パラオ沖で「ダンボ」のような深海タコを撮影、ROVが捉えた遊泳姿

2026年10月24日 14:45

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記事提供元:Tech Times

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2024年、海洋探査団体Ocean Exploration Trust(OET)の無人潜水機(ROV)が、パラオ沖で耳のようなひれを動かして泳ぐ深海タコを撮影した。OETがCirroteuthis属として紹介した個体で、生息環境での姿や動きを間近に捉えた映像は、深海生物の暮らしを知る手掛かりになる。

この撮影は、パラオ国立海洋保護区の内外を調べる探査航海「Lebuu’s Voyage」で行われた。深海での映像観察と、採集した標本の形態・遺伝子の分析を組み合わせることで、生物の行動や分布、分類について理解が進む。

■耳のようなひれを動かす深海タコ

OETが2024年11月19日に公開した映像は、バベルダオブ島西方の名前の付いていない海山で、ROV「Hercules」が撮影したものだ。淡い色のタコが、外套膜に付いた一対のひれを動かし、長い腕を伸ばして水中を移動している。

耳を思わせるひれが、ディズニーのキャラクターにちなんだ「ダンボオクトパス」という通称の由来だ。この呼び名でよく知られるGrimpoteuthis属に加え、OETは今回のCirroteuthis属の個体も「ダンボ」と紹介している。

Discover Wildlifeの海洋ライター、メリッサ・ホブソンによる紹介では、映像を見た研究者から「震えている」「有名人に会ったみたいだ」といった声が上がった。研究者たちは当直の初めにタコとの遭遇を冗談交じりに予想しており、「2匹見られるかもしれないと思ったけれど、欲張るつもりはない」とも話していたという。

OETの同じ公開映像には、チョウチンアンコウ類のChaunacops属も登場する。誘引に使う突起まで鮮明に映り、タコとともにパラオの深海に生息する動物の姿を伝えている。

■映像が記録する動き、標本が伝える体の構造

Cirroteuthis属は、ヒゲダコ科に属する有触毛類のタコだ。この仲間にはひれがあり、8本の腕には吸盤とともに細長い突起が並ぶ。突起の日本語名は「触毛」で、英語ではcirriと呼ばれる。

触毛は摂餌に関わる構造と考えられている。有触毛類には、腕の間の膜で餌を包み込む行動や、触毛を動かして水流を生み出す摂餌行動を、水槽内で観察した研究もある。ヒゲダコ科のCirroteuthis属と、「ダンボ」として知られるGrimpoteuthis属は、同じ有触毛類に含まれる別の分類群だ。

ヒゲダコ類には、ゼラチン質で傷つきやすい体を持つものがある。ボン大学の研究者らが2023年に公表した研究では、標本の固定・保存処理によって、腕、ひれ、外套膜などの形や色が変化することが示された。生きた状態の映像は、こうした処理前の姿や、泳ぐときの各部の動きを記録できる。

一方、分類研究では、内殻の形、えらの構造、吸盤の数や配列などが重要になる。保存標本の観察や遺伝子解析は、外見の似た個体を区別するための情報を与える。現場の映像と標本は、それぞれ異なる情報を蓄積する研究資料となる。

■新種の記載を支える採集と画像解析

世界海洋生物種登録簿WoRMSの2026年10月時点の登録では、Grimpoteuthis属の有効種は18種ある。新種の記載も続いており、2025年4月21日にはGrimpoteuthis feitianaを記載した論文が公表された。

この研究では、2017年に西太平洋のカロリン海山、水深1240メートルで採集された1個体を調べた。研究者らは形態と遺伝情報を組み合わせて新種と判断し、ミトコンドリアゲノムの解析なども行った。

2021年には、ボン大学の研究者らがGrimpoteuthis imperatorを記載した。標本は2016年、北太平洋の天皇海山群で、水深3913〜4417メートルの範囲を調査した際に採集されたものだ。論文では、日本語の呼称として「天皇ダンボ」も提案している。

研究チームは標本を解剖せず、MRIとマイクロCTによる画像、外部形態の計測、少量の組織を使ったDNA解析を組み合わせた。MRIで軟組織を、マイクロCTでくちばしや歯舌などの硬い構造を調べ、貴重な標本を保ちながら新種の記載に必要な情報を得た。

