Microsoft、メリーランドに量子研究拠点を開設 DARPAが「Majorana 2」を独立評価へ

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Microsoftは2026年9月22日、米メリーランド大学の研究地区「Discovery District Maryland」に量子研究センターを開設したと発表した。施設には、米国防高等研究計画局(DARPA)が同社の量子チップ「Majorana 2」を現地で独立評価するための区画に加え、量子ハードウェアの実習施設や企業向け研究スペースが設けられている。
MicrosoftはMajorana 2について、トポロジカル量子ビットを利用する第2世代の量子チップと位置付けている。一方、その基礎となるマヨラナゼロモードがデバイス内で実現しているかについては、物理学者の間で議論が続いている。DARPAによる評価は、同社の方式が実用規模の量子コンピュータへ発展できるかを、ハードウェアとシステムの両面から検証する取り組みとなる。
■DARPAがMajorana 2を現地で評価
新センターは約1万5000平方フィートの規模で、メリーランド州が取得、改修したDiscovery Center内に整備された。Microsoft、メリーランド大学、州の「Capital of Quantum」構想が施設設計に関わり、Microsoftの専用研究区画、DARPA向けのトポロジカル量子システム設置区画、提携企業向けの研究室やオフィス、教育用ラボを備える。
Microsoftによると、DARPAはセンターに設置される同社の最新トポロジカル量子システムへ全面的にアクセスする。これにより、DARPAの評価チームはMajorana 2を用いたハードウェアの試験や、将来のプロトタイプに対する検証を現地で進められるようになる。
評価にはDARPAのほか、米空軍研究所、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所、ロスアラモス、オークリッジ、ローレンス・バークレー、ローレンス・リバモアの各国立研究所が参加する。ハードウェアや制御系だけでなく、ソフトウェア、システム設計、想定用途までを含む評価が計画されている。
Microsoftと光量子コンピュータを開発するPsiQuantumは、DARPAの「Underexplored Systems for Utility-Scale Quantum Computing(US2QC)」で、最終段階の「Validation and Co-Design」に進んでいる。US2QCを拡張したQuantum Benchmarking Initiative(QBI)は、計算によって得られる価値がシステムのコストを上回る「実用規模」の量子コンピュータを2033年までに構築できるかを検証する取り組みである。
■Majorana 2が示した20秒のパリティ寿命
Majorana 2は、Microsoftが2026年6月に発表した第2世代の量子チップである。先代のMajorana 1で使っていたアルミニウムを鉛へ置き換え、半導体部分にはヒ化インジウムとヒ化インジウムアンチモンの複合構造を採用した。
同社が公開したプレプリント論文では、複数のテトロンで構成するデバイス内の一つのナノワイヤーを測定し、パリティが切り替わるまでの特性時間が約20秒、一部の測定では1分規模に達したと報告している。Majorana 1で報告された1~12ミリ秒と比べ、3桁を超える改善となる。
パリティは、ナノワイヤー内の電子数が偶数か奇数かを表す量で、Microsoftの測定ベース量子計算では情報の読み出しや演算に用いられる。同社は、鉛を採用した材料構造によって励起ギャップが拡大し、環境から入る外乱などによる意図しないパリティの切り替わりを抑えられたとしている。
ただし、約20秒という値は4量子ビットのプロセッサ全体を使った計算時間ではなく、テトロンを構成する一つのナノワイヤーで測ったパリティ切り替え時間である。論文も2026年9月時点では査読前のプレプリントであり、デバイスが完全なトポロジカル量子ビットとして一連の演算を実行したことを示す結果とは区別する必要がある。
■焦点となるトポロジカル性
Microsoftの方式は、超伝導体と半導体を組み合わせたナノワイヤーの端に現れると考えられているマヨラナゼロモードを利用する。複数のマヨラナゼロモードに量子情報を非局所的に符号化できれば、局所的な外乱の影響を受けにくい量子ビットを構成できると期待されている。
