NVIDIAとサムスン電機、専用FC-BGA基板ラインに共同投資 韓国2拠点で供給拡大

(BoliviaInteligente/Unsplash)[写真拡大]
NVIDIAとサムスン電機(Samsung Electro-Mechanics、SEMCO)は2026年10月21日、AI半導体向けパッケージ基板の生産拡大に向けた戦略的提携を発表した。韓国の世宗と釜山に専用生産ラインを設けるため共同投資し、2026年から複数年にわたり供給する。AIインフラの増設に必要な高性能基板を安定的に確保する狙いだ。
■世宗・釜山の専用ラインで長期供給
供給対象は、NVIDIAの演算用チップセットに使う基板と、データセンター内の高速通信を担うネットワークスイッチ向け基板である。サムスン電機は、AI向けの高付加価値パッケージ基板事業を拡大する機会と位置付けている。
サムスン電機は、NVIDIA向け供給量が2026年を起点とする複数年で年平均2桁以上の伸びになると見込む。2028年には、NVIDIA向けに割り当てる生産量が、同社の年間パッケージ基板総生産能力の大きな割合を占める見通しだ。
NVIDIAの発表によると、まず韓国の既存拠点から生産能力の提供を受ける。提携には世宗と釜山の設備改良や新工場の建設も含まれ、既存設備による供給と将来の増産を組み合わせる構成となる。共同投資額と両社の負担割合は、提携発表では示されていない。
設備投資と長期供給を組み合わせることで、NVIDIAは製品の増産計画に必要な基板を確保しやすくなる。サムスン電機にとっても、顧客の需要を見据えて専用設備を整備できることが、投資と生産計画を立てる支えになる。
■大型化・多層化するAI半導体基板
FC-BGAは、フリップチップ・ボール・グリッド・アレイの略称だ。半導体チップとマザーボードの間で信号や電力を受け渡すパッケージに用いられ、基板内部に細かな配線を多層に形成する。チップ側の微細な接続を、システム基板側の接続へ広げる役割を担う。
その層間絶縁材料として使われるのが、味の素グループの「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」である。銅配線の間を絶縁するフィルムで、高性能なCPUやGPUなどのパッケージ基板を支える。味の素の公表資料では、高性能半導体基板向け層間絶縁フィルム市場で95%以上の世界シェアを持つ。
AI向けでは、基板の大型化と多層化が進む。味の素が2026年6月に示した技術動向では、AI向けの2.5Dパッケージ基板は2026年に約100mm角・11層、2031年以降には約120mm角・13層へ進む姿が描かれている。チップの高性能化は、配線を収める基板と絶縁材料にも高度な仕様を求める。
サムスン電機は、基板面積と層数が増すほど、信号損失を抑える微細配線と、熱変形による反りを抑える平坦度の管理が重要になると説明する。製造設備の増設とともに、こうした加工精度を保ち、良品を安定して生産する技術が供給能力を左右する。
■MLCCとシリコンコンデンサーの技術を活用
サムスン電機はFC-BGA基板に加え、MLCC(積層セラミックコンデンサー)とシリコンコンデンサーも手掛ける。いずれも電源の安定化に使われる受動部品であり、基板製造と電子部品の両方に技術を持つことが、同社の特徴となっている。
同社の韓国語発表では、高速演算時の電源ノイズを制御し、電力効率を高めるため、MLCCやシリコンコンデンサーを基板内部に直接埋め込む工程を説明している。電源を安定させる部品を半導体の近くに配置するという設計上の発想を、パッケージ基板の内部に取り込むものだ。
サムスン電機の張徳鉉CEOは、先進的なFC-BGA製造技術と高信頼性MLCC技術を組み合わせ、NVIDIAのAIプラットフォームを適時に供給する総合ソリューション提供者を目指す考えを示した。微細加工と部品技術を組み合わせ、高性能・高信頼性の基板を提供する方針である。
NVIDIAでオペレーションを統括するデボラ・ショキスト上級副社長も、AIインフラの構築ペースに対応するには世界規模の製造能力拡大が必要だと説明した。サムスン電機との協業を、基板供給パートナーの拡充と生産能力の追加につながる取り組みと位置付けている。
■6兆7800億ウォンの増産投資も進める
サムスン電機は提携発表に先立つ2026年9月、世宗拠点とベトナム子会社に総額約6兆7800億ウォンを投じ、FC-BGAの生産能力を拡張する計画を公表した。国内と海外の双方で、AIサーバー向けの需要増加に対応する。
世宗への投資額は4兆2700億ウォン(約5080億円)で、同社によると単一製品向けとして過去最大となる。投資期間は2026年9月から2028年5月までで、量産開始は2028年9月を予定する。
ベトナム子会社には約2兆5100億ウォンを投じる。同社発表では、新たな施設は2030年6月までに建設を終えて稼働を始める計画だ。世宗とベトナムで段階的に供給能力を増やしていく。
