リチウムイオン電池のコストは本当に下がるのか?EV過熱でレアメタルにも波及

2018年2月11日 20:59

印刷

 いわゆるEVシフトで注目が集まる話題だが、EVにもっとも欠かせないバッテリーには様々な問題が含まれている。ガソリン車の販売を禁止する国も出てくる中、EV生産が進んでバッテリーの需要もある時点で大きく伸びるものと思われる。しかし、需要が伸びることで、本当にリチウムイオン電池のコストは下がるのだろうか? 大量生産の恩恵を受けることができるのだろうか?

【こちらも】電気自動車社会の達成のカギを握るバッテリー開発とその制御技術

■入手しにくい材料レアメタルでコストは下がらない

 リチウムイオン電池の内部は、リチウムイオンを貯蔵する負極と、リチウムと反応して電子の受け渡しをする正極に分かれており、充放電の際には電解液を通してリチウムイオンがせわしなく動きまわるのがリチウムイオンバッテリー。正極材には、コバルト、ニッケル、マンガンの単一、あるいは複合金属が使用されている。

 その中でもリチウム、コバルトなどはレアメタルと言われ、文字通り希少金属のため特定の国からしか入手できない。つまり、どこからでも入手できるというわけではないリチウムイオン電池の原材料は、安定的確保が難しい。

 生産予測台数から単純に換算して、EVが普及し始める2020年には10倍、2025年にはそれの7倍強のレアメタルが必要になるが、これだけの“希少”材料を果たして確保することができるのだろうか?それと同時に、かつてないほどの材料高騰が予測されるのだ。リチウムイオン電池の製造コストのうち、材料費が占める割合は6~8割と言われている。一般的な材料であれば、大量生産の恩恵で材料費は下がっていくことになるが、リチウムイオン電池の場合はその特性上、下がらない可能性がある。

 よって、電池リサイクル企業ではパソコンや家電からのレアメタルの回収が急がれているわけだが、果たしてそんな量でEVの巨大電池に必要な材料を賄えるのかどうかも疑問である。

■生産工程でのコスト削減は可能か?

 材料費でのコスト削減が難しいとしたら、生産工程での工夫でコスト削減に試みるしかないだろう。しかし、バッテリーの生産工程は短いことが考えられる。製作・加工過程が少ないとなると、これまたトヨタ生産方式を基本に“乾いたぞうきんを絞る”ように、造り方の工夫でコスト削減を達成しなければならない。現場の知恵が頼りだ。しかし、これが日本人だったら可能性はある。造り方の工夫で10分の1のコスト削減を達成した企業があるのだから。例えば、材料費が占める割合が6割だとしたら、残りの4割を10分の1に抑えることができれば、かなりのコスト削減が達成可能だ。たぶんこれは、イーロン・マスク氏には理解ができない分野であろう。

 あとは、全固体電池などポストリチウムイオン電池の開発も急ピッチで進められている現状もあるわけで、関係企業としては取捨選択でも頭の痛いところであり、終わりのない戦いであることは間違いない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事