キュリオシティ、火星の侵食境界より上で初の掘削を計画 近くでは円盤状の構造も観測

NASAの火星探査車「キュリオシティ」が接写カメラMAHLIで撮影した岩石「Salar de Vacas」。表面には直径約3~4mm、厚さ約1mmの円盤状構造が多数見える。研究チームは、鉱物結晶の成長によるものか、硬い岩層の破片が集まったものかを調べている。2026年9月16日撮影。Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS[写真拡大]
NASAの火星探査車「キュリオシティ」が、シャープ山の地層にある「侵食スーパーサーフェス」と呼ばれる境界より上で、初めて岩石を掘削する準備を進めている。近くの岩石では直径約3~4mmの円盤状構造も見つかった。NASAが9月30日に公開したミッションブログによると、チームは新たな地層の鉱物組成と、円盤状構造の成因を調べている。
■円盤状構造には二つの成因候補
ロボットアーム先端の接写カメラ「MAHLI」は、「Salar de Vacas」と非公式に名付けられた岩石の、表面の塵をブラシで払った部分を撮影した。円盤状構造は厚さ約1mmで、重なり合うように岩石表面に分布する。NASAの惑星科学者ルーシー・リムは、似た形の構造をキュリオシティが探査初期にも観測したと記している。
チームが検討する成因は二つある。一つは、特定の鉱物が結晶として成長したというもの。もう一つは、硬い岩層が砕けた破片が集まったというものだ。形だけで鉱物の種類や成因を決めず、MastcamとMAHLIによる撮影に加え、ChemCamとアルファ粒子X線分光計(APXS)による元素分析を計画した。
地球では、水に溶けた成分が析出して石膏などの鉱物を作る。結晶の外形を指す「晶癖」は成長条件によって変わり、平たい結晶ができることもある。この知見は円盤状構造を調べる手掛かりになるが、今回の構造がどの鉱物から成るかは、分析結果を踏まえて判断する必要がある。
■掘削で調べる新たな地層
侵食スーパーサーフェスは、堆積した地層が広い範囲で削られ、その上に新たな地層が重なったことを示す境界だ。NASAの探査チームは、軌道上から得たデータと地表の画像をもとに、この付近の岩石記録に途切れがある可能性を調べてきた。境界の上下で岩石の鉱物組成を比べることは、堆積環境の変化を読み解く助けになる。
キュリオシティが最後に掘削した「Campo Marte」からの走行距離は1kmを超えた。今回の円盤状構造を観測した場所より少し先で、チームは「Torres del Paine」として撮影した有望な作業場所に到着した。掘削対象を選び、ロボットアームが届く位置へ短く移動する計画を立てた。
計画通りに進めば、接触観測と掘削前の荷重試験を経て、この境界より上で初の掘削に着手する。NASAは「Campo Marte」をキュリオシティの47回目の成功した掘削と記録している。次の掘削が成功すれば、48回目となる。
■元素分析と鉱物分析を組み合わせる
ChemCamはレーザーを岩石に照射し、生じた光から元素組成を調べる。APXSも岩石表面の元素を測定する。一方、探査車内の装置「CheMin」は掘削で得た粉末試料にX線を当て、回折パターンから鉱物の種類と含有量を分析する。元素分析と鉱物分析を組み合わせることで、岩石の性質を詳しく調べられる。
例えば石膏は水分子を含む硫酸カルシウム(CaSO₄・2H₂O)で、無水石膏は水分子を含まない硫酸カルシウム(CaSO₄)だ。両者のように主要な構成元素が共通する鉱物も、X線回折では異なるパターンを示す。CheMinの分析は、新たな地層にどの鉱物が含まれるかを知るために重要となる。
今回、円盤状構造の観察には「Yungay」「Chiu Chiu」の撮影が、元素調査には「Puya Raimondii」「Liolaemus Tacnae」「Pisqu Warkatana」でのChemCam測定と、「Salar de Vacas」でのAPXS測定が計画された。ChemCamの遠距離撮影装置とMastcamは、Valle Grandeの両側にある丘の地層も撮影し、堆積構造を調べる材料を集めた。
掘削候補地では、「Alberta Wild Rose」「Moonraker Mountain」での接触観測に加え、「Osoyoos」でのレーザー測定、「Trincomali Channel」「Yellow Lady's Slipper」での撮影を計画した。地表の細かな形、元素組成、周囲の地層を併せて調べながら、掘削に向けた作業を進めている。
■シャープ山に重なる環境の記録
キュリオシティは2012年8月にゲール・クレーターへ着陸し、2014年から中央にそびえる高さ約5kmのシャープ山を登っている。下部の地層には、かつて湖が存在したことを示す泥岩がある。現在調査中の硫酸塩を含む地層は、火星の環境がより乾燥した状態へ移っていく過程を調べる対象となっている。
NASAによると、キュリオシティは2026年9月初めまでに着陸地点からの標高差が1kmを超え、火星での運用は5000ソルに達した。新たな地層で得る掘削試料は、これまで登ってきた地層の分析結果と比較される。境界を挟んで岩石に含まれる鉱物がどう変わるかが、次の調査の焦点だ。
元記事: Curiosity Rover Mars Discovery: Disc Minerals in Never-Drilled Terrain Signal Ancient Water
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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