カップル成立の決め手はメスの脳内ホルモン 東大などがメダカで特定

2019年8月8日 14:34

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雌雄のメダカの生殖行動中枢(視索前野背側部)の顕微鏡写真。ひときわ明るい部分がNPBを合成する神経細胞となり、メスだけで盛んに合成されていることが分かる(画像: 東京大学の発表資料より)

雌雄のメダカの生殖行動中枢(視索前野背側部)の顕微鏡写真。ひときわ明るい部分がNPBを合成する神経細胞となり、メスだけで盛んに合成されていることが分かる(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]

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 動物のオスがメスに求愛をした際、カップルになれるかどうかの決め手になる脳内ホルモンを、メダカを使った実験で特定したと東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループが6日、発表した。このホルモンは成熟したメスの脳内で盛んに合成され、合成量が増えることで求愛アピールをするオスを受け入れるようになるという。研究成果は学術雑誌「eLife」に掲載された。

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 多くの動物では、オスがメスに対しさまざまな求愛アピールをすることが知られている。オスがメスの前でダンスをしたり、体を大きく見せたり、鳴き声を上げたりと多様な形態があるが、求愛は必ずオスから行い、それを受け入れるかどうかを決めるのはメス側だという点は共通している。

 こうした生殖に関わる行動は、精巣や卵巣から放出される男性ホルモンや女性ホルモンなどが、脳に働きかけることで引き起こされることが分かっている。しかし、性ホルモンが脳の中に対しどのような働きかけをするのか、その仕組みはよく分かっていなかった。

 同研究科の大久保範聡准教授らの研究グループは、ニューロペプチドB(NPB)という脳内ホルモンに注目。京都大学や理化学研究所などと共同で、ゲノム編集でNPBがはたらかないメスのメダカをつくり、生殖行動を観察、解析した。すると、そうしたメダカは、オスが求愛アピールをしてきても、あまり反応せず、逆に求愛アピールをしていないオスを受け入れてしまうことが分かった。

 また、メスに薬剤を投与したり卵巣を除去したりして、体内の女性ホルモンを減らすと、NPBが合成されにくくなることを確認。逆にオスに女性ホルモンを投与すると、NPBが合成され始めることも確認した。

 こうしたことから研究グループは、「卵巣が成熟して女性ホルモンが大量に放出されるようになると、脳の中でNPBが盛んに合成され、メスはオスの求愛アピールに対して、適切にオスを受け入れたり拒否したりできるようになると考えられる」とした。

 NPBは魚類から哺乳類まで脊椎動物が持っている脳内ホルモン。人間の場合、個人によってNPBの作用を仲介するタンパク質(受容体)のはたらく強さに差があり、他人の表情を見たときの感情の個人差となって現れるとされる。このため、NPBはメダカにかぎらず、動物のメスがパートナーを選ぶ際の感情や行動を引き起こす役割を担っている可能性があると結論づけた。

 研究グループは今後、「動物のカップルを組む際の脳内の仕組みの解明につながるのではないか」と期待している。

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