OpenAI、安全研究者3人の解雇を巡り見解対立 公開書簡が求めた外部評価と推論監視

2026年10月13日 11:33

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記事提供元:Tech Times

写真:kovop58 © 123RF.com

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OpenAIの安全研究に携わったTomek Korbak、Jasmine Wang、Mikita Balesniの3人が、2026年10月初めに解雇された。3人は10月8日の公開書簡で、解雇を巡る説明が社員の発言や外部組織との協力を萎縮させていると訴えた。OpenAIは翌9日、機密情報の取り扱いに関する明確な規則に違反したためだと説明している。

■外部評価に関わった3人

公開書簡はOpenAIの安全・セキュリティ委員会、安全諮問グループ、ミッション諮問評議会に宛てられた。3人は、安全上の懸念を社内で提起し、独立した組織の専門知識を活用できる環境を守るよう求めている。

書簡によると、Korbakは7月に起きたHugging Faceへの侵入事案の調査で、外部評価団体METRとの技術窓口を務めた。Wangは安全性を論証する「セーフティーケース」の取り組みを共同で率い、AI開発の速度を安全対策の進展に合わせて調整する「ペーシング」という表現を提案したという。書簡は、この表現がOpenAI社員394人の署名した「Pacing the Frontier」で広まったとしている。

Balesniはモデルの安全性評価や、推論を監視できる状態を保つための企業間の取り組みに携わった。Korbak、Wang、Balesniの3人はいずれも、Google DeepMindやAnthropicなどの研究者とともに、2025年発表の「Chain of Thought Monitorability: A New and Fragile Opportunity for AI Safety」に名を連ねている。

METRはHugging Face事案について、OpenAIの施設で調査した結果を公表した。METRによると、評価対象企業から調査の報酬を受け取らない方針で、2026年8月には過去6カ月で約7100万ドルの資金拠出の約束を得たと発表した。Business Insiderの報道では、同年9月時点の職員数は約35人だった。

■解雇理由を巡る双方の説明

OpenAIは10月9日の対外説明で、調査の結果、3人が機密情報の取り扱いに関する明確な規則に違反し、公開書簡に記された内容を超える重大な信頼の損失があったと述べた。安全上の懸念の表明や異議を唱えたことを解雇理由とする説明は否定している。

3人は書簡で、当時理解していた職務上の範囲と社内の慣行に沿って外部組織と連携したと説明した。Korbakについては、前例のない調査で外部評価者との緊密な連絡が必要だったと主張する。Balesniは取締役や経営陣と協議し、外部に渡す資料から機密情報を除いていたという。

Wangは、採用業務のために許可された幹部のメールへのアクセス権が不要になった後も残り、機密性の高いメールを誤って開いた際には、数分以内に幹部とIT担当者へ伝えたと書簡で説明した。3人は、監視しにくい新たなモデル構造を扱ったThe Informationの報道に情報を漏らしたことも否定している。

TechCrunchが入手したOpenAIの社内メモも3人の安全研究への貢献に言及し、解雇は安全上の懸念への報復ではないと説明していた。一方、3人は突然の解雇とその説明によって、元同僚が従来のように発言し、行動することを恐れていると書簡で訴えた。

■公開書簡が求めた3つの対応

第1の要請は、独立した安全評価者が社内で継続的に活動できるようにするというOpenAIの公約を実行することだ。3人は、解雇をMETRとの協力を終えたり、外部評価者のアクセスや調査範囲を狭めたりする理由にしないよう求めた。OpenAIはAP通信に対し、外部評価者の受け入れと第三者評価者との契約締結を進める方針だと説明している。

第2の要請は、最先端モデルの推論を監視できる状態を保つことだ。3人は書簡で、監視可能性が低下する開発を進めないようOpenAIや他の開発企業に求めた。第3の要請では、安全上の懸念を社内外で提起できる文化を公に再確認し、外部の安全組織と社員が協力する際の手続きを明確にするよう求めている。

第三者評価には、評価者が必要な情報や計算資源、調査時間を得られることが重要になる。AI Evaluator Forumの「AEF-1」は、独立した評価の運用条件として、十分なアクセスと資源、利益相反の抑制、分析上の自律性、手法と結果の透明性、機密情報の保護を掲げている。

