は、スマホ半導体の設計で90%という圧倒的なシェアを誇るアームを、「未来を見とおす水晶玉」になぞらえて、永年の想いが果たされた喜びを語り、SBGに欠くことのできない事業会社と位置付けていた。買収額は約240億ポンド(約3.3兆円)で、出資額はSBGが75%、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が25%だった。

 19年に上場延期に至ったウィワークの問題がSBGの危機感を強め、翌年にかけて本格的に展開した手元資金の上積み時期に、タイミングよく想定を超える400億ドル(約4.1兆円)での買収提案を、米エヌビディアから受けたことで、SBGとアームの蜜月関係は終了する運びになった。

 20年11月に「最悪期に備えて」約800億ドル(約8兆3000億円)の手元現金を確保した、と公表したSBGにとって、アームの売却が6000億円程度の売却益狙いだけである筈がない。売却によって、人工知能や自動運転分野で圧倒的な存在感を示すエヌビディアの株式の、6.7~8.1%を取得して大株主になれる上に、アームを傘下に入れたエヌビディアの業績向上によって、取得株式の価格を上昇させる方が、投資会社としてのSBGに相応しいと判断したのだろう。

 売却の障害は、世界中の半導体関連会社に対して設計ライセンスを提供してきた、その存在感そのものだ。

 アームの顧客だった米クアルコム、インテル、韓国サムスン電子などの半導体メーカーは、エヌビディアと宿敵のような競合関係にあるから、半導体設計で圧倒的な存在感を示すアームがエヌビディアの傘下企業となるのは、悪夢のような事態だ。

 そこで、これらの企業がエヌビディアによるアーム買収に強く反対し、ロビー活動も活発に行っていることが伝えられている。

 それとは別に、英政府がアームの技術流失によって、安全保障上のリスクになる可能性があるかどうかの精査を始めたということだ。

 さらに、エヌビディアによるアーム買収は、欧州連合(EU)、米国、中国等の規制当局が承認することが必要だ。米国と中国の対立問題の影響を被ることは避けられないから、数年単位の期間が必要で、容易に決着が付くことはないと見られている。

 SBGにとっては、仮に売却を阻害する事態が生じても、新規株式公開(IPO)へと転換することで何の問題もない。問題があるとすれば、結論が出るまでに必要な時間が計算できないということだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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