Cowboy Space、上段がAIデータセンターになるロケット「Big Iron」発表 2028年初飛行へ

2026年10月29日 10:54

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記事提供元:Tech Times

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米Cowboy Space Corporationは現地時間2026年10月26日、上段を軌道上のAIデータセンターとして運用するロケット「Big Iron」の設計を発表した。打ち上げと計算基盤を一体で開発し、構造材や搭載物を飛行後にも活用することで、宇宙へ運ぶ重量の削減を狙う。

同社は2028年の初飛行を目標としている。先行する実証衛星Reason-1は10月1日に打ち上げられ、軌道上から地上へのレーザー送電試験に向けた準備が進んでいる。

■高さ86m、再使用する第1段と計算拠点になる上段

同社発表によると、Big Ironは高さ86mのステンレス製ロケットで、太陽同期軌道へ1万5000kg超を運ぶ設計だ。道路輸送できる寸法を採用し、製造や輸送に必要な設備投資を抑える方針である。

第1段には、自社開発の「Clydesdale」エンジンを9基搭載する。液体酸素と液体メタンを使い、設計上の推力は1基あたり30万ポンド、9基の合計では270万ポンドとなる。同社は再使用への適性を考慮してメタンを選び、開発期間の短縮を狙ってガス発生器サイクルを採用したという。

第1段は帰還して再使用し、上段は軌道上でデータセンターとして働く。Space.comの発表会取材によると、上段にはClydesdaleを1基搭載し、発表時の映像では第1段を海上の船へ着陸させる構想が示された。エンジンを第1段に9基、上段に1基配置する構成は、SpaceXのFalcon 9にも共通する。

Cowboy Spaceは初飛行の目標を2028年としており、Space.comによると、創業者兼CEOのバイジュ・バット氏は発表会で同年12月を挙げた。これは開発上の目標であり、エンジンや機体の試験を重ねて実現を目指す日程だ。

■外殻、アンモニア、窒素を打ち上げ後にも活用

Big Ironの特徴は、打ち上げ機と衛星を一つのシステムとして設計する点にある。通常は輸送に使われる上段の構造や搭載物に、軌道上での電力供給、展開、熱管理を支える役割も持たせる。

宇宙専門メディアPayloadによると、機体の外皮はデータセンターの放熱器として使う計画だ。Space.comは、打ち上げ中に搭載機器を保護するフェアリングを放熱器へ転用すると報じている。どちらも、打ち上げ時に必要な構造材を軌道上の排熱にも利用する発想である。

Payloadによると、推進剤として搭載するアンモニアは軌道上で冷却材に転用する。第2段の加圧に使う窒素は、太陽電池翼の展開にも利用する計画だ。同じ部材や搭載物に複数の役割を担わせ、専用部品の追加を抑える狙いがある。

同社の最高執行責任者兼最高法務責任者、ジョセフ・ヤッフェ氏はPayloadに対し、GPU搭載衛星には放熱器が必要となり、その金属も別途打ち上げる負担が生じると説明した。Big Ironは、機体構造と放熱機能をまとめて設計することで、この重量負担の削減を目指す。

■1MW級の計算設備を支える電力と排熱

Payloadによると、軌道上で展開したBig Ironの寸法は132m×73mとなり、NVIDIA Vera Rubin系GPUを5ラック搭載する計画だ。同社は計算機器向けの電力を1MW級としている。5月には、宇宙向けのNVIDIA Space-1 Vera Rubin Moduleを低軌道に配備する協業も発表している。

NVIDIAは2026年3月16日のGTCでSpace-1 Vera Rubin Moduleを発表した。その際、Cowboy Spaceの旧社名であるAetherfluxのほか、Axiom Space、Kepler Communications、Planet Labs、Sophia Space、Starcloudの計6社を、宇宙向けの同社計算基盤を利用する企業として挙げた。

NVIDIAが公表した通常のRubin GPUの仕様では、トランジスタ数は3360億で、NVFP4によるAI推論性能はTransformer Engine使用時にGPUあたり50ペタフロップスとなる。宇宙で計算機器を運用するには、こうした演算性能に加え、放射線によるデータの誤りや機器の劣化への対策も設計に組み込む必要がある。

電力源は展開式の太陽電池だ。計画では、日の出・日の入り側を通るドーン・ダスク太陽同期軌道を使い、日照時間を長く確保する。太陽同期軌道は軌道面が1日あたり約1度回転し、太陽に対する向きをほぼ一定に保つ。SatNewsが紹介したStampedeの申請内容では、運用高度は700〜1000kmとしている。

