三菱MRJの生き残る道(2) アメリカの政治圧力に屈したY-X事業団

2018年7月18日 22:05

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MRJ(写真: 三菱航空機)

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■「Y-X、Y-XXの話」アメリカの政治圧力と支配力

 YS-11が生産終了となるころ、次期国産旅客機開発の準備が進んでいた。しかし、日本政府だけで決められない政争が起きていた。旅客機開発はリスクが非常に大きい。失敗すると企業の存続は難しい。軍用機の世界でもそれは同じだった。そのため太平洋戦前、戦中、戦後の航空機メーカーの変遷はすさまじい。アメリカのカーチスライト、DC-3~7、DC-8~10旅客機の名門ダグラスなどは消えてなくなった。エアバスも、政府援助がなければ成り立たなかった。

【前回は】三菱MRJの生き残る道(1) ファンボロー航空ショーでデモフライト後、お粗末な記者会見

 ボーイングはB747ジャンボジェットの次を開発するにあたり、リスクを避けようとしていた。そこで実質的占領下とみなされていた日本の航空機予算に目を付けたのだ。B757、B767、B777開発などを日本との共同開発としようとした。そのため、Y-X、Y-XX計画などは中止され、日本航空機製造の設計者たちはボーイングに出向となったのだ。その時から、実質的に日本の航空機産業はボーイングの下請けとなり、Y-XはB767となりY-XXはB777となったようだ。B787では、日本企業が半数以上の部品を造り、設計開発作業が出来ないだけになってきた。

 当時、日本航空機製造は「補用品業務」だけの会社として残ることとなった。私の同期の設計技師たちはボーイングに出向となって、私は補用品業務電算システム開発の要員として残ることとなった。私は当時の日本航空機製造の社長だった東海林武雄(元専売公社総裁)の紹介で入社したのだが、そのつてもあって「アメリカの圧力の前には、日本政府も抗せない」実情を聞かされていたのだ。

 将来の見通しがなくなり、若い私は会社を去る決心をした。金も人員も希望も、ボーイングに持ち去られたのだ。

 日本の航空機開発では、軍用機においても最先端戦闘機の技術開発も抑え込まれている。せっかくF1で超音速機の技術を開発したのに、F2でアメリカ軍のF16の改造とされてしまった。主力機もF4、F15、F35とアメリカからの購入とされており、F2の後継機も日米共同開発となるようだ。むしろ独自性を削がれる方向だ。「アメリカ占領政策」は続いており、トランプ大統領がアメリカ軍の駐留は「日本の防衛のため」として、予算を受け持つように要求しているのは表向きのことだ。実際に、アメリカ軍の駐留はアメリカの利権を確保するためであり、彼らが引き揚げれば中国軍、いや中国経済が実質的に進駐することとなるだろう。

 北朝鮮情勢でも、その裏で中国、ロシア、北朝鮮で、レアメタル採掘権などの利権のやり取りとなっていることは当然と見るべきだろう。グローバル経済は軍事と密接であり、政商とならなければ生き残れないのだ。

■宇宙産業に光

 唯一、日本にとって希望は「ロケット」だ。一時期、やはり日本のロケットもアメリカのICBMを流用するように強制された時期があったが、その後、独立を主張して現在の純国産H-IIロケットになっている。近くH-IIIロケットが打ち上げされるようだ。民間宇宙産業も「ホリエモン」に頑張ってもらいたいものだが、彼が成功して巨大化すれば、政争に巻き込まれる産業になることを覚悟しなければならない。この辺り、ホリエモンは失敗してきたので、ソフトバンクのように優秀なブレーンを持つことだ。

 航空機部門でも、日本は既にステルス戦闘機の基礎技術を持っており、実験機もできている。XF3は国産機で行くべきところだ。またまた「ロッキード事件」のような裏工作が起きていると見なければ、理解は不能だ。しかし、日本は技術的には自力で開発できる、文化的にも実力のある民族だ。問題は、韓国のように「中国とアメリカとの狭間に生きる」のか、「アメリカの占領政策を引きずる」のか決めなければなるまい。安倍政権は「EUの利権を手中にしながら、軍の駐留経費負担を公然と迫るトランプ政権」を、EUとのFTAで牽制に出ているが、一方で、日本の防衛予算をアメリカ軍事産業に差し出す政策をとるのだろう。

 三菱リージョナルジェット(MRJ)の三菱重工は、防衛産業など国策に密接な、いわば「政商」なのであり、一般商材の営業には疎いが、海外でも政商として力を発揮してほしいものだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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