韓国の新スパコン「Hangang」稼働式 12月に正式サービス、量子計算との連携も計画

2026年11月4日 14:59

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記事提供元:Tech Times

(panumas nikhomkhai/pexels.com)

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韓国科学技術情報通信部と韓国科学技術情報研究院(KISTI)は2026年11月2日、大田のKISTI本院で、第6次国家スーパーコンピューター「Hangang(漢江)」の稼働式を開いた。正式サービスは12月14日に開始する予定で、大学、政府出資研究機関、企業の研究開発を支える。

Hangangは、従来の大規模シミュレーションに加え、GPUを使ったAIによる科学研究に対応する。KISTIはIonQの量子コンピューター「Tempo」と接続し、量子計算と高性能計算(HPC)を組み合わせる環境の整備も進めている。

■理論性能は前世代の24倍

ソウルを流れる漢江にちなんで名付けられたHangangは、2018年に導入された第5次国家スーパーコンピューター「Nurion」を継ぐシステムだ。科学技術情報通信部のキム・ソンス研究開発政策室長は稼働式で、AIと科学技術の融合を支え、新たな科学的発見を導く中核基盤と位置付けた。

同部の発表では、GH200などのGPUを8496基、CPUを9936基搭載する。理論ピーク性能は614.7ペタフロップスで、毎秒61京4700兆回の浮動小数点演算に相当する。ストレージ容量は205ペタバイト、ネットワーク性能は400Gbps以上とされる。

Nurionとの比較では、理論計算性能は24倍、ストレージ容量は10倍、ネットワーク性能は4倍となる。HPEによると、基盤には「HPE Cray Supercomputing EX4000」を採用し、GH200を使う区画と第5世代AMD EPYCプロセッサーを使う区画で構成する。冷却には100%ファンレスの直接液冷方式を採用した。

韓国の国家スーパーコンピューターの歴史は、1988年の初代機「Cray-2S」導入にさかのぼる。自動車の衝突解析やエンジン設計、気象予測、液体ロケットエンジンの燃焼解析、次世代電池開発、極端な気候の研究などに計算資源を提供してきた。

■CPUとGPUのメモリーを活用するGH200

GH200は、72コアのArmベースGrace CPUとHopper GPUを組み合わせた統合型プロセッサーだ。NVIDIAによると、両者を結ぶNVLink-C2Cは最大900GB/sの双方向帯域幅を持ち、CPUとGPUの間でキャッシュの整合性を保ちながらメモリーへアクセスできる。

NVIDIAが公表したGH200のHBM3構成では、CPU側に最大480GBのLPDDR5X、GPU側に96GBのHBM3を備え、合計最大576GBのメモリーを利用できる。GPUからCPU側のメモリーを直接参照できるため、GPUメモリー容量を超えるデータを扱う際の選択肢が広がる。

この仕組みは、大きなモデルやデータを扱う科学AI研究で重要になる。CPUとGPUの間のデータ転送管理を簡素化し、利用可能なメモリー容量を広げることで、創薬や材料設計、気候モデリングなどの計算を支える。GH200はFP64に加え、AI計算で使われるFP16やFP8などにも対応する。

KISTIは2026年3〜4月、HPE、NVIDIA、OpenACCと共同でハッカソンを開催した。参加者は1ノード当たりGH200を4基搭載する計22ノードのパイロットシステムを使い、AI・HPC分野のコード最適化に取り組んだ。KISTIによると、参加チームはA100を使った比較対象に対して最大41.8倍の高速化を達成した。

■調達予算は増額、契約は保守込み3825億ウォン(約451億円)

調達では入札の不調が続いた。韓国国会予算政策処の分析資料では、GPU価格の上昇などを受け、総事業予算は当初の2929億4900万ウォン(約346億円)から4482億5700万ウォン(約529億円)へ、約53%増額された。

KISTIとHPEは2025年5月12日、3825億ウォン(約451億円)の最終契約を締結した。この契約額には5年間の保守費780億ウォン(約92億円)が含まれる。総事業予算と、機器の構築・保守をまとめた契約額は、それぞれ異なる範囲の費用を示す。

東亜日報によると、最終的な入札にはHPEとLenovoの2社が参加し、性能などの審査を経てHPEが選ばれた。韓国政府は選定時、HPEが2024年11月版のTOP500掲載システムのうち106台を供給していたことを、同社の大規模システム構築実績として挙げていた。

■TOP500と用途別の性能をどう見るか

科学技術情報通信部は、Hangangが今後発表されるTOP500で世界10位前後に入ると見込む。2026年11月の国際会議SC26は、15〜20日に米シカゴで開催される。Nurionは2018年の導入時に世界11位に入った。

TOP500は、倍精度の浮動小数点演算で密な連立一次方程式を解くHPLベンチマークの実測性能で順位を付ける。Hangangについても、正式順位を決めるのは提出された実測結果だ。AI研究への適性を評価する際には、演算精度、メモリーの使い方、実際のプログラムでの処理時間も判断材料になる。

