中国AIチップの奕行智能、約471億円を調達 RISC-V「Epoch」と超节点を量産展開

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中国のAIチップ企業、奕行智能(EVAS Intelligence)は2026年9月、約20億人民元(約471億円)を調達した。投資後の企業価値は約150億人民元(約22億1000万ドル、約3530億円)と見積もられている。
同社はオープン標準の命令セットアーキテクチャ「RISC-V」を採用したAIチップ「Epoch」を開発する。第一世代製品と64基構成のラック規模システムは量産・導入段階に入ったとされるが、主要AIプロセッサーとの性能比較について、独立した第三者機関による検証結果は公表されていない。
■約20億人民元を調達、投資後評価額は約150億元
今回のラウンドには、華泰創新、鐘鼎資本、中芯聚源、九安医療、通富微電子など20を超える投資機関や企業が参加した。奕行智能は2026年上半期にも15億人民元のシリーズBを実施し、中国移動系ファンドからも戦略投資を受けている。
新たな資金は、Epochシリーズの量産、次世代製品の研究開発、ソフトウェアとハードウェアを含むエコシステムの構築などに充てられる見通しだ。第一世代Epochシリーズについては、すでに量産・出荷を進めていると同社は説明している。
奕行智能は2022年に設立され、RISC-Vを使ったAI計算チップから、ボード、サーバー、ラック規模システム、クラスタまでを一体的に開発している。今回の調達により、量産能力と大規模システムへの展開をさらに強化する。
■RISC-Vと独自AI計算アーキテクチャを組み合わせる
Epochは、RISC-V命令セットとベクトル拡張を基盤に、独自のAI計算コア「EVAMIND」を組み合わせたクラウド向けアクセラレータである。奕行智能は、RISC-Vの柔軟性と、行列演算などに適したTPU型の専用計算アーキテクチャを統合した構成だと説明している。
RISC-Vは、仕様を無償で利用でき、用途に応じた拡張や実装を設計できるオープン標準の命令セットアーキテクチャである。Epochでは、RISC-VをAI演算用ハードウェアや独自ソフトウェアと組み合わせ、大規模モデルの学習と推論への対応を目指している。
第一世代Epochは、数値を小さな単位に分けてスケーリングする分割量子化FP8に対応する。同社は、次世代製品でEXFP4やMXFP4などの低精度形式にも対応し、演算性能、メモリー容量、メモリー帯域を高める方針を示している。
一方、こうした機能や実効性能に関する情報の多くは奕行智能の発表に基づく。主要ベンダーの最新AIプロセッサーに匹敵するとの同社の説明については、共通条件による第三者ベンチマークが公表されておらず、実際の学習・推論性能や電力効率は確認できない。
■64基のEpochを接続した超节点を導入
奕行智能は2026年7月の世界人工知能大会で、Epochを使った「RISC-V AI算力超节点」を発表した。Epoch、独自の高速インターコネクト「ELink」、正交無背板構造、液冷システム、ソフトウェアスタックを統合したラック規模の製品である。
同社によると、ELinkの単一チップ当たりの相互接続帯域は毎秒3.2テラビットに達する。1ラックで64~128基のEpochを高帯域で相互接続し、複数ラックを組み合わせた大規模クラスタへ拡張できる設計だとしている。
その後、産業パートナーと構築した64基構成の超节点クラスタが通信事業者のデータセンターで稼働を開始した。液冷対応のE200-L OAMモジュールを搭載し、64個のEpochを低遅延で接続する構成で、大規模言語モデルの推論、とりわけMoEモデルの処理を想定している。
奕行智能は、第一世代の超节点とEpochシリーズを量産・納入しているとしている。ただし、相互接続性能や推論性能、数万基以上への拡張性に関する数値は同社の公表値であり、大規模な商用環境における第三者の評価は示されていない。
■独自ソフトウェアでモデル移行を支援
AIアクセラレータでは、チップ単体の演算性能に加え、コンパイラ、演算ライブラリ、フレームワークとの互換性、運用支援ツールの完成度が実際の処理性能を左右する。NVIDIAのCUDAを前提に開発されたモデルを別の基盤へ移す場合、ソフトウェアの書き換えや最適化が必要になることがある。
奕行智能は、この課題に対応するため、統合ソフトウェアスタック「EVACA」、演算子の開発と最適化を支援する「KernelFab」、仮想命令セット「VISA」を開発している。KernelFabはAIエージェントを利用し、演算子のコンパイル、実行、計測、診断、最適化を繰り返す仕組みだという。
同社は、従来は週単位だった演算子の開発を日単位へ短縮し、VISAによって複数世代の自社チップへプログラムを展開しやすくすると説明している。これらの効果も現時点では主に同社の評価に基づいており、幅広いモデルや本番環境における開発効率と互換性は今後の検証対象となる。
奕行智能は中能智算、国富数据とも戦略協力契約を結び、RISC-VベースのAIチップ、CPU、ネットワーク機器、超节点を組み合わせたAIインフラの構築を進めている。ハードウェアだけでなくソフトウェアとクラスタ運用まで含めて提供することで、導入時の移行負担を抑える狙いだ。
■RISC-V採用だけで輸出規制を回避できるわけではない
RISC-Vの仕様を管理するRISC-V Internationalは、地政学的な混乱への懸念を減らし、国際的な協力体制を維持するため、2019年に米国からスイスへ法人の拠点を移した。同団体は当時、既存の規制を回避するための移転ではなく、将来の政治的な不確実性を減らす措置だと説明している。
オープンに公開されたRISC-Vの仕様そのものは、特定企業から命令セットのライセンスを受ける方式とは異なる。このため中国企業にとっては、独自のプロセッサーやアクセラレータを設計する際に、海外企業が管理する独自ISAへの依存を抑えられる利点がある。
ただし、RISC-Vを使ったチップであっても、半導体製造装置、EDAソフトウェア、製造プロセス、メモリー、相互接続部品などは別個の輸出規制の対象になり得る。RISC-Vの採用のみをもって、製品全体が米国の輸出管理の及ばない存在になるとはいえない。
米国では2023年、超党派の議員が中国企業とのRISC-V技術協力について輸出許可を求める案を政府に検討するよう要請した。オープン標準への規制は米国企業や国際的な技術開発にも影響を及ぼすため議論が続いており、RISC-Vをめぐる政策環境は固定されたものではない。
■量産実績と第三者検証が次の焦点
今回の資金調達に先立ち、奕行智能は第一世代Epochと64基構成の超节点を量産・導入段階に進めた。次世代クラウド向けチップについても流片を終えたとしており、製品をチップ単体からラック、クラスタへ広げる体制を整えつつある。
今後の焦点は、異なるAIモデルや運用条件でどの程度の処理性能と電力効率を発揮できるかである。製造委託先やプロセスノードなどの主要仕様も公表されておらず、他社製品との比較に必要な情報は限られている。
RISC-Vは独自チップを設計するための共通基盤を提供するが、データセンター向けAIシステムの競争力はISAだけでは決まらない。チップの製造能力、高速な相互接続、コンパイラや演算ライブラリの成熟度、長時間運用の安定性を一体で高める必要がある。
約20億人民元の新規資金は、Epochと超节点の量産を拡大するとともに、こうしたシステム全体の課題へ取り組むための原資となる。奕行智能が公表する性能と拡張性を、実際の導入実績と第三者評価によって示せるかが次の段階を左右する。
元記事: China Chip Startup EVAS Raises $295M on RISC-V Architecture Built for Export-Control Bypass
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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