【EVは中国・北朝鮮国策との闘い(2)】アウディ誘導モーター採用 トヨタ省ネオジム磁石

2018年5月16日 11:46

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四代目プリウスモーター(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

四代目プリウスモーター(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

■トヨタの50%省ネオジム耐熱磁石モーター

 自動車用モーターも“効率”の争いとなってきている。トヨタ・プリウスのモーターは、「同期モーター」と呼ばれる永久磁石を用いた構造だが、初代では“出力30kw・容量5.1L・最高回転5600rpm”、二代目“50kw・4.7L・6000rpm”、三代目“60kw・2.7L・13500rpm”、四代目“53kw・2.2L・17000rpm”と、大幅に性能向上が図られてきた。

【前回は】【EVは中国・北朝鮮国策との闘い(1)】北朝鮮情勢のカギはEV開発に必要なネオジム

 この性能向上の背景として、永久磁石をローター側に用いる同期モーターの効率の良さがある。それは“リラクタンストルク”を利用したトルクの増幅が出来るからだ。リラクタンストルクは同期モーターを回転させると、駆動時・発電時に関わらず発生するトルクで、これを回生ブレーキなどの発電ができる理由だ。しかし、駆動時にも発生してしまい抵抗ともなるものだ。それを“磁石トルク”と合成してピークトルクを増幅する手立てとして、モーター全体の小型化・軽量化を図っているのだ。

【参考】「第4次産業革命」の本質を理解せよ トヨタが開発した「省ネオジム耐熱磁石」

 しかし、一方で永久磁石を構成するには、テルビウム(Tb)やディスプロシウム(Dy)ネオジム(Nd)などのレアアースが必要であった。それをトヨタは、ネオジムをランタン(La)とセリウム(Ce)に半分置き換え、テルビウム、ディスプロシウムを使わなくした。ランタンとセリウムは、レアアースの中では比較的多く存在し、値段も安い特性がある。

■アウディが採用した誘導モーター

 一方、アウディは、“永久磁石を使わない誘導モーター”に置き換えた。永久磁石に比較してトルクが低い誘導モーターの性能を上げるため、アウディは純度99.7%のアルミ・ダイキャスト(ダイカスト)を使用してきた。鋳造と比較すると、量産に有利な方法だ。これは純度を高めると伝導率が高いためだ。既に、「エンジン熱効率競争」と同様「効率競争」に入っている。これでアウディは高速回転域の効率を上げ、最高速を上げてきた。日産・リーフは最高速度140km/hだが、アウディは210km/hを可能にしてきている。ヨーロッパが置かれた交通事情において、大きなセールスポイントとなろう。

 モーターに付属するリダクションギアと2段ミッションを組み合わせている。アウディの電動4輪駆動(e-toron quattro)では前輪に250N・mモーターを一基、後輪には二基を装備している。前輪には2速ミッション付きだ。アウディは95kwのリチウム電池を乗せて、航続距離500kmを目指している。電池重量は700kgと伝えられている。今後、全固体電池の実用化など電池の進歩があると、EVが標準となる時代も夢ではないようだ。

 この流れにレアアースの問題があり、「北朝鮮をどのように中国が取り込んでいくのか?EV開発競争の中で、巨大市場中国の国策による誘導に興味は尽きない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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