TOP500の2026年6月版では、中国の「LineShine」がHPLで2.198エクサフロップスを記録し、首位となった。中国のシステムが首位に立つのは2017年以来である。一方、混合精度計算を測るHPL-MxPでは、LineShineは7.92エクサフロップスで4位だった。

同じHPL-MxPでは、米ローレンス・リバモア国立研究所の「El Capitan」が16.7エクサフロップスで1位、オークリッジ国立研究所の「Frontier」は11.4エクサフロップスで3位だった。異なる精度や計算手法を使う試験では、システムの特徴が別の形で表れる。Hangangでも、こうした指標と創薬・材料・気候研究などの用途別性能を併せて見ることが重要になる。

■K-Moonshotなどの国家研究を支援

Hangangは、韓国政府の「K-Moonshot」など、国家戦略に関わる研究開発を重点的に支援する。K-Moonshotは科学技術研究へAIを導入し、2030年までに研究生産性を2倍に高め、2035年までに8分野・12の国家ミッションの解決を目指す計画だ。

科学技術情報通信部は2026年2月に推進戦略を発表し、3月に国家ミッションを確定した。5月27日には各ミッションの責任者12人を任命し、政府横断の推進組織を発足させた。

対象は新薬開発、脳とコンピューターを結ぶインターフェース、原子力、核融合、太陽電池、ヒューマノイド、フィジカルAI、宇宙、材料、AI科学者、半導体、量子技術に及ぶ。新薬開発の10倍高速化、小型モジュール炉を搭載する船舶、宇宙データセンターの基盤技術など、具体的な課題を掲げている。

こうした研究を支える政策として、政府は2026年度予算案でAI分野に10兆1000億ウォン(約1兆1900億円)を計上した。また、2026年度の政府研究開発予算の確定額は35兆5000億ウォン(約4兆1900億円)で、2025年度比19.9%増となった。Hangangは、これらの政策の下で研究者が共同利用する計算基盤の一つを担う。

■Tempoと量子・HPC連携環境を構築へ

KISTIは2025年12月、IonQと100物理量子ビットのTempo導入について合意した。両者は、Hangangへの統合によって、韓国初のオンサイト型量子・古典ハイブリッド計算環境を構築する方針を公表している。

2026年3月には、米サンノゼのGTCに合わせ、KISTI、NVIDIA、IonQが連携を発表した。KISTIによると、スーパーコンピューター上で量子アルゴリズムをシミュレーションし、実機向けに最適化して実行する統合基盤を目指す。量子・HPC応用技術や、量子技術を支援するAIモデルの研究も協力対象となる。

東亜サイエンスによると、KISTIは2027年5月ごろに導入する量子コンピューターとHangangを連携させる構想を持つ。研究者が同じ拠点の計算資源を使い、古典計算による処理と量子回路の実行を組み合わせる環境づくりが進められる。

Tempoはバリウムイオンを用いるイオントラップ方式の量子コンピューターだ。この方式では、電磁場で閉じ込めたイオンを量子ビットとして使い、集団振動を介して量子ビット間を操作する。離れた位置の量子ビット同士にも操作を行える接続性は、量子回路を実装する際の特徴となる。

IonQは2025年9月、Tempoで独自の性能指標「アルゴリズム量子ビット数(AQ)」の64を達成し、予定を3カ月前倒ししたと発表した。AQは、一定の品質を保ちながら実行できる量子アルゴリズムの規模や複雑さを評価する同社の指標である。

連携にはNVIDIAのNVQLinkを活用する計画だ。2025年10月に発表されたこのオープンなシステムアーキテクチャーは、CUDA-Qと組み合わせ、GPUを備える計算機と量子制御システムを接続する。NVIDIAは同年11月のSC25で、世界の十数カ所のスーパーコンピューティング拠点による採用計画も発表した。

■研究規模に応じて計算資源を配分

Hangangは9月の研究者募集を経て試験サービスを実施しており、12月14日の正式サービス開始を予定する。KISTIのイ・シク院長は、これまでの運用経験を生かし、安定運用と利用者支援に取り組む方針を示した。

マネートゥデイによると、一般研究向けには、初期のアイデア検証を支援する1ノード相当の「探索研究」、2〜49ノード相当の「創意研究」、50ノード相当の「巨大研究」という区分を設ける。研究の規模と目的に応じて計算資源を配分する仕組みだ。

大学や政府出資研究機関に加え、企業による技術開発も支援する。独自の計算基盤を整備しにくい中小・ベンチャー企業には、計算資源とともにコンサルティングや技術支援を提供する。

TOP500の2026年6月版では、韓国の掲載システムは19台で、台数では世界6位だった。Hangangの正式サービス開始によって、国内の研究者が共同利用できる計算資源は拡充される。大規模シミュレーション、科学AI、量子・古典ハイブリッド計算を研究現場でどう活用するかが、今後の焦点となる。

元記事: South Korea Launches Hangang Supercomputer: Quantum Computing Integration Due by May

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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