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ニホンジネズミのミトコンドリアから紐解く人類の移動史 北大の研究
ニホンジネズミという日本固有種の小型哺乳類がいる。このニホンジネズミのミトコンドリアDNAの分析から、先史時代の人類の移動の痕跡が解き明かされた。北海道大学・低温科学研究所の大舘智志助教らの研究によるものである。
【こちらも】ハツカネズミのDNAから考える「日本人はどこからやってきたか」
ニホンジネズミはトガリネズミ目トガリネズミ科に属する。日本固有種であり、その分布については画像をご覧いただきたい。名前はネズミだが実際にはモグラの近縁種で、しかしモグラと違って地中生活をすることはない。人類の文明にとって何の益にも何の害にもならず、また特に絶滅が危惧されるようなこともないので普段は注目を浴びるようなこともない種である。
だが、今回の研究では、ニホンジネズミが人類とともに日本列島を移動したことがかつてあったということが分かり、そこから人類の移動史に関する新たな知見がもたらされたのである。
研究グループが各地で集められたニホンジネズミのミトコンドリア塩基配列を解析したところ、ニホンジネズミは明確に二つの系統に分けられる事が分かった。北は福井県から発し、岐阜県を通って愛知県と三重県の境界あたりで太平洋に接する大きな分断がある。
また、国内外来種であることが知られている北海道南部のニホンジネズミと済州島のニホンジネズミは、それぞれ東北地方、九州の個体群と近い遺伝子を持っていた。
この地域の間は津軽海峡ならびに朝鮮海峡があり、10万年から15万年ほど昔、日本列島と完全に分断されていたことがほぼ判明している。ところが、分子時計と呼ばれる分析法でニホンジネズミの個体群の分離時期を割り出したところ、9万年を遡ることはないという。
この移動は自然には起こり得ないものであるため、何らかの形で人間の移動に伴ってニホンジネズミの移動が起こったと考えられるわけである。
なお、研究の詳細は英文の専門誌「Mammal Study」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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