SiPearlとQuobly、欧州設計CPUと量子プロセッサの統合を検討

2026年10月11日 18:23

印刷

記事提供元:Tech Times

(Sipearl.com)

(Sipearl.com)[写真拡大]

フランスのSiPearlとQuoblyは2026年10月9日、スーパーコンピュータ向けCPUと量子プロセッサを組み合わせるため、非独占の覚書を締結した。最初に両社の技術を共通のシステム構成に組み込めるか調べ、その後、計算処理の分担や将来の製品設計を検討する。

■Rhea1と量子プロセッサを結ぶ構想

SiPearlが提供するのは、欧州で設計したCPU「Rhea1」と、同CPU向けの「Seine Reference Server」だ。Quoblyはシリコンスピン量子ビットを用いる量子処理装置(QPU)を開発しており、今回の検討を量子コンピュータ製品群「Alloy」の開発に位置付ける。

両社の共同発表によると、第1段階ではCPU、サーバー、QPUを共通のシステム構成で扱う技術的な実現性を評価する。続いて、従来型の高性能計算(HPC)と量子計算を組み合わせた処理の最適化と展開を探り、将来世代の製品設計で協力できる点も検討する。

Quoblyの共同創業者兼CEO、Maud Vinetは、量子コンピュータを大規模化するには、その周囲の従来型の計算環境も整える必要があると説明した。SiPearlの創業者兼CEO、Philippe Nottonは、グルノーブルにある同社の研究開発拠点を通じた両社の関係と、欧州の計算基盤を築くという共通の目標を挙げた。

■商用半導体ラインで進む量子チップ開発

シリコンスピン量子ビットは、シリコン中の微小な領域「量子ドット」に閉じ込めた電子のスピンを利用する。電極で量子ドットを形成・制御する仕組みで、超伝導回路、イオントラップ、光、中性原子を用いる方式とは異なる製造技術を基盤とする。

Quoblyによると、同社の「QSOI」は完全空乏型SOI(FD-SOI)半導体技術を基に、量子ビットと制御用トランジスタを集積する構想だ。STMicroelectronicsがフランス・クロルの商用300ミリメートル製造設備で作製したチップを使い、Quoblyは2026年9月、量子ビットの読み出し、1量子ビット操作、2量子ビット操作を同一チップ上で示したと発表した。

同社は制御回路の集積と極低温向けのプロセス設計キットの開発も公表している。量子ビットには同位体であるシリコン28を濃縮した材料を用いる方針だ。シリコン29の原子核が持つスピンによる磁場雑音を抑えることは、量子状態を保つ時間の改善につながる。

既存の半導体製造技術を利用できることは、Quoblyが掲げる量産構想の柱となる。同社はAlloyの初期製品「Alloy Pioneer」について、HPCや研究分野の利用者向けに2026年末からクラウドでのアクセスを始める計画を示し、2032年には100万量子ビットを目標としている。

■Rhea1の仕様と欧州の供給網

Rhea1は欧州プロセッサ・イニシアチブを背景にSiPearlが設計したCPUで、80基のArm Neoverse V1コアと610億個超のトランジスタを備える。同社の製品資料には、4スタックのHBM2E高帯域幅メモリと4系統のDDR5インターフェースも記載されている。

SiPearlは2026年5月13日にRhea1の初回起動を発表し、9月にはドイツのスーパーコンピュータ「JUPITER」への組み込みに向け、最初のCPUをBullへ引き渡した。両社の共同発表では、Rhea1の提供開始を2026年末としている。後継のRhea2は、フランスのエクサスケール機「Alice Recoque」に採用される計画だ。

Rhea1の設計は欧州で行われる一方、製造を担うのは台湾のTSMCで、製造工程にはN6プロセスを使う。CPUコアにはArmの設計資産を採用する。欧州の計算基盤をめぐる今回の取り組みは、域内で設計されたCPUと、フランスの設備で製造された量子チップを組み合わせる計画として位置付けられる。

■システム統合で検討すること

量子ビットを動かす極低温環境と、通常のサーバー環境をつなぐには、制御信号の伝送、測定結果の読み出し、冷却装置に流入する熱の管理が必要になる。HPCとQPUが処理を分担する場合は、データの受け渡しや実行順序を含むシステム全体の設計も課題となる。

QuoblyのQSOIは、量子ビットと制御用回路の集積を進める設計だ。今回の実現性調査では、その量子システムとRhea1、Seineサーバーをどう接続するかが検討の中心になる。両社は評価を踏まえて、ハイブリッド計算の処理方式とAlloyの将来の構成を探る。

研究段階の量子計算機では、操作時の雑音や量子ビット数が、実行できる計算を制約する。Quoblyが公表した同一チップ上の基本操作は製造技術の進展を示す成果であり、今後は操作性能や製造時の再現性、システムに組み込んだ際の性能が焦点となる。

■欧州の公募と量子計算基盤

両社は欧州の公募への対応でも協調する意向を示し、候補として欧州半導体共同事業体「Chips JU」の量子関連案件を挙げた。共同発表では、応募する公募案件や申請額は特定していない。

これとは別に、欧州高性能計算共同事業体「EuroHPC JU」は2026年8月、総額1億1900万ユーロ(約33億8000万円)の量子技術関連公募6件を始めた。各公募の応募期限は11月17日。対象にはイオントラップ、超伝導、中性原子の計算方式に加え、量子鍵配送、試験設備、実験的な製造ラインが含まれる。

製造ラインの公募には1500万ユーロが充てられ、学術研究とChips JUの半導体パイロットラインをつなぐことを目指す。Quoblyが進める半導体製造技術の量子チップへの応用を考えるうえで、関連する欧州の政策動向だ。

EuroHPC JUは既存のスーパーコンピュータと量子計算機を結ぶ基盤も整備している。2026年2月には、IQM Quantum Computers製の54物理量子ビットを備える超伝導方式の「Euro-Q-Exa」をドイツ・ミュンヘンで開設した。6月に始めた量子計算機への試験的なアクセス制度では、当初4システムを利用対象として案内した。

欧州企業の連携では、フランスのBullとアイルランドのEqual1も2026年4月に覚書を結び、Equal1のシリコンスピン量子サーバーとBullの「Qaptiva」ソフトウェアを接続する計画を発表した。SiPearlとQuoblyの協業では、Rhea1搭載サーバーとAlloy向け量子システムを結ぶ具体的な構成が、今後の実現性調査で示されることになる。

元記事: Europe Pairs Its Own CPU With Silicon Spin Qubits in First All-Indigenous HPC-Quantum Test

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード