テスラ・モデルS火災 原因はバッテリー? そういえば特段プリウス火災は聞かない

2019年4月26日 08:12

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 テスラ・モデルSが燃えた。4月21日、中国・上海市徐匯区(Xuhui)のマンションの地下駐車場に夜間駐車していたテスラ・モデルSが自然発火したのだ。煙が出る様子がカメラに動画で納められていた。床下から煙が出始める様子からバッテリーの可能性が高いが、原因は特定されていないようだ。現在赤字が伝えられているテスラだが、市場価値が不安定になってくるのだろう。

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 火災は「バッテリーには付き物」と言えるのかもしれない。パソコン、スマホなどバッテリーを用いた電化製品では火災事故は尽きない。だとすると電気自動車(EV)にも付き物となるのであろうか?テスラ・モデルSは、2012年に発売以来、炎上爆発事故が50件ほど発生し、自然発火事故と報道されている。自動車の火災は日常的に起きているが、原因で最多はタバコの火であるようだ。その他、炎天下ダッシュボードに置かれたライターが過熱され発火することや、スプレー缶が熱せられて発火する事故がある。

 しかし、今回のテスラの火災発生の様子を見ると、床下からであり室内からではない。また夜間、地下駐車場での出来事であり、室内が熱せられている訳ではない。これはバッテリーが原因である可能性が高い。

 考えてみると、トヨタ・プリウスのバッテリーによる火災事故を聞いたことがない。幾度かバッテリー配線などのリコールはあるようだが、テスラ・モデルSに比較して圧倒的多数が販売されているにしては、バッテリー起因の火災事故を聞かない。

 そのため、これがテスラの弱点であり、あらゆる面で危険なところだが、一方でその特性であり先進的なところでもある。しかし自動車メーカーの品質としては、「最悪」の問題だ。また「無資格者の完成検査」などは、根本的にレベルの低い問題なのだ。

 「HVのプリウスと比較するのはナンセンス」とする意見が出そうだが、HV、PHEV、EVはバッテリー容量の違いはあれども、電動部分の仕組みは変わらない。トヨタ・プリウスでもバッテリー周辺に関するリコールがあるところを見ると、やはり難しいのだ。

 自動車メーカーの品質保証体制は、テスラのイーロン・マスク氏がイメージできていない概念のようだ。概念が分かっていれば、イーロン・マスク氏が展開できないはずはないのだ。「天才」とは全ての面で天才ではなく、一部の能力が長けているのだ。逆に誰でもバランスが平準である訳ではなく、それが人間の個性を作るのだ。

 とにかく、「品質保証」体制を立て直すしかないのがテスラの現状だ。「不良を出しながら修正している」とコストが膨大にかかるため、世界の自動車メーカーは、なんとしても修正なしの生産体制を取ろうと努力してきたのだ。

 それが逆に、完成検査を必要としないほどの品質を生み出し、「完成検査体制」を形骸化してしまっている。それは、各メーカーがハイレベルの品質管理が出来ている証拠でもある。つまりテスラの場合、品質保証体制はかなりレベルが低いのが実態なのだ。

 天才イーロン・マスク氏の益々の天才ぶりが、これらの問題を解決することを願おう。品質保証は基礎に社員のモラルの問題があり、他人の気持ちを思いやる概念が見られないイーロン・マスク氏には解決が難しい問題である。企業経営のために必要な能力によってだけで、人間として全人格を認識されていない社員たちに「品質の価値」、すなわちお客様にとっての「商品価値」を認識させるのは難しいのだ。そのため不良を無くすための「カイゼン」活動を、社員自ら行う気持ちになれず、VW、スバル・日産など多くのメーカーが崩れかけようとしてしまったのだ。

 そのため天才が、人間としての基本的概念「他人を思いやる」ことを理解できずに、解決のために、どの様に振舞うのか興味を惹かれるのだ。企業はその業務に必要な能力を要求するものだが、社会のインフラとしての位置づけもあるのだ。そこに企業で社員の成績を評価する時、「売り上げ」などの単純な評価基準で進めていると、長期間では日産・スバルのようになるのだ。「企業経営とは難しい」と感じるのが正しいのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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