JWSTの既存データから系外惑星を検出 新手法FLIP、撮像感度を最大15倍に

2026年11月7日 16:20

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記事提供元:Tech Times

(Javier Miranda/Unsplash.com)

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の既存観測データを新たな画像処理手法「FLIP」で解析し、既知の系外惑星エリダヌス座51番星b(51 Eridani b)を波長4.3マイクロメートルで初めて撮像することに研究チームが成功した。この波長では、従来の解析で惑星の信号を検出できていなかった。

FLIPは望遠鏡の物理モデルと、機械学習の訓練にも使われる最適化技術を組み合わせ、画像に残った恒星光を精密に差し引く。研究チームによると、JWSTの観測データを使った試験では、標準的な手法に比べて惑星の検出感度が条件に応じて2~15倍向上した。

■直接撮像を妨げる恒星光

系外惑星の直接撮像は、恒星の揺れや減光から存在を推定する方法とは異なり、惑星から届く光を捉える。光を波長ごとに調べれば大気の組成を探ることができ、恒星から離れた軌道を回る惑星の詳しい研究や、将来の生命兆候探索を支える重要な観測手法となる。

難題は、近くに見える恒星が惑星よりはるかに明るいことだ。JWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)は、コロナグラフと呼ばれる遮光装置で恒星光を抑えるが、画像処理によって残留光をさらに取り除く必要がある。

光学系のわずかな収差や位置ずれによって、恒星の周囲にはスペックルと呼ばれる斑点状の光の模様が生じる。望遠鏡の熱的な変化などで模様が変動すると、淡い惑星の信号に重なったり、惑星に似た光点をつくったりする。

標準的な処理では、別の恒星を観測した参照画像などから恒星光の分布を推定し、対象の画像から差し引く。対象星と参照星を観測した際の望遠鏡の状態に差があると、取り残された光が検出感度を制限する。

カリフォルニア工科大学(Caltech)の共著者Katherine L. Bouman教授は、望遠鏡のごく小さな不完全性でも、惑星の微かな光を恒星の強い光から分離する妨げになると説明する。今回の研究は、装置の物理モデルと計算処理を組み合わせて、この制約を乗り越える方法を示した。

■望遠鏡を再現し、恒星光を逆算する

FLIPは「Physics-based Learning for Imaging Planets」の略称だ。恒星、望遠鏡の光学系、検出器をソフトウェア上にモデル化し、恒星光が装置を通って画像をつくる過程をシミュレーションする。

このモデルが計算するのは、点状の光源が画像上でどのように広がるかを表す点像分布関数(PSF)である。研究チームは宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)が提供する光学モデルと波面計測データを出発点に、恒星の位置や明るさ、波面収差、検出器の画素ごとの応答などを調整した。

重要なのは、モデルを「微分可能」にした点だ。各パラメータを変えたときに画像がどう変化するかを自動微分で効率よく求め、観測画像と計算画像の差が小さくなる方向へパラメータを更新する。ニューラルネットワークの訓練にも使われる勾配に基づく最適化を、装置の物理モデルに適用している。

処理は段階的に進める。まず参照星の画像を使ってモデルを事前校正し、その後、対象星の観測画像に合わせて調整する。この手順によって、参照観測から対象観測までの間に生じた装置の変化を補い、差し引く恒星光の精度を高める。

研究チームは約100万個の自由パラメータを扱った。惑星の光までモデルに取り込んで差し引いてしまうことを抑えるため、画像に人工的な惑星信号を加え、その回収状況を追跡しながら最適化を止める仕組みも採用した。

■既存データで見えてきた51 Eridani b

実証の中心となった51 Eridani bは、地球から約96光年離れたエリダヌス座51番星を回る若い巨大ガス惑星だ。2014年12月のGemini Planet Imagerによる観測で発見され、2015年8月に公表された。同装置が初めて発見した惑星であり、発見当時は直接撮像された中で最も低質量の惑星として紹介された。

発見時の観測では、恒星からの見かけの離隔は約13天文単位だった。太陽系では土星と天王星の軌道の間に相当する距離である。2025年に公表されたJWST近赤外線分光器NIRSpecによる研究では、質量が木星の2~4倍程度の惑星として扱われ、大気モデルの最良適合値から有効温度は約800Kと推定された。

近赤外線の観測では、メタンや水蒸気の吸収が見つかっている。NIRSpecの研究ではメタンと一酸化炭素の共存を捉え、大気の化学非平衡を直接確認したと研究者らは報告している。低温の巨大惑星の大気を調べるうえで、重要な比較対象となる天体だ。

今回、研究チームはJWSTの初年度観測に含まれるNIRCam画像を再解析した。波長4.1マイクロメートル付近のF410Mフィルターでは、従来手法で捉えられていた惑星の信号対雑音比が約2.1倍に向上した。

従来の解析で未検出だったのは、波長4.3マイクロメートル付近のF430Mフィルターの画像である。FLIPで恒星光を差し引くと、予想位置に惑星の光点が現れ、研究チームは信号対雑音比6.3で検出したと報告した。同じ観測データから、画像処理の改善によって新たな波長の情報を引き出した形だ。

