【テスラの真価】EV株かAI株か――売上7割超は自動車、株価を左右するロボタクシーの未来
(日本インタビュ新聞社・編集部)
■自動運転・人型ロボット・スペースXとの連携が拓く成長戦略、巨額のAI投資を利益に変えられるか
米電気自動車(EV)大手のテスラ<TSLA>(米ナスダック)は、自動車メーカーなのか、それとも人工知能(AI)企業なのか。この問いは、テスラの企業価値を考えるうえで避けて通れないテーマとなっている。現在の収益を支えるのはEV事業だが、株式市場が注目するのは、その先にある自動運転、ロボタクシー、人型ロボットの事業化である。テスラは自動車販売で収益を確保しながら、AIを成長の中核に据えた企業への転換を進めている。
10月21日に発表した2026年7~9月期決算では、売上高280億4600万ドルのうち、自動車関連売上高は205億6000万ドルと約73%を占めた。一方、純利益は前年同期比約43%減の7億8700万ドルにとどまった。蓄電池などのエネルギー事業も展開するが、足元の収益構造は依然として自動車中心である。EV市場の競争激化や開発投資の負担を踏まえれば、将来への期待だけでなく、既存事業の収益力を見極める必要がある。
■世界を走るEVがAIの開発基盤に、ロボタクシーは実用化段階へ
テスラが一般の自動車メーカーと異なるのは、車両を販売するだけでなく、走行データやソフトウエアをAI開発に活用している点にある。世界各地を走る車両から得られる道路環境や交通状況などの情報は、自動運転技術の改善に役立つ。車両台数の拡大がデータの蓄積につながり、技術の高度化が製品やサービスの競争力を高めるという循環を構築できれば、大きな強みとなる。ただし、データの量がそのまま自動運転の安全性や収益性につながるわけではない。
自動運転分野では、運転者の監督を必要とする「FSD(Supervised)」の普及を進める一方、2025年6月に米テキサス州オースティンでロボタクシーサービスを開始。2026年9月には専用車両「サイバーキャブ」の運行にも踏み出した。構想段階から実際のサービス展開へと進んでいる点は重要である。しかし、限定的な運行実績を全国規模、さらには世界規模の事業へ発展させるには、安全性の実証、法規制への対応、運行コストの低減という課題が残る。
AI分野では、イーロン・マスク氏の関連企業が開発する対話型AI「Grok」も注目材料だ。すでに対応するテスラ車両では、音声による情報検索や車両機能の操作などに利用できる。将来的にAIと車両、ロボットが高度に連携すれば、移動手段そのものが新たなサービス基盤となる可能性がある。
さらに、マスク氏が率いるスペースX<SPCX>(米ナスダック)との関係も注目される。スペースXは2026年2月にGrokを開発するxAIを買収し、テスラは3月にスペースX株へ約20億ドルを投資した。両社はAIや半導体などでの協力を模索しており、10月には経営統合の可能性を検討する特別委員会をそれぞれ設置した。ただし、統合は未決定であり、実現には株主の承認などが必要となる。宇宙通信やAI技術との連携には成長余地があるものの、実際の収益貢献は今後の課題である。
■株価を決めるのはEV販売台数だけではない、AIの収益化が最大の焦点
人型ロボット「Optimus」も長期的な成長余地を秘める。工場や物流現場などで実用化が進めば、テスラの事業領域は自動車産業の枠を大きく超えることになる。ただ、ロボットの量産技術、導入コスト、作業能力、安全性などには検証すべき点が多い。AI技術の進歩と商業的な成功を同一視することはできない。
投資家と消費者の視点にも違いがある。投資家は将来の自動運転サービスやロボット事業が生み出す利益を先取りして評価する。一方、自動車を購入する消費者にとって重要なのは価格、性能、航続距離、品質、使いやすさだ。仮にAI開発が順調に進んでも、主力のEV販売が伸び悩めば、研究開発や設備投資を支える収益基盤は弱くなる。自動車事業の競争力とAI事業の成長性は、切り離して考えられない。
今後の株価を判断するうえでは、EV販売台数や利益率に加え、FSDの有料利用拡大、ロボタクシーの運行地域と採算性、Optimusの量産・商用化、そしてAI投資に見合う利益とキャッシュフローの創出が重要になる。スペースXとの連携や経営統合の検討も新たな評価材料となるが、期待が先行するほど、事業化の遅れや統合条件を巡る不透明感が株価の変動要因となる可能性もある。
テスラの現在を支えているのはEVであり、将来の企業価値を大きく変える可能性を持つのはAIである。問題は「EV企業か、AI企業か」という二者択一ではない。EVで築いた収益基盤と技術資産を、どこまでAIによる継続的な利益に転換できるか。テスラ株の中長期的な評価を左右するのは、壮大な将来構想そのものではなく、それを収益として実現する力である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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