AI半導体の増産を左右する製造装置 インテルCTOが語る供給制約

2026年10月25日 13:49

印刷

記事提供元:Tech Times

(Dwarkesh.com)

(Dwarkesh.com)[写真拡大]

米半導体大手インテル(Intel)の最高技術責任者(CTO)、プシュカル・ラナデ氏は、先端半導体の増産には、製造装置メーカーから部材供給企業までを含む供給網全体の拡大が必要だと説明した。AI向け計算需要が伸びるなか、工場への投資とともに、装置の調達や生産立ち上げに要する時間が重要になっている。

■「おそらく2倍」という回答の背景

ラナデ氏は、10月22日に公開されたDwarkesh Podcastの対談に登場した。番組の司会者ドワーケシュ・パテル氏は、Intelのオレゴン州の先端製造施設を2日間にわたって見学し、技術幹部らに話を聞いた。

パテル氏が、世界にある製造装置でIntelの先端ウエハー生産を10倍に増やせるかと尋ねると、ラナデ氏は「10倍ではなく、おそらく2倍なら」と答えた。増産には、装置メーカー、その供給企業、さらにその先の供給企業まで、生産量を増やす必要があると説明した。

装置調達には長い時間がかかる。ラナデ氏は、発注から装置が届くまで約18カ月という例を挙げ、さらに新工場を建設する場合、生産能力の拡大は2020年代末に及ぶとの見通しを示した。

技術メディアThe Next Webによると、ラナデ氏はEUV露光装置を最大のボトルネックに挙げる一方、ほかの製造装置にも不足があると説明した。Intel 18Aのように製造プロセスが定まると、その工程に適した装置を確保する必要があるという。

■ASMLはEUV装置の増産を進める

先端半導体の製造を支える装置の一つが、極端紫外線(EUV)露光装置だ。オランダのASMLが商用の半導体製造向けEUV露光装置を独占的に供給しており、ロジック半導体メーカーとメモリメーカーが同社の装置を利用する。

ASMLの2026年10月の決算説明によると、通常型のLow-NA EUV装置は、2025年に44台を出荷した。2026年の生産見通しは約65台で、前年の出荷台数に比べ約50%の増加を見込んでいる。

同社は2027年に、Low-NA EUVと液浸DUV露光装置の生産能力をそれぞれ2026年比で30%増やす計画だ。さらに2028年については、従来検討していた追加の30%増を上回る能力拡張を探っている。10月の説明では、現在の増産計画でも2027年と2028年の顧客需要を満たせない見通しを示した。

ASMLのクリストフ・フーケCEOは、5月のReutersのインタビューでも、AI需要の強さから、供給が制約される市場がかなり長く続くとの見方を示していた。装置メーカー自身の増産と、顧客側の工場拡張が並行して進んでいる。

■高度な光学系と材料が支える露光工程

EUV露光装置は、レーザーをスズの微小な液滴に照射してプラズマを発生させ、そこから得られる波長13.5ナノメートルの光で回路パターンを形成する。EUV光は空気やガラスに吸収されやすいため、光の通り道を高真空に保ち、レンズの代わりに多層膜ミラーを使う。

ZEISSによると、EUV露光装置は重量約200トンに及び、数十万点の部品で構成される。同社はASMLに高精度なミラー光学系を供給しており、こうした専門企業の技術が装置の性能と供給を支えている。

現在の技術には長年の共同開発の蓄積がある。ASMLは1998年に、ZEISSやシンクロトロン光源供給企業Oxford Instrumentsと欧州の研究開発連合を組織した。その後、量産向けのEUV光源開発では米Cymerなどとの協業を進めた。

装置の供給網も広い。ASMLの2025年年次報告書によると、製品を構成する部品やモジュールを供給する企業は約900社で、これとは別に製品に直接関係しない調達先が約4200社ある。増産には、組み立て工程だけでなく、重要部材を供給する企業の能力拡張も関わる。

■微細化では露光回数と生産性の両立が課題

半導体の生産能力を考える際には、装置の台数に加えて、1枚のウエハーを処理する時間や、EUVを用いる層の数も重要になる。微細な回路パターンを形成するため、同じ層のパターンを分割して加工する多重パターニングを使う場合、露光と関連工程が増える。

EUVでは、光子数の統計的な揺らぎや、感光材料であるレジスト内の化学反応のばらつきが、微細パターンの欠陥につながる。富士フイルムの研究者が公表した論文は、光子と化学反応に由来する二つの確率的要因を主要な課題として整理している。

露光量を増やす対策には、一定の光源出力の下では処理時間が長くなるという関係がある。材料、光学系、露光条件を組み合わせ、欠陥を抑えながら生産性を確保することが求められる。