映像観察は、生息深度の把握にも役立つ。2019年にジャワ海溝の水深6957メートルで撮影され、2020年に論文発表されたGrimpoteuthis属の記録は、頭足類の最深観察記録として知られる。この撮影に使われたのは、海底に着地して周囲を記録するカメラ付きの観測装置「ランダー」だった。

■パラオの深海を調べる探査航海

パラオ国立海洋保護区は2015年に設立され、2020年に全面施行された。パラオの排他的経済水域(EEZ)の約80%を占め、漁業や採掘などの活動が禁じられている。パラオ語ではEuotelel a Klingil a Debel Belauと呼ばれる。

パラオ周辺には225を超える海山があり、パラオ海溝には水深約8000メートルに達する場所もある。OETの2024年10月の資料では、EEZのうち高解像度で海底地形が測量された範囲は30%未満だった。浅海のサンゴ礁に比べ、深海の地形や生物群集には調査の余地が大きく残っていた。

2024年の調査船Nautilusによる探査は、パラオ国際サンゴ礁センター(PICRC)との協力で行われた。米海洋大気庁(NOAA)の海洋探査部門がOcean Exploration Cooperative Instituteを通じて資金を提供し、2022年の第7回Our Ocean Conferenceで米国が表明したパラオの海底地図作成支援を担った。

探査にはパラオの研究者、教育者、文化の専門知識をつなぐ担当者、学生らも参加した。OETは、取得する全データをパラオ政府とPICRCに提供し、その後の調査や海洋管理に役立てる方針を示した。

測量はその後も進んだ。NOAAによると、2025年の3回の測量航海と先行する移動航海では、パラオのEEZ内で計9万7078平方キロメートル、そのうち保護区内で8万6372平方キロメートルの海底地形データを取得した。

■船上の観察を陸上と共有する

Nautilus Liveの遠隔配信システムは、船上で得られた深海映像を陸上へ届ける。陸上の科学者も映像やデータを確認し、船上のチームと連絡を取りながら探査に参加できる。

調査船の定員には限りがあるが、通信を通じた参加はその範囲を広げる。OETによると、2024年シーズン全体のライブ映像は100万回を超えて視聴され、学校や地域の催しなどと船を結ぶ双方向の交流も行われた。

一般の視聴者も、潜航作業中はNautilus Liveの無料配信で、船上チームの解説とともに深海探査を見ることができる。パラオのタコのように、動物がカメラの前に現れる瞬間を共有できることも、この方式の魅力だ。

■Ocean Censusが進める海洋生物の発見

OETは2023年8月、日本財団と英国の海洋探査・保全団体NektonによるOcean Censusとの提携を発表した。日本財団は、自らを日本最大の社会貢献財団と紹介している。Ocean Censusは同年4月に始動し、当初の10年間で少なくとも10万種の新たな海洋生物の発見を目標に掲げた。

Ocean Censusが2026年5月に発表した成果では、2025年4月1日から2026年3月31日までに、それまで科学的に知られていなかった海洋生物1121種を記録した。13回の探査と9回の種発見ワークショップなどによる成果で、同事業は年間の海洋生物種の同定ペースを54%高める規模だとしている。

同事業の3年目の報告によると、1121種のうち728種は、分類研究者への25件の助成を通じて見いだされた。対象には最近の探査で得られた標本と、過去に採集されながら研究が進んでいなかった標本の両方が含まれる。発見後は形態や遺伝情報を整理し、学名を伴う正式な記載へ研究を進める。

海洋生物の総種数には推計の幅がある。Ocean Censusの立ち上げ時にOETが紹介した推計は約220万種で、未知の種が約9割に上るという見方の背景にある。一方、WoRMSが登録する現生の有効な海洋生物種は、2026年5月に25万種を超えた。

深海で泳ぐ姿を撮影することも、保管標本を詳しく調べることも、海洋生物の理解を深める仕事だ。パラオでの映像は生息場所や行動を記録し、標本の分析は体の構造や種の違いを明らかにする。両方の記録を積み重ねることが、深海の多様性を把握し、保全を考える基礎となる。

元記事: ROV Footage Catches Live Dumbo Octopus Near Palau: Only Cameras Can Study These Animals

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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