欧州、次世代AIスパコン「LUMI-AI」を約715億円で整備―AMDのMI430Xを採用

2026年9月2日 23:24

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記事提供元:Tech Times

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欧州高性能計算共同事業(EuroHPC JU)は、次世代AIスーパーコンピュータ「LUMI-AI」の整備に向け、フランスのBullと3億8780万ユーロ(約715億円)の契約を締結した。AMDの次世代GPU「Instinct MI430X」を採用し、AIの学習・推論から大規模な科学シミュレーションまで幅広い処理に対応する。フィンランドのカヤーニに設置し、2027年後半の導入を予定している。

■AI性能を現行LUMIの10倍に

LUMI-AIは、フィンランドのCSC(IT科学センター)が運営するLUMI AIファクトリーの中核計算基盤となる。現在稼働しているスーパーコンピュータ「LUMI」と比べ、AI計算能力を10倍に高め、従来型の高性能計算能力も約2倍に引き上げる見込みだ。契約額の3億8780万ユーロには、システムの調達、納入、設置、ハードウェアとソフトウェアの保守が含まれる。

費用はEuroHPC JUとLUMI AIファクトリーのコンソーシアムが半分ずつ負担する。コンソーシアムにはフィンランド、チェコ、デンマーク、エストニア、ノルウェー、ポーランドの6カ国が参加している。LUMI-AIはEuroHPC JUが所有し、コンソーシアムが受け入れ主体となる。

設置場所は、フィンランド中部カヤーニのレンフォルシン・ランタ・ビジネスパークにCSCが整備する新しいデータセンターである。産業界のAI開発と学術研究の双方を支え、大規模な学習・推論、データ集約型研究、科学シミュレーションなどに利用される計画だ。

■AMDの次世代GPU「Instinct MI430X」を採用

LUMI-AIは、Bullの液冷式スーパーコンピュータ基盤「BullSequana XH3500」を採用する。計算処理の中核にはAMD Instinct MI430X GPUと、1基あたり256コアの第6世代AMD EPYCプロセッサを搭載する。

MI430Xは、AIと科学技術計算を一つの基盤で処理することを想定したGPUである。AMDの公表仕様では、最大432GBのHBM4メモリ、最大23.3TB/秒のメモリ帯域幅を備え、倍精度浮動小数点演算で最大288TFLOPSのピーク理論性能を持つ。

倍精度浮動小数点演算は、気候、流体、材料、分子、物理現象などを数値的に再現する科学シミュレーションで重要になる。必要とされる精度は計算手法や処理段階によって異なるが、MI430Xは高精度の科学計算と、AI向けの低精度演算を同じGPUで扱える点を特徴としている。

AMDは、MI430Xのピーク時のFP64演算性能について、NVIDIAのVera Rubin GPUの最大8.7倍に相当すると説明している。ただし、これは各社の公表仕様に基づくピーク理論値の比較であり、LUMI-AI全体の実効性能を示すベンチマークではない。システムの構成や通信、ソフトウェア、実際の処理内容によって性能は変化する。

LUMI-AIは、こうした高精度計算能力に加え、AIモデルの学習、推論、ファインチューニングに必要な演算機能を組み合わせる。科学シミュレーションによるデータ生成と、そのデータを利用したAI開発を同じ計算環境で進める「AI for Science」の基盤としての利用が見込まれている。

■Bull、IBM、Nokiaがシステムを構成

BullSequana XH3500は、AIと高性能計算の双方を扱う大規模システム向けのアーキテクチャである。Bullの直接液冷技術と、高性能インターコネクト「BXI」を組み合わせ、GPUやCPU、ストレージを接続する。

ストレージにはIBMの「Storage Scale」を基盤とするシステムを採用する。Nokiaは、BullのBXIを補完するデータセンターネットワークの構築に参加する。

システムは複数の利用者や組織が計算資源を共有できるマルチテナント構成を採用する。APIを通じた利用にも対応し、従来型のスーパーコンピュータ用ジョブ管理だけでなく、AIの開発・運用環境からも利用しやすい設計とする。

LUMI AIファクトリーは、既存のLUMIを利用して、2025年4月から欧州の中小企業やスタートアップにAI計算資源と関連サービスを提供している。製造、医療・生命科学、通信技術・ネットワークを重点分野とし、気候研究、材料科学、言語技術などの利用者も支援している。LUMI-AIの導入後は、提供できる計算能力とサービスの拡大を図る。

■量子コンピュータ「LUMI-IQ」と統合

同じデータセンターには、IQM Quantum Computersが提供する量子コンピューティング基盤「LUMI-IQ」も設置される。CSCは、LUMI-AIとLUMI-IQを緊密に連携させ、従来型のシミュレーション、機械学習、量子アルゴリズムを組み合わせるハイブリッド計算環境を構築する計画だ。

LUMI AIファクトリーのディレクターを務めるPekka Manninen氏は、この統合によって科学と産業の新たな研究領域につながることに期待を示している。量子計算だけに処理を置き換えるのではなく、CPUやGPUによる大規模計算と量子プロセッサを役割に応じて組み合わせる構想となる。

■廃熱を地域暖房に再利用

LUMI-AIは100%再生可能エネルギーで稼働する計画である。液冷システムで回収した廃熱は、カヤーニの地域暖房ネットワークへ供給する。

CSCは現在のLUMIでも、計算機から発生する熱を地域暖房に活用している。LUMI-AIでは新しいデータセンターとBullの水冷技術を組み合わせ、CSCのデータセンターから回収した熱が地域暖房に占める割合をさらに高める方針だ。

■導入は2027年後半を予定

LUMI-AIは2027年後半の導入を予定している。現時点では完成前のシステムであるため、TOP500やMLPerfなどにLUMI-AIとしての測定結果は登録されていない。

MI430Xの288TFLOPSというFP64性能をはじめ、現在示されているGPUの数値はAMDが公表したピーク理論値である。LUMI-AIの実際の処理性能や電力効率は、システムの完成後に個別の構成とワークロードを用いて評価する必要がある。

EuroHPC JUによると、LUMI-AIは同事業が契約した6件目の次世代AIファクトリー向けスーパーコンピュータとなる。稼働後は、欧州の研究機関や企業、中小企業、スタートアップが利用する計算基盤として、AI開発と科学技術計算の双方を支えることになる。

元記事: Europe Signs $451M AMD Deal for LUMI-AI, Defying NVIDIA AI Factory Dominance

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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