Majorana 2の基本構造である「テトロン」は、2本のナノワイヤーを超伝導体で接続した構造を持つ。Microsoftは、各ナノワイヤーの両端にマヨラナゼロモードを形成し、そのパリティを測定することで量子情報を扱うアーキテクチャを開発している。
一方、半導体と超伝導体の接合部では、マヨラナゼロモードに似た信号を示すトポロジカルではない低エネルギー状態が生じる場合がある。このため、パリティ寿命が長いことやゼロエネルギー付近の状態が観測されたことだけでは、マヨラナゼロモードに基づくトポロジカル保護が成立していると直ちに結論付けることはできない。
Microsoftが2025年にMajorana 1を発表した際にも、付随する査読論文がトポロジカル量子ビットの存在を直接実証したものではないとの指摘が出た。同年3月の米国物理学会の会合で追加データが示されたものの、信号の明瞭さや解釈を巡って研究者から疑問が示されている。
同社に関係する研究チームは2018年、マヨラナゼロモードの証拠と解釈した量子化コンダクタンスをNatureに報告したが、未提示だった測定範囲やデータ補正、校正上の問題が判明し、2021年に論文を撤回した。この経緯もあり、Microsoftの最新デバイスには、外部機関による慎重な検証が求められている。
■DARPAが検証する「実用規模」への道筋
DARPAによる評価は、単一の測定結果だけからマヨラナゼロモードの存在を判定することを目的としたものではない。US2QCでは、提案された量子コンピュータの設計を実際に構築できるか、必要な部品を要求仕様で製造できるか、それらを統合して想定通り動作させられるかを段階的に検証する。
MicrosoftとPsiQuantumは2023年初頭からDARPAの評価を受けている。50人を超える専門家が、両社の技術方式、耐故障性プロトタイプの計画、長期研究開発計画、システム構成、想定用途を審査した。最終段階では、主要な試作機の部品試験やシステム性能の評価が進められる。
MicrosoftはMajorana 2の発表時、スケーラブルな量子コンピュータの実現目標を2029年に前倒しすると表明した。ただし、これは同社の開発目標であり、DARPAが達成可能性を認定した時期ではない。実現には、個々のデバイス特性だけでなく、複数量子ビットの制御、測定精度、誤り訂正、製造再現性、システム統合などの検証が必要になる。
メリーランドのセンターに実機を設置することで、DARPAは設計書や遠隔評価だけでなく、現地のハードウェアを対象とした試験を実施できる。評価結果がどの範囲まで公表されるかは明らかになっていないが、Microsoftのトポロジカル方式が実用規模へ進めるかを判断する重要な材料になる。
■実機を使った人材育成と測定技術
センターには、学生、研究者、教育関係者、他分野から量子技術に移る人材を対象とする量子ハードウェア・メイカースペースも設けられた。参加者が部品を組み合わせ、測定対象を選び、想定外の結果を分析する実習を通じて、量子ハードウェアの設計と制御を学ぶことを想定している。
初期パートナーにはAMD、Bluefors、Intel、IQM、フェルミ国立加速器研究所、Riverlane、Quantum Motionが名を連ねる。各組織が機器や専門知識を提供し、極低温装置、制御回路、測定機器を含む量子ハードウェア・スタックを扱う教育環境を整える。
Microsoftとメリーランド大学は、測定ベース量子計算をテーマとする年次ワークショップも開催する。測定の高速化と高精度化、測定ベースの方式に適した誤り訂正符号、検証・妥当性確認手法の研究を進める計画だ。
さらにMicrosoftは、メリーランド大学で量子分野の博士研究員ポストに資金を提供する。新センターはMajorana 2の評価拠点に加え、量子ハードウェアの人材育成、企業や大学との共同研究、測定技術の開発を組み合わせた研究基盤として運用される。
元記事: DARPA Gets First On-Site Access to Microsoft Majorana 2 Qubits Under Scrutiny
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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