9月の投資発表で同社は、グローバル顧客からの資金支援と中長期の供給数量の確保を、事業の安定性を支える要素として挙げていた。顧客側が増産投資を支え、メーカー側が設備を整える仕組みは、今回のNVIDIAとの提携にも共通する。
■納期と価格に表れる基板需要の強さ
聯合ニュースが2026年9月29日に伝えた業界情報によると、FC-BGAの受注から納品までの期間は48~56週間となり、通常の約12週間を大きく上回っている。高性能基板の供給不足を受け、証券各社はサムスン電機の増産と業績見通しに注目している。
生産設備の稼働率も上昇している。ニューシスによると、2026年上期の半導体パッケージ基板の稼働率はサムスン電機が89%、LG Innotekが94%だった。これらは各社の基板事業についての数値である。
韓国のFETVによると、サムスン電機のパッケージソリューション事業の2026年上期売上高は1兆4966億ウォン(約1780億円)で、前年同期比約41%増だった。営業利益は約237%増の1602億ウォン(約191億円)となった。高性能基板の供給拡大が、同事業の成長を支えている。
iM証券は2026年10月6日の分析で、サムスン電機が第3四半期に顧客ごとにFC-BGA価格を10~20%引き上げたとした。同事業の四半期営業利益率を約30%と推定し、2027年には40%に達する可能性があると予測している。
需要構成もAI・データセンター向けへ移りつつある。韓国のイートゥデイによると、張CEOは2026年1月、GPU、ネットワーク、パワー半導体などを含めると、将来はFC-BGA市場全体の60~70%がAI・データセンター関連になるとの見方を示した。また、韓国経済新聞は同年9月、張氏が3月の株主総会後に、サーバー・データセンター向け需要は自社の生産能力を50%以上上回ると述べたと報じている。
韓国経済新聞が紹介したMarket Research Intellectの推計では、世界のFC-BGA市場は2024年の約109億ドルから2031年に約241億ドルへ拡大する見通しだ。基板の大型化・多層化とAI関連用途の広がりは、メーカー各社にとって増産と技術高度化の両方に取り組む背景となる。
■日本を含む供給網全体で能力を拡大
NVIDIAは10月21日、サムスン電機との提携を含む複数の製造能力拡大策を発表した。イビデン、サムスン電機、台湾Unimicronとの契約などを通じ、自社製品向け基板の生産能力を今後3年間で2.5倍にする計画である。日本、韓国、台湾の拠点を活用し、供給網の強靱性を高める。
イビデンとは、2026年に先に発表した契約に基づき、日本の大野事業場の増産を支えるため、NVIDIAが数十億ドルを前払いする。同事業場の生産能力を現在の3倍にすることを目指し、追加能力は2028年第1四半期から段階的に立ち上がる見通しだ。Unimicronの台湾での増産は2027年第2四半期から始まり、2028年半ばのフル稼働を予定する。
同じ発表では、基板以外の工程も増強する。Amkorとは韓国でインターポーザーウエハーの生産能力を2028年末までに300%超増強する計画だ。KYECには米国の新テスト施設向けに11億ドル(約1730億円)を前払いし、SPILとは光エンジンの生産能力を2027年半ばまでに15倍、2028年末までにさらに2倍へ拡大することを目指す。
メモリーでも供給関係を広げている。Bloombergが2026年6月5日に報じたところでは、ジェンスン・フアンCEOは、Samsung Electronics、SK hynix、Micronの3社が次世代Vera Rubin向けHBM4の供給認定を取得したと明らかにした。半導体そのものに加え、基板、実装、検査までをそろえることがAIシステムの増産を支える。
基板への資本参加は他社でも進む。BroadcomとTOPPANの合弁会社ASTは2026年9月、シンガポールに高性能FC-BGA基板工場を開設した。TOPPANは同年中の生産開始を予定している。AI演算やネットワーク向けの基板を確保するため、設計企業と基板メーカーが設備の段階から協力する動きが具体化している。
Google、AMD、BroadcomのようにAI半導体を開発する企業にとっても、製品計画に合わせて基板の供給能力を確保する重要性は高まる。今回の共同投資は、NVIDIAが既存拠点からの供給と将来の専用ライン増設を組み合わせ、AIインフラの拡大を支える取り組みとなる。
元記事: NVIDIA Co-Invests in Dedicated Samsung Electro-Mechanics Lines to Lock In Korean AI Chip Supply
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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