トヨタ春闘「ベアゼロ」で見えた (1/3) 「これ以上のベア上昇は競争力が危うくなる」

2020年3月17日 11:31

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 2020年も春闘の季節だが、自動車メーカーから渋い回答が一斉に出てきた。3月11日、トヨタ自動車の回答では「ベースアップ(ベア)を実施しない」とあり、労働組合、企業側ともに衝撃が走った。

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 業績絶好調のトヨタ自動車が、「ベアなし」と回答したからだ。「好成績の時」は、当然に労働者にも分けるのが常識だからだ。「原資が継続的にあるのに配分しない」とすることには、「原資を他に必要とする説明」が会社側から労働者側になされねばならない。

 トヨタ自動車の企業側からは、「これ以上のベア上昇は競争力が危うくなる」とのことだった。つまり、創業家経営者としての、長期的生き残りのための方策ということだ。また、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長のようなサラリーマン経営者であると「配当」は高くするのだが、創業家経営者はベアを上げない時に配当はどのようにするのであろうか?「新資本主義」の現代社会の中では興味深いことだ。

 春は、労働組合と会社側が団体交渉で「賃上げ」や「ボーナス」の交渉をする季節だ。しかし、今では「団体交渉権」の意味すら知らない労働者が増えている。若い人から「組合離れ」が進み、かつての「村上ファンド」など、配当を強く望む株主の動きが盛んになった。

 企業経営者は、元来「配当」に熱心だ。それも当然で、経営者を雇っているのは株主だからだ。雇い主の意向に沿わねば「解雇される」のが経営者だ。つまり、雇われた者同士で話し合われるのが「団体交渉」であるのだ。

 創業家が経営する会社が少なくなり、「雇われ経営者」が多くなってきているのが、大手企業の情勢だ。これにより、社員に対する経営者の姿勢も変化してきた。

 例えば、ホンダは本田宗一郎の起こした企業で、宗一郎が健在だった時、社員は「親父」と言って彼を慕っていた。宗一郎も社員を「家族」と思って面倒を見ていた。松下電器(現パナソニック)を起こした松下幸之助も同様だ。社員をリストラすることを避け続けていた。

 現在は、カルロス・ゴーン元会長のような「グローバル経営者」が日本企業にも多くなり、「配当優先」の考え方が強く感じられる。「会社はだれのもの」と問われると、「株主のもの」と迷わず答える社員も増えている。「社員のもの」と自信を持って答えることが出来るサラリーマンは、どれほどいるのであろうか?

 そんな中、「年功序列」を廃止する動きは半世紀以上前からあった。日本が経済発展をし始め、アメリカ企業の割り切った人事の考え方を学んだ日本では、給与体系も「実力主義とするべき」と言われ始めていた。

 当時、外資系の日本IBMの社員が講師として大学でコンピュータの講義をしていたので聴いていた時、彼の「転勤」の話が出て、「明日、異動になる」と言い出した。日本IBMでは仕事の都合で転勤を決めるため、社員個人の都合はほとんど考慮しないと話していたことを思い出す。

 その当時日本IBMでは、転勤先での住居も社員個人で手配し、会社の援助は基本的になかった。一方、日本企業であれば、期日を社員と相談して決め、転居先も紹介してくれていたものだ。

 実力主義をとる「外資系企業」の厳しさが言われた時代である。現在でも日本企業は、何らかの形で社員の転居については支援があるようだが、外資系企業は、やはり原則的に自己責任としている企業が多いようだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: トヨタ春闘「ベアゼロ」で見えた (2/3) 「格差社会」が形成されていく姿

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