GoogleのTPU搭載衛星が軌道へ Project Suncatcher、宇宙での運用試験を開始

2026年10月3日 16:13

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記事提供元:Tech Times

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Googleの研究計画「Project Suncatcher」で、AI向け半導体を搭載した最初の試作衛星が米国時間の2026年10月1日、地球低軌道に入った。Googleと衛星を開発したPlanetは初回通信を確認しており、今後、チップの動作や放射線、熱への対処を軌道上で調べる。

■最初の衛星が軌道へ

試作衛星は、米カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地からSpaceXのFalcon 9で打ち上げられた。Transporter-18と呼ばれる相乗りミッションには計130件の搭載物があり、打ち上げ時刻は米東部夏時間10月1日午後2時32分、日本時間では2日午前3時32分だった。

衛星は冷蔵庫ほどの大きさで、GoogleのAIアクセラレータ「Tensor Processing Unit(TPU)」を4基搭載する。Googleで計画を率いるトラビス・ビールズ氏は、衛星と通信でき、機体が想定どおりに動作していると発表した。Planetも初回通信と初期運用の開始を公表している。

Project Suncatcherは、太陽光で発電する衛星を光通信で結び、将来のAI計算基盤として使う可能性を探る長期研究だ。今回の衛星は、その構想に必要な機器を実際の宇宙環境で調べる最初の段階となる。Googleは打ち上げに合わせ、関連研究の査読を経た論文が学術誌『Joule』で公開されたと発表した。

■放射線と熱を軌道上で調べる

搭載されるTPUは、Googleが地上のデータセンターでも使うTrillium世代だ。同社は打ち上げ前、カリフォルニア大学デービス校の施設で、AI処理を実行中のチップに67MeVの陽子ビームを照射した。Googleの論文によると、試験した1基では総電離線量が最大15krad(Si)に達しても、線量の蓄積に起因する恒久的な故障は確認されなかった。

一方、高帯域幅メモリの試験では2krad(Si)を超えた後に異常が現れ、粒子の照射による訂正不能なエラーも観測された。Googleが想定する、遮蔽された機器の5年間の累積線量は約750rad(Si)だ。同社は軌道上でデータを集め、地上試験の結果と実際の運用状況を照らし合わせる。

冷却も重要な試験項目だ。地上では空気や循環する液体でチップの熱を運べるが、宇宙機は最終的に外部の放熱面から熱を放射する必要がある。Googleはヒートパイプとラジエーターを組み合わせた方式を熱真空チャンバーで試しており、今回の衛星で軌道上の性能を調べる。

米公共ラジオNPRの報道によると、衛星ではGoogleのAIモデル「Gemma」を約15分ずつ動かし、簡単な問い合わせに応答させる計画だ。運転時間は電力と熱管理の制約を踏まえた試験条件であり、Googleは今後数週間をかけてTPUの状態を調べるとしている。衛星の運用目標は約1年と報じられている。

■衛星群の構想と採算の条件

Googleが研究で示した構想では、衛星は日光を受けやすい薄明薄暮の太陽同期軌道を飛ぶ。同社の試算では、条件の合う軌道上の太陽電池は地上の同等の設備より最大8倍の電力を得られる。研究に用いたモデルには、高度約650kmで81機が近接して飛ぶ衛星群も含まれる。

多数のTPUで処理を分担するには、衛星間の高速通信が必要になる。Googleは実験室で、光通信装置1組による双方向合計1.6Tbpsの通信を示した。Planetと計画する2027年の2衛星ミッションでは、衛星間の光リンクを軌道上で試す予定だ。

費用面では、Googleの論文は打ち上げ価格が2030年代半ばに1kg当たり200ドル未満になる場合を試算している。訳文にある為替レートの1ドル=158円では約3万1600円に相当する。その価格を仮定すると、衛星を打ち上げる費用を耐用年数で割った電力1kW・年当たりの額が、米国の地上データセンターの電力費に近づく可能性があるという。

同論文の試算では、その価格水準に達する一つの道筋として、累計約37万トンの追加輸送が挙げられた。Starshipが1回に200トンを運ぶ想定なら約1800回、10年間の平均で年約180回の打ち上げに当たる。これは打ち上げ価格に関する条件付きの推計で、Googleの論文も施設全体の採算を評価したものではないとしている。

■広がる軌道上計算の試み

軌道上での計算を試す企業にはStarcloudもある。同社によると、NVIDIAのH100を搭載した衛星を2025年11月に打ち上げ、同年12月には軌道上でAIモデルの実行と小規模な言語モデルの訓練を行った。Starcloudは2026年3月、評価額11億ドルで1億7000万ドルを調達したと発表している。1ドル=158円換算では、それぞれ約1738億円、約268億6000万円となる。

Starcloudは最大8万8000機の衛星群を米連邦通信委員会(FCC)に申請している。SpaceXも最大100万機の軌道上データセンター衛星をFCCに申請した。SpaceXとNVIDIAは、Vera Rubin NVL72を基にした計算装置を衛星「Starmind AI1」に使う計画を公表している。

SpaceXの現在の製品説明では、AI1の計算装置の電力を平均最大175kW、ピーク最大250kWとしている。Googleの試作衛星で報じられた約1kWとは規模が異なる。SpaceXは大量生産した衛星の配備を早ければ2027年後半から始める構想を示す。GoogleもSpaceXの株式を保有しており、2025年末時点の持分は約6%と報じられている。

Axiom Spaceは2026年1月、軌道上データセンター用のノード2基を打ち上げたと公表した。Blue Originが発表した5,408機の「TeraWave」は、データセンターなどの利用者を地上でつなぐ通信網の計画だ。軌道上の計算装置を搭載するGoogleやSpaceXの構想とは、担う役割が異なる。

■規模を広げる際の課題

衛星の数を増やす構想には、宇宙ごみや再突入による環境への影響も伴う。宇宙分野の専門媒体Space.comは、Googleが研究で示した81機の衛星群について、砂粒より大きな物体との遭遇頻度を約5秒に1回とする分析を紹介した。これは将来の衛星群を対象とした推計である。

イタリアのリンチェイ国立アカデミーは、SpaceXが申請した最大100万機の構想に重大な懸念を表明している。同アカデミーは、衛星の反射光や放熱が天文観測に及ぼす影響、軌道上での衝突などを挙げた。中国からも2026年1月、合計約20万機の衛星群に関する国際電気通信連合への申請が報じられており、軌道と周波数をめぐる計画は大規模化している。

Googleの今回の運用で得られるのは、TPU、電源、冷却系を一つの衛星で使ったときのデータだ。機器の状態と計算処理の結果を積み重ね、2027年に予定する衛星間通信の試験や、その先の衛星群設計に生かすことになる。

元記事: Google Project Suncatcher Reaches Orbit; Cooling, Not Radiation, Now Defines Mission

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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