計算機器が消費する電力は、その大部分が熱になる。消費電力1MW級の設備では、同程度の排熱を見込んだ熱設計が必要だ。真空中の宇宙機は主に熱放射で外部へ熱を逃がし、その能力はステファン・ボルツマンの法則に従って、放熱面の温度、面積、放射率などに左右される。

米政府会計検査院(GAO)は2026年4月28日の報告で、大規模な宇宙データセンターには電力供給と冷却の追加開発が必要だと指摘した。太陽電池アレイは同月時点で宇宙へ打ち上げ、組み立てた構造物を上回る大きさになり得るとし、この規模の冷却技術も実証途上と整理している。Big Ironでは、機体構造を兼用する放熱系の性能が開発の焦点となる。

■燃焼室試験から初飛行へ、外部顧客にも提供

Payloadによると、Cowboy Spaceは発表前週、米ミシシッピ州のNASAステニス宇宙センターでClydesdaleの一部を試験した。約30人のチームが90日で燃焼室を製造し、試験まで進めたという。

ヤッフェ氏はPayloadに対し、開発は社内の予定より「ほぼ1年」先行していると説明した。現段階で確認された節目は燃焼室の製造・試験であり、今後はエンジン全体や機体を統合した試験へ進むことになる。

ステニスは、F-1エンジンを5基搭載するサターンV第1段や、スペースシャトル主エンジン、SLS向けRS-25などの試験を担ってきた施設だ。Cowboy Spaceは既存の試験インフラも活用しながら、自社エンジンとロケットを開発する。

同社は外部顧客向けの「Big Iron Express」も発表した。政府機関や民間企業の搭載機器を運び、軌道上でメガワット級の電力を提供する計画である。ヤッフェ氏はPayloadに、必要な電力を宇宙へ届けるには独自の機体を開発する方法が効率的だとの考えを示している。

自社の衛星網を構築するだけでなく、外部の搭載機器にも用途を広げることで、打ち上げ機と電力基盤を事業化する方針だ。計算用途以外にも、軌道上で大きな電力を必要とする機器の利用を想定している。

■Reason-1でレーザー送電、Reason-2で軌道上処理

先行実証機Reason-1は、2026年10月1日にSpaceXのTransporter-18で低軌道へ打ち上げられた。SpaceQによると、ヴァンデンバーグ宇宙軍基地を出発した同ミッションの搭載物は130件だった。

Cowboy Spaceによると、Reason-1にはレーザー、大口径光学系、ビーム方向を制御する機構、電力・熱管理システムを搭載している。同社は宇宙で集めた太陽エネルギーを地上へ送る試験に用い、地上へのエネルギー伝送を目指す初の商用キロワット級宇宙レーザーと位置付けている。

Payloadによると、ヤッフェ氏は10月下旬の時点で試験に懸念すべき兆候は見つかっておらず、最初の送電試行は数週間以内になる見通しだと説明した。キロワット級という値は搭載レーザーの規模を指し、同媒体の10月初めの取材では、地上で受け取る電力の初期目標は30〜100Wとしていた。

2027年に打ち上げる予定のReason-2では、レーザー技術をデータ伝送へ発展させ、軌道上でGPUを使う。Payloadによると、NVIDIA H200を搭載し、商用・政府向けの計算処理を試す計画だ。光学系を先に実証し、続いて計算処理と通信を組み合わせる段階的な開発となる。

米海洋大気庁(NOAA)の衛星・情報部門NESDISは10月20日、Cowboy Spaceとの2年間の共同研究開発協定を発表した。同社がReason-2の費用、製造、打ち上げ、運用を担い、NOAAが既存のモデルや過去の衛星観測データを提供する。軌道上でデータを処理する方式の品質や実用性を評価し、試験結果は研究報告にまとめる。

■宇宙太陽光発電から統合型インフラへ

Cowboy Spaceの前身は、バット氏が2024年に設立したAetherfluxだ。当初は、宇宙で集めた太陽エネルギーをレーザーで地上へ送る事業に取り組んでいた。Reason-1は、その技術開発を引き継ぐ実証機でもある。

バット氏は2013年に個人向け投資サービスRobinhoodを共同創業した。ロイターによると、同社の2021年の新規株式公開時の評価額は318億ドル(約5兆200億円)だった。Robinhoodの公式発表では、バット氏は2024年3月に最高クリエイティブ責任者を退き、取締役にはとどまった。

