「第4次産業革命」の本質を理解せよ トヨタが開発した「省ネオジム耐熱磁石」

2018年2月26日 21:57

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■EV化で明らかになる社会のひずみ

 EV開発は、そう簡単にはいかない。EVの技術開発に加え、原材料の確保が必要だ。テスラの年間数万台の生産規模から、世界で数千万台の生産規模に拡大する夢が広がっているが、レアメタルの確保は容易なことでは進まない。

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 かつて排気ガス規制に乗り出したころ、世界の大手自動車会社は、いずれも「不可能」と排気ガス規制を否定していた。そこにホンダが「CVCC技術」を完成して世界に先駆けて発売したが、トヨタなど大手自動車会社は、その陰で有害物質を取り除く「触媒」の材料を求めて激しく争っていた。そして順次、原材料確保の見通しが立ってくると、排気ガス規制に乗り出すこととなった。その後、すべての車種に適合させるには「触媒」に頼ることが必要であるとなり、ホンダも触媒を使うようになった。現在では、原材料とリサイクルが当然となり、システムとして動いている。

 こうした実用化に至るシステムを理解せず、最近まで「トヨタはEV化に消極的」と非難する記事が目立っていたが、その記事を書いたジャーナリスト、大学教授など、学歴も高く、職歴も「ブランド」と言える人々が、物事をよく理解していないことは一体どうしたことだろう。これを「教育の間違い」と考える向きもあるが、確かに「クイズに強い」人材を「エリート」とするより、「理解力」を育成する教育の確立が望まれる。

■トヨタの「省ネオジム耐熱磁石」開発

 EV全盛時代となると、モーターに使う磁石が不足する。そこで、トヨタが世界初の「省レアアース耐熱磁石」を開発、急速に進むEV化に対応する。電動車には必ず必要になるモーターに使う磁石だが、車のモーターには「ネオジム磁石」が使われている。

 「ネオジム磁石」には、鉄を中心として、ボロン、「ネオジム(Nd)」というレアアースが使われている。自動車モーターは高温(150~200度)となるので、性能低下を抑えるために「ディスプロシウム(Dy)」や「テルビウム(Tb)」も添加し、耐熱性能を高めている。しかし、いずれもレアメタルなのだ。しかも、この2つは中国でしか産出されていない。そこで最新のプリウスでは、すでに極少量しか使われていないようだ。しかし、ネオジムそのものもレアメタルのため、トヨタはこのネオジムの使用を抑えた「ネオジム耐熱磁石」を開発した。

 こうした原材料確保のめどが立ち、量産体制が整うまで、大きな変動はできない事実がある。テスラのイーロン・マスクCEOのような「先駆者」が必要なのと同じように、「実用化」に向けた開発・準備を整えることも必要なのだ。「夢」だけで行動しても、実現できるのは「実験」の範囲に限られる。現実の「技術革命」をよく理解しておく必要がある。

 トヨタは必ずしも完全EV化が進むとは考えていないだろうが、実現できる準備に取り掛かっていることは事実だ。「EV化の夢」に踊らされずに、着実に準備を進める段取りを理解して「夢を語る」必要がある。「品質管理」に使う「特性要因図」にして、一つ、一つ、技術開発を進めていく努力を無視した発言は控えねばならない。トヨタの「省ネオジム耐熱磁石」開発、「全固体電池」開発など、膨大な基礎・周辺技術の開発を進めなければならない。

■第4次産業革命の本質を理解せよ

 「第4次産業革命」とは現実に「受注生産」に向かって近づけることだ。そのための「製造・生産技術」の開発も追いつかねばならない。それが「インターネットを利用した技術革命(IoT)」の本質なのだ。「資金効率」で考えるとよくわかる事実だ。「分からない」「難しい」との声も聴くが、ならば「100万語」を費やしても説明、理解してもらわねばならない「物理的真実」がそこにある。それが「製造」という概念だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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