その改善策の一つが、開口数(NA)を従来の0.33から0.55に高めたHigh-NA EUVだ。ASMLは、より微細なパターンを1回の露光で形成することで、一部の多重パターニング工程を減らせるとしている。装置の解像性能や処理速度、工程設計の進歩も、増産を支える要素となる。

■AI投資の拡大と、露光以外の供給制約

AIインフラへの投資は拡大を続けている。TMT Financeが2026年8月に公表した分析によると、Amazon、Microsoft、Alphabet、Metaの2026年の設備投資計画は、合計7200億~7450億ドル(約113兆~117兆円)に達する。

Intelのリップブー・タンCEOも、2026年4月の決算説明会で先端ウエハー生産能力の不足に言及した。世界の半導体供給が需要の急速な拡大に追いついていないとの認識を示し、自社の次世代製造技術への取り組みを説明している。

増産には、露光装置に加え、クリーンルーム、電力、水、プロセスガス、超純水設備、フォトマスク、先端パッケージング装置、専門人材も必要となる。Applied Materialsは2026年10月のSEMICON Westで、先端ロジックとDRAMの設備稼働率を100%と説明し、短期的な制約としてクリーンルームの能力を挙げた。

AIアクセラレーターと組み合わせる高帯域幅メモリ(HBM)も、ウエハー需要を押し上げる。Micronは2026年3月の説明資料で、同じビット数を生産する際、HBMはDDR5に対して約3倍のウエハー生産能力を必要とし、この比率は将来世代でさらに高まるとしている。

■IntelのHigh-NA導入と工場投資

Intelは、先端製造プロセスを開発する企業であると同時に、ASMLの先端装置を導入する主要顧客でもある。ラナデ氏は2026年5月、暫定職から正式なCTOに就任し、タンCEOの首席補佐役も引き続き務めている。

Intelの公式略歴によると、同氏はカリフォルニア大学バークレー校で工学博士号を取得した。2度の在籍を合わせてIntelで17年以上勤務し、65ナノメートル、45ナノメートル、22ナノメートルの各プロセスで、初期開発から量産立ち上げまでトランジスタの製造技術に携わった。

Intelは2025年12月、Intel 14Aの開発に用いるASMLのHigh-NA EUV装置「TWINSCAN EXE:5200B」の導入を公表した。Tom’s Hardwareが2025年9月に報じた同機など次世代High-NA装置の想定価格は、1台約3億8000万ドル(約597億円)だった。

IntelとASMLは2026年9月7日、IntelでのHigh-NA EUVによる累計ウエハー処理が100万枚を超えたと発表した。この数字には装置の認定・試験、研究開発、量産での処理が含まれる。両社によると、一部のCore Ultraシリーズ3「Panther Lake」プロセッサーでは、特定の層の量産工程にHigh-NAを使用している。

フーケ氏は同じ共同発表で、Intel FoundryをHigh-NA導入の主要な担い手の一つと評価した。装置の設置から量産への適用まで、顧客と装置メーカーが共同で進める取り組みが続いている。

■工場、フォトマスク、供給網を並行して拡張

Intelは製造を支える周辺設備にも投資している。Tom’s Hardwareによると、2026年7月にはカリフォルニア州サンタクララのBowersキャンパス拡張に着工した。新施設では、Intel 18A-Pや14Aなどの先端プロセスに必要なフォトマスクの製造能力を拡充する。

アリゾナ州チャンドラーのFab 52ではIntel 18Aの生産を進めている。Tom’s Hardwareが紹介したIntel幹部の説明によると、同工場は本格稼働時に週1万枚を超える18Aウエハー投入に対応できる。Intelは2026年7月の決算説明で、自社製品向け14Aの量産拡大を2028年に進める方針を示した。

米国のCHIPS法や欧州、日本、韓国の半導体支援策は、設備投資や研究開発、人材育成を後押しする。日本でも、経済産業省が半導体や関連する装置・部素材の安定供給に向けた支援を進めている。こうした投資を生産能力につなげるには、工場と装置、材料、人材をそろえる取り組みが必要だ。

装置供給を巡っては、中国の開発も注目される。Reutersは2025年12月、深圳でEUV露光装置の試作機が完成し、試験が進んでいると報じた。関係者によると、中国政府は2028年のチップ製造を目標とする一方、計画に近い関係者は2030年をより現実的な時期とみていた。

AI向け半導体の供給拡大は、工場建設と製造装置の増産に加え、工程の生産性向上、メモリ、先端パッケージングまでを含む課題となっている。各社の投資が実際の供給に結びつく時期を見極めるうえで、供給網全体の拡張状況が重要になる。

元記事: Intel CTO: EUV Tool Shortage Caps AI Chip Supply Growth at Roughly Double

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード