独在住の市民科学者が白色矮星発見 塵の円盤で覆われたものでは最古 NASA

2019年2月22日 08:47

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「J0207」のイメージ図。(c) NASA’s Goddard Space Flight Center/Scott Wiessinger

「J0207」のイメージ図。(c) NASA’s Goddard Space Flight Center/Scott Wiessinger[写真拡大]

 米航空宇宙局(NASA)は20日、支援するプロジェクト「Backyard Worlds: Planet 9」に参加するドイツの市民科学者が、白色矮星「J0207」を発見したことを発表した。

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■100万人以上参加する市民科学プロジェクト「ズーニバース」

 Backyard Worldsは、太陽系内の新しい惑星や褐色矮星を探索する市民科学のプロジェクトだ。100万人以上のボランティアが登録しているという、市民科学プロジェクトを集めたポータルサイト「ズーニバース」の一部である。

 約145光年彼方の山羊座に位置するJ0207は、Backyard Worldsに参加する独在住の市民科学者Melina Thévenot氏が発見した。Thévenot氏は、Backyard Worldsがボランティアに行なわせた広域赤外線探査衛星「WISE」のデータを分類する際に異変に気づいたという。

 Thévenot氏は、J0207が放つ赤外線の信号はもともと悪いデータだと考えていた。J0207に気づいたのは、欧州宇宙機関(ESA)が保有するGaiaアーカイブで褐色矮星を探しているときだったのだが、WISEの赤外線データでは、J0207は褐色矮星としては明るすぎ、あまりにも遠方に位置することを示していたからだ。そこで同氏はBackyard Worldsに自分の発見を伝え、研究グループのメンバーがハワイのW.M.ケック天文台に追観測を依頼したという。その結果J0207が、白色矮星であることが判明したという。

■塵の円盤をもつ白色矮星としては最古

 研究グループは、J0207の年齢が約30億年で、約5,800度であると見積もる。WISEが検出したJ0207が放つ強い赤外線は、J0207が塵の円盤をもつ白色矮星のうち、最も冷たく最古の天体であることを示唆する。またJ0207の年齢の約3分の1もの期間、塵の円盤がJ0207を覆っていたことも同時に判明した。

 恒星の進化形態のひとつである白色矮星は、太陽のような恒星が死に絶え、地球程の大きさに縮小した天体である。太陽のような恒星は、巨大化するにつれ、周辺にある小惑星や惑星を飲み込むと予想される。太陽から離れた惑星は生き残るが、恒星の質量が減少するため重力の影響で軌道が外側に移動するという。

 1%から4%の白色矮星は、塵からなる円盤に囲まれ、赤外線を放射する。遠く離れた惑星との重力の相互作用によって跳ね返された小惑星や彗星が塵の円盤を生み出したと考えられる。研究グループは、J0207は複数の塵からなる円盤をもつ白色矮星の可能性があるとみている。

 研究グループのひとりであるNASAゴダード・スペース・フライト・センターのMarc Kuchner氏は、「市民科学者との作業は、常にサプライズをもたらす。これまで1000以上もの褐色矮星を発見したが、今後さらに興奮する発見がなされることを期待する」と述べている。

 研究の詳細は、米天文物理学誌Astrophysical Journal Lettersにて19日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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