GoProとAGV、カメラ内蔵ヘルメットを2027年投入へ―テスト参加希望者の登録を開始

(Gopro.com)[写真拡大]
GoProとイタリアのヘルメットメーカーAGVは2026年11月2日、共同開発中のバイク用スマートヘルメットを2027年に投入すると発表した。カメラをヘルメットに組み込む設計で、公式サイトでは発売情報の通知登録と、テストプログラムへの参加希望を受け付けている。
■カメラを内蔵し、撮影とヘルメットの設計を一体化
両社は、AGVのヘルメット設計と安全性に関する経験に、GoProのエンジニアリングとデジタル映像技術を組み合わせるとしている。GoProの日本向け公式ページでも、共同開発する製品を「完全統合型スマートヘルメット」と紹介している。
公開されたティザー映像には、バイザーの下にカメラを組み込んだフルフェイス型ヘルメットが登場する。バイク専門メディアVisordownによると、映像にはイタリアのミサノ・ワールド・サーキットでのテスト走行と、公道での使用場面が収められている。
カメラを外側に取り付ける方式に対し、内蔵型は撮影機器の配置をヘルメット全体の設計に組み込める。電子機器を収める空間とともに、重量、通気、空力特性、衝撃吸収構造を考える必要があり、映像機器と保護具の設計を一体で進めることになる。
2026年11月5日時点で、製品名、発売月、価格、カメラの撮影仕様は未公表だ。日本での発売時期や販売価格も発表されておらず、2027年という投入予定に続く詳細が待たれる。
■Forciteの買収から続くスマートヘルメット開発
GoProのヘルメット事業は、オーストラリアのForcite Helmet Systemsの買収を背景に進められてきた。同社のSEC提出資料によると、買収が完了したのは2024年2月27日で、対価は1400万ドル(約22億1000万円)だった。
Forciteの先行製品MK1Sは、あごを覆うチンバーにカメラを内蔵し、LEDによる視覚的な案内と音声機能を組み合わせたヘルメットだ。Visordownのレビューによると、カメラは1080p・最大60fpsに対応し、Harman Kardon製40mmスピーカーとハンドルバーに取り付けるコントローラーを備える。
MK1Sは、撮影だけでなく、スマートフォンと連携したナビゲーションなどもヘルメット内で利用できる設計だった。RideApartの2023年7月のレビューによると、米国向けモデルはDOT規格に適合し、ヘルメットとBluetoothコントローラーを含むセットの希望小売価格は1099ドル(約17万4000円)だった。
先行製品のレビューでは、機能を一体化する利便性と、撮影性能の両方が評価の対象となっていた。Gear PatrolはMK1Sについて、ライダーの視点で撮影できる位置を評価する一方、解像度や手ぶれ補正ではGoProのカメラに及ばないと指摘している。
AGVは1947年創業で、ジャコモ・アゴスチーニやバレンティーノ・ロッシら世界王者との活動を通じ、レース向けヘルメットを開発してきた。今回の協業は、こうしたヘルメット設計の経験と、GoProが蓄積してきた撮影技術を持ち寄る取り組みとなる。
ウッドマンCEOは2025年第1四半期の経営説明資料で、技術を組み込んだバイク用ヘルメットについて、自社が対象とする市場を約30億ドルと見積もった。また、調査会社Intel Market Researchは2026年4月の資料で、世界のスマートバイクヘルメット市場を2026年に11億8000万ドル(約1860億円)、2034年に24億5000万ドル(約3870億円)と予測している。
■特許に示された、音を使って周囲の物体を捉える技術
GoProの公開特許には、撮影以外の機能も記載されている。2026年8月20日公開の米国特許出願US 2026/0240276 A1は、ヘルメット上のマイク群と機械学習を使い、死角にある物体を検知して警告する仕組みを扱う。
出願には、周囲の音を分析する構成に加え、乗っているバイク自身のエンジン音を利用する処理が記されている。機械学習でエンジン音を抽出し、直接届く音と周囲の物体で反射した音を分け、物体までの距離と方向を推定するというものだ。
複数のマイクに音が届く時間の違いである到来時間差(TDOA)も、位置を推定する手掛かりとなる。音を取り込み、必要な信号を選び出し、その時間的な違いを空間の情報へ変換して、警告につなげる情報処理の構成だ。
音の時間差を方向の手掛かりにする発想は、動物の聴覚にも見られる。メンフクロウは左右の耳に届く音の時間差や音圧差を利用して音源の位置を捉える。音響検知を理解するうえでは、異なる場所で受けた音の違いから方向を読み取るという共通点が参考になる。
GoProは出願の中で、レーダー方式の費用や複雑さ、車種ごとの制約に対応する手段として音響方式を位置付けている。既存のレーダー製品では、Boschが車両メーカー向けに二輪車用の運転支援技術を提供し、Garminのzūmo R1 Radarはナンバープレート付近に取り付ける方式を採用する。センサーを車体に置く設計と、ヘルメットに置く設計では、機器の配置や取り付け方法が異なる。
音を使う方式では、走行環境の音をどう処理するかが重要になる。Australian Motorcycle Newsは特許を紹介した記事で、風切り音の大きさや変動、車両ごとの騒音の違いを挙げ、実際の交通環境で有用な警告を出せるかを今後の検証課題としている。
■LEDの光や調整式ディスプレイで情報を伝える構想
視覚的な案内も、GoProのヘルメット関連特許が扱う技術の一つだ。US 2026/0240276 A1には、チンバーの内側上部に配置した多色LEDと、光を導く部材を組み合わせ、ライダーに情報を伝える構成が記載されている。
別の公開特許US 2026/0206906 A1は、LEDの色、点滅、左右に移動する光のパターンを使う案内を扱う。曲がる方向をオレンジ色で示したり、制限速度の超過を赤色で知らせたりする例があり、周辺視野で読み取れる光に情報を割り当てる発想だ。
2026年7月23日公開のUS 2026/0211247 A1は、調整可能なヘルメット用ディスプレイを対象とする。柔軟な画面やレンズを目に対して動かし、使用者に合わせて表示の見え方を調整する構造が記されている。これらは、ヘルメット内で情報を提示するためにGoProが検討している技術の例となる。
■ECE 22.06への適合を発表、試験参加への関心登録も
製品開発では、電子機器と保護構造の両立が重要になる。GoProは2026年8月10日の第2四半期決算発表で、AGVと共同開発するヘルメットが安全規格ECE 22.06への適合を達成したと説明している。
ECE 22.06は、国連規則第22号の06改訂シリーズに当たる。国連欧州経済委員会によると、2021年に発効した改訂では、試験する衝撃位置や条件を拡充し、回転加速度を評価する斜め方向の衝撃試験を追加した。英国運輸省のSHARPは、新たな型式認可が同規格へ移行した時期を2022年7月と説明している。
ヘルメットメーカーSHARKの比較資料では、衝撃試験の対象位置は従来の6カ所から18カ所へ拡大したと整理されている。あごの保護部分にも衝撃試験があり、チンバーにカメラなどを配置する設計では、この部分の保護性能も含めて評価を受ける。
GoProの公式サイトでは、製品の続報を受け取るための登録を受け付けている。「Test Pilot Program」に関心のあるライダーは、SNSのアカウント情報とヘルメットサイズも登録できる。2027年の投入に向け、試験参加に関心を持つライダーから情報を募る段階だ。
元記事: GoPro AGV Smart Helmet Drops Radar: Microphone AI Can’t Detect Silent EVs
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
