「空の産業革命」を制するのはどの国か?ドローンの商用運行解禁へ

2018年3月17日 09:18

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 15年末に施行された改正航空法によると、ドローンは飛行する方法や空域に厳しい制限を受けている。人口密集地での飛行は禁止で、その他の地域であっても昼間に、機体を目視できる範囲のみに飛ばすことができる。目視できない遠隔操作をするためには、地方航空局長の承認という高いハードルを越えなければならない。「飛べないドローン」と揶揄される所以だった。

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 このほど政府は離島や山間部での目視外飛行を、解禁する見込みだ。改正航空法の許可・承認審査基準を見直し、ドローンを利用する企業や個人に対して、飛行地域を限定し、荷物を受け渡す着陸の拠点設置も求めると見られる。機体の高度や速度を分かり易い状態にして安全の確保を優先する。人の頭上を飛行することは認めずに、航空機や立木、人との接触も回避することを義務付ける。荷物の落下を防ぎ、過積載をさせないルール作りを行う。

 NTTドコモやKDDI、ソフトバンク等の大手携帯電話会社はそれぞれ、携帯電話網を使ってドローンの遠隔操作技術を開発している。ちなみにKDDIは17年5月、新潟県長岡市山古志で4G(LTE)通信を使用した完全自律飛行実験を実施し、2km離れた場所への食品運送に成功した。

 最近では大分県が9日、佐伯市宇目の山間部で、ドローンを使って10kgの荷物を宅配する実証実験を行った。近所に商店がなく、交通手段を持たない「買い物弱者」が過疎地を中心に増え続ける中、ドローンを成長戦略の柱の一つと位置づける県は、今後実験を繰り返して技術面や安全面での課題をクリアし、全国に先駆けて実用化を目指すとしている。この実験に使われたドローンは、モバイルクリエイト(大分市)が15年に設立した子会社ciDrone(シーアイドローン、大分市)の製造によるもので、重量35kg、縦横各1.7m、高さ0.7mは「県内にあるドローンでは一番大きいもの」(実験担当者)という。

 合わせて、国土交通省は都市部での飛行が可能かどうかの検討を、18年度から始める。都市部には電柱やビルなどの、接触事故が懸念される構造物を多く抱えているためで、飛行する機体の認証制度やオペレーターの資格新設なども検討される。

 ドローンの商用化を進める国際的な競争は熾烈さを見せており、課題となる目視外飛行の基準については中国やフランスが先を行く。民間向けドローンで、世界の70~85%のシェアを持つ中国発ドローン最大手のDJIの存在感が大きい。昨年10月には、米国のトランプ大統領がドローンの規制緩和に関する大統領令を公表した。出遅れ感が否めなかった米国が目視外飛行や夜間飛行を、自治体ごとのルールに改めた緩和効果で、商業化が急速に進展する可能性が囁かれ出した。

 全世界で関連市場が10兆円を越えるとも囃され、期待を込めて「空の産業革命」とも表現されるのがドローンだ。産業革命で国富を飛躍的に増大させた、古(いにしえ)の夢物語の舞台は大英帝国だった。空の産業革命を制するのは「どの国」だ!(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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