三菱航空機が「MRJ」から、「三菱スペースジェット」に転換するワケ(3-3)

2019年6月20日 21:00

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 三菱航空機が割って入ろうとする小型航空機市場は、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルが市場を分け合い、特に150席を下回る小型機分野では2社で世界シェアの80%を占めてきた。

【前回は】三菱航空機が「MRJ」から、「三菱スペースジェット」に転換するワケ(3-2)

 そのボンバルディアはCシリーズと呼んできた100~150席の小型機事業をエアバス(欧州)に売却した。エアバスは同シリーズをA220と名称変更している。エンブラエルは80~150席のEジェットと呼ぶシリーズをボーイングに売却する。どちらも「三菱スペースジェット」とってはライバルである。

 最新情報では、三菱航空機の親会社である三菱重工業がボンバルディアの「CRJ」事業の買収を計画中であると伝えられている。同事業はボンバルディアが得意な座席数100席以下の機体サイズで採算性も良くないと見られている。しかも、三菱重工業はボンバルディアのCシリーズに係わった元社員から機密情報の漏洩を受けたとして提訴され、三菱航空機もボンバルディアが旧MRJの型式証明取得の妨害を意図して、反競争的行為をしていると反訴しているごたごたの間柄だ。

 三菱航空機は米ボーイングと「カスタマーサポート」契約を結び、スペースジェットが就航した暁には世界の各空港で行う現地サービスの肝となっていた。ところが、ボーイングはエンブラエルからEジェットシリーズを買い取ることになり、三菱航空機の品揃えと重なる、ライバルの1社と目される存在になって来た。

 このデリケートになったボーイングとの関係を前提に、採算性が低いと見られる小型航空機事業を最大の効率で回していくための最善策が、ボンバルディアからの「CRJ」事業買収と判断したのである。訴訟関係にあるというマイナスポイントは、「三菱スペースジェット」事業を円滑に進める上で大きな懸念事項ではないようだ。「四の五の言ってられない」状況であるとも言える。

 開発費用を1800億円程度に抑えて、1000機の規模の受注があればやっと採算が立つと言われた旧MRJは、18年3月時点で6000億円の投資と400機を超える程度の受注に喘いでいた。今回の大幅な変更が北米マーケットの実勢に合わせた現実的な対応ではあるが、予定していた事業資金の回収時期が更に遠のいて、明確な成算も示し難いことも間違いない。現時点で言えるのは、追加の投資額を極力圧縮してマーケットの需要に適う機体を早急に供給する道しか、三菱重工業には残されていないということだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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