ゴーン被告の海外逃亡を差配したテイラー親子逮捕 弁護士事務所が逃亡協議の場だったのか?

2021年3月5日 08:26

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 日産自動車元会長だったカルロス・ゴーン被告による海外逃亡事件が、新しい局面に入った。逃亡を支援したとされるマイケル・テイラー容疑者と息子のピーター容疑者の身柄が2日、日米犯罪人引き渡し条約に基づいて米国から日本へ移転され、犯人隠避の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。

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 特捜部はカルロス・ゴーン被告が逃亡した経緯の解明を始めるが、主犯と目される父親のマイケル・テイラーは米陸軍特殊部隊として名を馳せる「グリーンベレー」に所属していた。戦時下に運悪く捕虜になった場合でも、口を割らない極限の訓練を受けた強者である。高齢(66)になって頑強さに多少の綻びが生じていたとしても、日本での取り調べに屈することはないかもしれない。

 息子のピーターにそんな強面の経歴はないが、片棒を担ぐ時点で父親から繰り返し心構えを聞かされていたと想像すれば、簡単に供述が取れる見込みはない。

 但し、現在までの捜査で犯行の状況や2人の役割が大まかに解明されているため、供述が得られたとしても捜査結果を裏付ける程度の意味合いだ。犯人を隠避させた罪が認定されても、刑法第103条の規定で、2年以下の懲役か20万円以下の罰金に処せられる程度の微罪である。

 世界に赤っ恥をさらした事件の経緯を考えると釣り合いの取れない刑罰であるから、国家のメンツが掛かっているという以上のものではない。

 注目すべきは、テイラー親子が東京地検特捜部に逮捕されたことに関して、レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン被告が、ノーコメントを貫いていることだ。口から出た言葉が独り歩きして、逃亡の恩人であるテイラー親子を、不利な状況に追い込むことを懸念してのことだ。逃亡した直後から今まで、逃亡の方法等には一切言及していない。カルロス・ゴーン被告とマイケル・テイラー容疑者との紐帯はかなり強力だ。

 テイラー親子もカルロス・ゴーン被告に関わる事柄を供述する可能性は低い。黙秘して語らないことも考えられる。取り調べを受ける容疑者が事件の核心について黙秘する場合でも、心理的な縛りが少ない事柄には案外多弁になることがあると言われる。

 20年1月30日の定例会見で、東京地検の斎藤隆博次席検事は「ゴーン被告が逃亡幇助の嫌疑がある人物と弁護士事務所で面談した際、逃亡の協議を行った疑いがある」との見方を示していた。

 これに対して、当時の担当である弘中弁護士は「弁護士事務所の面会簿に署名して、逃亡を協議する奴はいない」と強く反発し、「弁護人には面会者の素性を確認する法的義務はない」と吐き捨てている。

 テイラー親子がこの件にどんな供述をするかで、「無罪請負人」を自称していた弘中弁護士の姿勢に、注目が集まることは止むを得ないだろう。

 カルロス・ゴーン被告にとっては見切りをつけた弁護士であり、テイラー親子にとっては協議の場を提供してくれた無頓着な弁護士という位置付けだから、多少口元が緩む期待はある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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