土星の衛星エンケラドス、新鮮な氷が北半球を覆う姿明らかに NASAら

2020年9月24日 16:47

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土星探査機カッシーニが明らかにした衛星エンケラドスの赤外線マップ (c) NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/LPG/CNRS/University of Nantes/Space Science Institute

土星探査機カッシーニが明らかにした衛星エンケラドスの赤外線マップ (c) NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/LPG/CNRS/University of Nantes/Space Science Institute[写真拡大]

 生命が存在する可能性がある土星の衛星エンケラドス。この氷の衛星からは、有機分子が確認されている。米航空宇宙局(NASA)は19日、土星探査機カッシーニが収集したデータを解析し、エンケラドスの地質活動を明らかにしたと発表した。

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■13年にわたる氷の衛星の探査

 NASAと欧州宇宙機関(ESA)が共同で運用するカッシーニは、1997年に打ち上げられた土星探査機だ。土星の環や衛星を観測することが目的で、史上初めて土星の周回に成功している。

 カッシーニに搭載された可視光・赤外線マッピング分光計(VIMS)により、土星の光の反射が捉えられるようになった。これにより、環や10個の衛星を人間の眼で確認可能となった。さまざまな波長の光に分解することで、光を反射させた物質の組成が明らかになるという。

 NASAジェット推進研究所は、カッシーニが13年にわたって取得したデータを解析している。2017年にはエンケラドスを覆う大気から生命が存在する可能性が示唆されている。今回、VIMSのデータとISSカメラが撮影した画像とを合成することで、エンケラドスの赤外線マップが作成された。

■意外だった北半球の地質活動

 エンケラドスでは2005年、氷の地殻の下にある海から、大量の氷の粒や蒸気が立ち昇っていることが発見されている。今回作成されたマップは、南半球における赤外線と地質活動の相関を示している。

 南半球の地質活動が若いことは研究者も想定内だったが、北半球でも同様の赤外線の特徴が現れていることが明らかになった。北半球では、内側から新鮮な氷で「塗装」されているのだという。仏ナント大学などの研究者らから構成されるグループは、北半球の氷の「塗装」は、氷のジェットか地殻の裂け目において、氷が徐々に移動していることが原因だとしている。

 研究の詳細は、米科学誌Icarusに8月18日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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