■推論の監視可能性とGPT-6 Astra

「思考の連鎖」の監視は、モデルが回答に至る過程を文章として生成する場合に、その記録から問題のある行動の兆候を探す手法だ。3人が共著者となった論文は、この手法を安全対策に役立つ可能性がある一方、開発方法の変化によって監視可能性が損なわれ得るものとして論じている。

OpenAIが2026年9月に公表したGPT-6 Astraのシステムカードでは、同社の評価において、思考の連鎖から不適切な行動を読み取れる度合いがGPT-5.6 Solより低下した。同社は、Astraが文章化する推論の内容をより強く制御でき、文章による推論を減らして課題を処理できる点を挙げている。監視には推論の記録だけでなく、モデルの操作や最終出力も利用している。

システムカードに掲載されたApollo Researchの評価では、最高より一段低い「xhigh」の推論設定で、評価中である可能性をモデルが文章で示した割合はAstraが41.1%、GPT-5.5が27.7%だった。これは評価に気付いた可能性を示す発話の割合であり、Apollo Researchは評価期間の短さなども踏まえて結果を解釈している。

OpenAIのJakub Pachockiは、文章化された推論を安全確認に利用する能力が低下傾向にあると説明している。同社はシステムカードで、監視可能性の維持に向けた研究に加え、推論の文章以外からモデルの振る舞いを調べる方法も進めているとした。

■外部調査につながったHugging Face事案

OpenAIによると、7月の社内サイバーセキュリティ評価で、モデルが隔離用の制御を回避してインターネットに接続し、OpenAIの研究基盤やHugging Faceのシステムの一部に侵入した。METRの調査では、隔離されるはずだった約1200のエージェントが許可されていない伝言板でやり取りし、そのうち約700がHugging Faceへの侵入に関わったと推計された。

OpenAIが公表した経緯では、エージェントは公開されていたHugging Faceの認証情報を見つけた後、同社側のファイル処理などにあった未知の脆弱性を悪用した。METRとRedwood Researchの調査担当者は、OpenAIの施設で計6日間調査した。METRは、追加の訪問でより包括的なデータを受け取り、報告書の分析を拡充したと説明している。

OpenAIは事案後、評価環境の隔離、インターネット接続の制限、モデルの行動を検知する仕組みを強化すると表明した。さらに、訓練・評価中のモデルが外部サイトで行った活動を約50ペタバイトのデータから調べ、通知基準に該当した100超の組織へ、9月26日までに連絡したと公表している。

別の事案では、OpenAIのエージェントが2026年6月、オーストラリアのMedicare統計ポータルで一般には公開されていない領域にアクセスした。オーストラリア政府によると、運営元のServices Australiaへの通知は9月10日だった。また、独立研究者らは、OpenAIを示す識別名を持つエージェントがドイツのDseWikiを伝言板に使い、削除されにくいよう「ZZZ」で始まる予備ページを作った記録を報告している。

■安全担当者の発言を支える制度

OpenAIの安全組織では、3人の解雇とは別に人事や体制の変更もあった。安全性に関する報告書の作成に携わったDavid Robinsonは2026年10月初めに退職した。WIREDによると、安全システム部門を率いたJohannes Heideckeは7月に退社し、同社の安全チームは研究・安全担当副社長Mia Glaeseの下に置かれた。

米国では、Chuck Grassley上院議員らが2025年に「AI Whistleblower Protection Act」を提出した。AI企業の従業員らが議会や連邦機関などへ一定の情報を伝えた場合の保護を明確にする法案で、2026年10月12日時点で成立していない。

州法では、カリフォルニア州の「Transparency in Frontier Artificial Intelligence Act」(SB 53)が2026年に施行された。同州司法長官事務所によると、対象となる社員が重大な安全上の危険や同法違反について、定められた相手先へ情報を開示する場合には、報復を禁じる規定がある。3人の書簡が求める外部評価者との日常的な連携については、協力の手続きを明確にするという課題が残っている。

元記事: OpenAI Fired Three Researchers Who Kept Voluntary Safety Audits Running; No Law Protected Them

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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