バット氏はBusiness Executives for National Securityのインタビューで、NASAに勤めていた父親を通じて幼少期から宇宙産業に触れたと語っている。宇宙向けの電力事業を進める中で、計算設備と打ち上げ機まで統合して開発する構想に至ったという。

同社は2026年5月11日、Cowboy Spaceへの社名変更とシリーズBでの2億7500万ドル(約435億円)の調達を発表した。企業評価額は20億ドル(約3160億円)で、Index Venturesが主導した。調達資金は、宇宙向けの電力、計算設備、打ち上げ機を結ぶ開発に充てるとしている。

■2万基のStampede、規制審査では累積リスクが論点

Cowboy Spaceは、軌道上データセンター衛星網「Stampede」の最大2万基について、米連邦通信委員会(FCC)へ申請している。Big Ironの上段をこの衛星網の拠点として使う構想で、配備には規制当局の認可が必要となる。

Data Center Frontierによると、同社は配備期限などの規則について柔軟な扱いを求め、1基から商用運用を始めて需要や技術の進展に応じて拡大できると説明している。光リンクを中心とし、無線周波数の使用を限定する設計も、適用除外を求める理由に挙げている。

宇宙の持続可能な利用に取り組む非党派団体Secure World Foundation(SWF)は、7月10日に公表した意見書で、申請規模に応じた審査を求めた。累積的な衝突リスクや運用終了後の軌道離脱性能などの開示を求め、段階的な実証と報告義務を伴う認可方式、より広い論点を検討する意見照会手続きも提案している。

低軌道では既存の衛星網も拡大している。Space.comによると、2026年10月27日時点でStarlinkの稼働衛星は1万1000基を超える。欧州宇宙機関(ESA)の10月23日更新の統計では、定期的に追跡・登録されている宇宙物体は約4万7270個で、これには運用中の衛星も含まれる。

追跡対象より小さい破片も多数存在する。ESAが公表する2026年2月を基準としたモデル推計では、1cm超〜10cmの宇宙ごみは約150万個ある。1978年にドナルド・ケスラー氏とバートン・クールパレ氏が論文で示した、衝突で生じた破片が次の衝突を増やす連鎖は、ケスラーシンドロームとして知られる。多数の衛星を配備する計画では、個々の機体だけでなく、衛星網全体の運用と廃棄まで含めた評価が重要になる。

■競合の実証が進む一方、経済性も開発課題に

軌道上の計算基盤には、Cowboy Spaceを含め8社以上が取り組んでいる。Payloadによると、Reason-1と同じTransporter-18には、GoogleのProject Suncatcherの実証機と、衛星間送電を試すStar CatcherのProtostarも搭載された。電力、計算機器、通信といった異なる要素の試験が並行して進んでいる。

Axiom Spaceは2026年10月6日、Kepler Communicationsの光データ中継衛星に載せた計算ノード2基を軌道上で運用し、ノード間および地上との通信を確認したと発表した。Starcloudは2025年11月、NVIDIA H100を搭載した実証衛星を打ち上げている。Lonestarは宇宙でのデータ保存、OrbitsEdgeは宇宙向け計算機器の開発を進める。

FCCは2026年2月、SpaceXが最大100万基の軌道上データセンター衛星を申請したと公表した。GoogleもProject Suncatcherで太陽光発電と自社TPUを組み合わせる構想を研究し、Trillium TPUの放射線試験などを実施している。

経済性の評価では、打ち上げ費用に加え、衛星の製造費、計算機器の故障、更新頻度などが重要となる。Varda Space Industriesのエンジニア、アンドリュー・マカリップ氏は公開した比較モデルで、厳しいコスト条件を満たす必要があると分析している。

打ち上げ費用の歴史的な目安として、NASAエイムズ研究センターの研究者が2018年に公表した論文は、当時のFalcon 9の広告価格6200万ドル(約98億円)を低軌道への最大搭載量2万2800kgで割り、1kgあたり2720ドル(約43万円)と算出した。一方、Googleの研究は、2030年代半ばに打ち上げ価格が1kgあたり200ドル未満になれば、宇宙設備の打ち上げ・運用費が、地上設備の電力費と同程度になり得るという条件付きの見通しを示している。

Cowboy Spaceは、上段とデータセンターの一体設計によって重複する重量を減らし、地上設備に並ぶコストを目指すとしている。Reason-1の光学系試験、Reason-2の軌道上処理、ClydesdaleとBig Ironの開発は、その構想を実際の性能と運用費で評価するための節目となる。

元記事: Cowboy Space Unveils Orbital Data Center Rocket: Big Iron Hull Doubles as Radiator, Fuel as Coolant

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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