『コロニー/群体』の感染者はなぜ連携する? 群知能と粘菌研究で読み解く

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ヨン・サンホ監督の『コロニー/群体』は、感染者が情報を共有し、集団で行動を変えるゾンビ映画だ。監督はAIと高速な情報交換への関心を制作の背景に挙げている。感染者の動きと現実の研究に共通する発想をたどると、作品が描く個性の危うさも見えてくる。
■日本では2027年元日に公開
『コロニー/群体』は2026年のカンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門で上映され、韓国では5月21日に公開された。韓国映画振興委員会の集計によると、9月15日時点の韓国での観客動員数は584万5788人。英国では9月28日から4K UHD、Blu-ray、DVD、デジタル版が発売された。
日本ではギャガが配給し、2027年1月1日に全国公開する予定だ。2026年10月26日から11月4日まで開催される第39回東京国際映画祭では、クロージング作品に選ばれている。
物語の舞台は、バイオテクノロジーの会議が開かれる高層ビルだ。ク・ギョファン演じる研究者ソ・ヨンチョルが引き起こした感染の中で、チョン・ジヒョン演じる研究者クォン・セジョンらが脱出を図る。感染者は群れとして連携し、状況に応じて行動を変えていく。
■群知能に通じる「集団での調整」
群知能は、個々の単純な働きや相互作用から、集団としての秩序や問題解決が生まれる現象と、その発想を応用した計算手法を指す。アリの採餌行動に着想を得たアリコロニー最適化や、個々の候補が自身と群れの探索結果を参照する粒子群最適化が、その代表例だ。作品で感染者の行動が連携して変わる様子には、集団が情報を利用して行動を調整するという共通構造を見いだせる。
監督はBloody Disgustingのインタビューで、AIが人間らしく見える一方、人間とは違う間違いもすることに着目し、感染者の変化を考えたと語った。感染者の動きを形にする際には、現代舞踊の振付家とも協力したという。ABC Newsのインタビューでは、個々の感染者が同じ動きをするより、共通の目的に向かって動く集団を目指したと説明している。
集団が一斉に静止してから動き出す場面も、情報を共有する群れを印象づける。細菌の研究には、細胞が分泌する物質の濃度を手掛かりに、集団の遺伝子発現が切り替わる「クオラムセンシング」がある。画面上の同期を読み解く際、個々の反応が集団の振る舞いとして現れるという発想が補助線になる。
■粘菌とアリの研究を重ねて見る
作中の粘菌を思わせる設定からは、変形菌の一種モジホコリを連想できる。中垣俊之らは2000年、モジホコリの変形体が迷路内の餌を結ぶ短い経路を形成することを報告した。2010年には手老篤史らが、東京周辺の都市の位置に餌を置く実験で、モジホコリが効率や経路の途絶への強さの点で実際の鉄道網と比較できるネットワークを形成すると示した。
感染者を操るという設定には、アリに感染する寄生菌の研究も重ねられる。2017年に発表された研究では、寄生菌Ophiocordyceps unilateralisの仲間の細胞が宿主のアリの筋肉に入り込み、その周囲に網状に広がる様子が観察された。作品は、生物と宿主の関わりを、感染者の身体表現へと広げている。
セジョンが感染者に紛れるため、付着物のある上着を利用する場面は、化学的な識別を連想させる。アリが体表の炭化水素を手掛かりに巣仲間を見分けることは、行動実験でも確かめられている。群れの識別を逆手に取る場面として、科学の知見を作品鑑賞の手掛かりにできる。
■群れの動きが浮かび上がらせる個性
韓国語の原題「군체」は「群体」を意味する。昆虫学者ウィリアム・モートン・ウィーラーは1911年、アリのコロニーを一つの生物のように捉える考え方を示した。個々の感染者より群れ全体の動きを前面に出す演出にも、群体という言葉を重ねられる。
監督はFilm Storiesのインタビューで、高速な情報交換の中で個性の重要性が薄れていくことへの懸念を語っている。一方、ABC Newsには、感染者の動きを「一つの手の指」のように、共通の目的を持つ集団として表現したと説明した。統一された動きと、生存者たちの異なる判断がぶつかるところに、本作の緊張感がある。
Rotten Tomatoesでは2026年10月1日時点、批評家115件に基づく肯定的評価の割合が82%となっている。この数値は作品への批評家評価を集計したものだ。集団の動きをどう映像化し、個々の人物をどう描いたかという批評上の論点と、科学研究との共通点は、それぞれの視点から楽しめる。
元記事: Colony’s Zombies Don’t Just Learn From Failure: They Embody How AI Trains
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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