■感度2~15倍は何を意味するか

研究チームは51 Eridaniに加え、既知の惑星を持つHIP 65426と、既知の伴天体がないTYC 5899の観測も解析した。合計3つの恒星系、4つのデータセットを使い、標準的な恒星光除去法「KLIP」と比較している。

改善の大きさは、恒星からの角距離や観測条件によって異なる。TYC 5899では恒星から0.5秒角の位置で約15倍、1秒角で約5倍の感度向上が得られた。この恒星の試験では人工的な惑星信号を画像に加え、どれほど暗い信号まで回収できるかを評価した。

51 EridaniのF430M画像では、0.5秒角で約5倍、1秒角で約2.5倍の感度向上だった。実際の惑星の位置では、検出感度が約4倍改善したという。HIP 65426 bの検出では、信号対雑音比が約1.6倍になった。

ここでいう検出感度の向上は、一定の検出基準を満たす惑星と恒星の明るさの比を、どこまで小さくできるかを示す。同じ条件で感度が2倍になれば、およそ半分の明るさの惑星信号まで検出できるという意味になる。

既存データの再解析なら、新たに観測時間を割り当てずに、より淡い惑星を探したり、既知の惑星を詳しく調べたりできる。筆頭著者のRodrigo Ferrer-Chavezは、JWSTアーカイブで見逃された可能性のある惑星や、過去に撮像を試みて検出できなかった惑星を探す道が開けると期待している。

■計算撮像と観測装置の知見を結集

論文「Imaging exoplanets below the telescope stability limit」は、2026年11月4日にNatureで公表された。ノースウェスタン大学の博士課程学生Ferrer-Chavezと指導教員のJason J. Wang、CaltechのBoumanらによる共同研究である。

開発の出発点では、Ferrer-Chavezは機械学習モデルに恒星光の模様を予測させようとしていた。Caltechの発表によると、この試みを経て、装置の物理モデルを構築し、機械学習で使われる最適化技術でパラメータを求める方針に進んだ。Wangは初期の試行が問題への理解を深め、その後の成果につながったと振り返っている。

微分可能な光学モデルによる恒星光除去には、2025年にarXivで公表された先行研究がある。こちらはJWSTの構成を基にしたシミュレーションで手法を検証したものだ。今回の研究では、実際のNIRCamコロナグラフ観測に対応するため、多段階の校正と最適化を組み込んだ。

共著者には、コンピュータービジョンや画像再構成を研究するマサチューセッツ工科大学(MIT)のWilliam T. FreemanとBrandon Y. Fengも名を連ねる。BoumanはFreemanの指導を受けてMITで博士号を取得し、2019年に公表されたイベント・ホライズン・テレスコープの初のブラックホール画像の作成にも参加した。

STScIのLaurent PueyoとMarshall D. Perrinは、JWSTやNIRCamのコロナグラフ、光学モデルに関する専門知識を提供した。研究はSTScI、スローン財団、Amazon AI4Science Discovery Award、米国立科学財団の支援を受けた。

■ローマン宇宙望遠鏡と将来の地球型惑星探索へ

チームはFLIPの改良を進め、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡や地上望遠鏡など、別の観測装置への応用を目指す。Wangは、JWSTが備えるナノメートル級の光学的安定性でも画像処理には制約が生じるとし、物理モデルを使う考え方を他の装置にも広げられると期待している。

NASAによると、ローマン宇宙望遠鏡は2026年8月30日にFalcon Heavyで打ち上げられ、11月時点では科学観測に向けた試運転の最終段階にある。搭載するコロナグラフ装置は9月1日に電源が投入され、9月22日に宇宙からの光を使った初観測を行った。

ローマンのコロナグラフは、将来の惑星直接撮像に必要な技術を宇宙で実証する装置だ。FLIP論文は、こうした装置での試験を、さらに高いコントラストでの画像処理を検証する重要な段階に位置付けている。

その先にあるNASAのハビタブル・ワールズ・オブザーバトリー(HWO)は、太陽型星の周囲にある、生命が存在し得る地球型惑星を少なくとも25個、直接撮像して分光観測することを目指す構想だ。2040年代の打ち上げが想定されている。構想の基礎となった米国の天文学・天体物理学の将来計画では、開発と5年間の運用を合わせた費用を、2020会計年度の価格で約110億ドル(約1兆7400億円)と推計した。

太陽に似た恒星の近くで地球に似た惑星を捉えるには、約100億分の1という明るさの比に対応する必要がある。研究チームは、FLIPの考え方をこの水準まで発展させられれば、恒星光を画像取得後に除去する能力が高まり、望遠鏡に求められる極端な安定性の条件を一部緩和できる可能性があると考えている。

今後の課題には、検出器モデルの改良、計算コストの低減、地上観測の大量データに対応する処理基盤の整備などがある。望遠鏡の技術と計算撮像の双方を進めることで、既存の画像に含まれる微かな惑星光を取り出し、将来の地球型惑星探索へつなげることが狙いだ。

元記事: JWST Had Already Captured This Exoplanet. New Algorithm Found It Hiding in the Archive.

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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