過去最高となった日本の外国人労働者数、そのメリットとデメリットは?

2018年1月28日 08:18

印刷

コンビニのバイトでも外国人労働者が増加している。(c)123rf

コンビニのバイトでも外国人労働者が増加している。(c)123rf[写真拡大]

 日本で働く外国人労働者が過去最高の人数となる中で、その雇用者や一緒に働く人々に様々なメリットやデメリットがあることが分かった。

【こちらも】外国人従業員の離職率を下げるには、「日本文化への理解」が重要

■労働者人数、雇用事業所とも過去最高に

 26日、厚生労働省の発表によると、2017年10月末時点における外国人労働者数は127万8,670人。これは前年同期比19万4,901人の増加で、2007年に届出が義務化されて以降、過去最高の人数となった。

 また外国人労働者を雇用する事業所数は19万4,595カ所。前年同期比2万1797カ所の増加となり、こちらも過去最高の数字となっている。

■国籍別では、中国、ベトナム、フィリピン

 国籍別で最も多いのが、香港などを含めた中国で、37万2,263人は全体の約3割を占めている。以下、ベトナム(24万259人)、フィリピン(14万6,798人)、ブラジル(11万7,299人)、ネパール(6万9,111人)、韓国(5万5,926人)、ペルー(2万7,695人)など。

 「韓国が少ないのでは?」と思う人がいるかもしれないが、これは届出の対象に特別永住者が含まれていないため。もちろん不法な外国人労働者も含まれていないため、実質的な外国人労働者は、さらに多いことが推測できる。

 都道府県別では、東京が最も多く(39万4,834人)、以下、愛知(12万9,155人)、大阪(7万2,226人)、神奈川(6万9,400人)、埼玉(5万5,534人)、静岡(5万1,832人)、千葉(4万9,335人)、福岡(3万9,428人)などの順だ。

 ただし青森(2,614人)、秋田(1,679人)、和歌山(2,260人)、鳥取(2,324人)、高知(2,414人)のように、比較的外国人動労者が少ない県でもそれなりの数の外国人が働いていることが分かる。

■6割が外国人と働いた経験あり

 アルバイト情報を扱う「バイトル」などを運営するディップでは24日、「外国人労働者と一緒に働く実態とコミュニケーションの取り方について調査」の結果を発表した。これによると、アンケートに答えた1,523人中、60%の人が外国人労働者と働いた経験があるとのこと。外国人労働者の国籍別では中国、フィリピン、韓国、アメリカ、ベトナムなど。

 外国人と働いて良かったことでは、「日本以外の文化を知るきっかけになった」(64%)、「交友関係が広がった」(38%)、「学ぶ意欲や働く意欲が触発された」(36%)などが多い。一方、困ったこととして「意思疎通がスムーズにできなかった」(35%)、「日本人よりも細かい指示や説明が必要だった」(29%)、「仕事に対しての価値観が違った」(28%)などの意見が多い。

■「外国人の採用方法が分からない」経営者も

 「飲食店.COM」など飲食店の情報サービスを取り扱うシンクロ・フードでは16日、「飲食業界における外国人スタッフの採用状況」を調査・発表している。これによると、飲食店経営者や運営者の158人中、48.7%で外国人スタッフの採用経験があるとのこと。

 外国人スタッフの採用理由として多かったものでは、「外国人と日本人を区別していない」(48.1%)、「日本人のスタッフが採用しづらいから」(44.2%)、「英語や中国語など日本語以外の語学力」(26.0%)、「日本人よりも優秀・勤勉なスタッフを採用できるから」(15.6%)などが上位に来ている。反対に外国人スタッフを採用したことのない理由を尋ねたところ、「外国人を採用する機会がたまたまなかった」(56.8%)が最も多かったが、「外国人採用における条件や手続きが分からない」(43.2%)、「日本語でのコミュニケーションが不安(42.0%)」、「勤務態度や仕事へのモチベーションが不安」(32.1%)などの意見があった。

■メリットとデメリット

 両方の調査では、回答者から寄せられた具体的な意見も掲載している。良かった点と困った点に分けて、目についたものを挙げてみよう。

【良かった点】
・職場環境の改善など、自分の要求をちゃんと伝えるところ(ディップ調査)
・取り引き相手と外国人の同僚の母国語が同じで、代わって対応してもらえた(ディップ調査)
・ポジティブでエネルギッシュに働く人だったので周りの人達も良い影響を受けた(ディップ調査)
・仕事に対する意欲は良い(シンクロ・フード調査)
・応募が集まりづらいキッチンアルバイトが充足できた(シンクロ・フード調査)
・留学を終えて帰国する際に、後任の留学生を探してきてくれ、バトンタッチによる採用が継続(シンクロ・フード調査)
・日本で知り得る現地の料理イメージとは異なる物などを知ることが出来たのは他のスタッフの刺激になった(シンクロ・フード調査)

【困った点】
・日本独特の繊細な表現(色やニュアンス)が全く理解されず、伝えるのに苦労した(ディップ調査)
・日本人特有の建前が通じず、気持ちを伝えるのに苦労した(ディップ調査)
・時間のルールもあまり守られなかった(ディップ調査)
・5分の遅刻でも大したことではないと周囲を困らせたことがあった(ディップ調査)
・留学ビザでの勤務時間制限を守ってもらうことを、各店長に徹底することが最初苦労した(シンクロ・フード調査)
・文化や習慣の違いによる、働く意識の違い(シンクロ・フード調査)
・最初に教えなければいけない点が日本人よりかなり多い(シンクロ・フード調査)

■外国人スタッフを受け入れる工夫

 シンクロ・フードの調査では、これまで外国人スタッフを採用していない人でも、今後外国人スタッフを採用すると答えた人が77.8%となり、外国人と働く機会は増えそうだ。

 またディップ調査では、外国人と働く際の工夫として、「ゆっくり話しながら実際にやって見せて説明」「分かりやすい言葉に置き換えて説明」「日本人ももっと受け入れる国の文化や価値観の違いを学ばなければならない」などの意見を紹介している。(記事:県田勢・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事