「Cosmic Motors」2027年に劇場公開へ、思考で車を動かすBCI研究との共通点
NetflixとParamountは2026年9月14日、Skydance Animation作品を対象とするアニメ映画契約を終了すると発表した。これに伴い、Netflix向けに企画されていたジョン・ラセターの新作アニメ映画「Cosmic Motors」は、2027年にParamount Pictures配給で劇場公開される予定だ。ダニエル・サイモンのコンセプトアート集を原作とする本作には、神経信号による車両操作や核融合推進、生物由来素材など、現実の研究と発想を重ねられる技術が登場する。
■Netflixとの契約終了で劇場公開へ
NetflixとParamountの共同声明によると、両社は2023年に始まったアニメ映画契約を終了する一方、Netflix向けに残る2作品は予定通り公開する。「Ray Gunn」は2026年12月18日に配信され、リッチ・ムーアが監督するタイトル未定の「ジャックと豆の木」企画もNetflixで公開される予定だ。両社は従来のコンテンツライセンス関係も継続する。
Netflix向けに準備されていた「Cosmic Motors」は、Paramount Picturesによる劇場公開へ切り替わる。映画はジョン・ラセターが監督し、ルイ・デル・カルメンが共同監督を務める。2027年公開と報じられているが、具体的な日付は発表されていない。
契約終了の背景については、SkydanceとParamountの統合後、Skydance Animationの作品をParamountの劇場公開ラインアップに組み込む必要が生じたことや、Netflixが独自のアニメ制作体制を拡充していることなど、複数の要因が報じられている。契約作品の「Spellbound」は2024年に配信され、2026年5月公開の「Swapped」はNetflixの歴代人気作品ランキングに入る視聴実績を記録した。
Skydance Animationは今後も、Paramount Animationとは別のレーベルとしてParamount Pictures内で運営される。Paramount Animationは引き続きジェニファー・ドッジが率い、Skydance Animationはラセターとプレジデントのホリー・エドワーズが指揮する。
■銀河の乗り物を描いたコンセプトアート集
「Cosmic Motors」は、ドイツ出身のデザイナー、ダニエル・サイモンが2007年に発表した同名のコンセプトアート集を原作とする。176ページの書籍には、架空の銀河Galaxionで使われる宇宙船、レーサー、列車、軍用車両など9種類の乗り物が収録されている。初期スケッチから精密な3Dモデル、フォトリアルな完成図に至るまで、それぞれのデザイン過程も紹介されている。
サイモンはVolkswagen Groupで自動車デザインに携わった後、映画やエンターテインメントの分野へ進んだ。「TRON: Legacy」のライトサイクルをはじめ、「Captain America: The First Avenger」「Prometheus」「Oblivion」などの乗り物や機械をデザインしている。
原作世界の中心にあるのは、愛好者から「CoMo」と呼ばれる架空の車両メーカー、Cosmic Motorsだ。GalaxionのRedooa兄弟が退役した軍用機械をレーシング車両へ改造したことから始まり、やがて多様な輸送機器を手掛ける企業へ成長したという設定である。
映画の詳しい物語や登場人物、声優陣は明らかになっていない。現時点では、架空の車両メーカーを軸とする原作世界とラセターの過去の監督作との共通性から、「宇宙版『カーズ』」と紹介されている。
■ラセターにとって約15年ぶりの監督作
「Cosmic Motors」は、ラセターにとって「Cars 2」以来、約15年ぶりの長編監督作となる。これまでに「Toy Story」「A Bug's Life」「Toy Story 2」「Cars」「Cars 2」を監督し、PixarとWalt Disney Animation Studiosではチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めた。
ラセターは、職場での望まれない身体接触などに関する複数の申し立てが報じられた後、2018年末にDisneyを退社した。Skydanceは2019年にラセターをアニメーション部門の責任者として採用し、この決定にはTime's Upなどから批判が寄せられた。Skydanceのデビッド・エリソンCEOは当時、採用前に外部の法律事務所による調査を実施したと説明している。
自動車を題材とする作品を手掛けてきたラセターと、実際の自動車デザインを基盤に架空の乗り物を構築したサイモンの組み合わせは、本作の大きな特徴となる。原作に描かれた精密な機械や巨大な移動体が、アニメーション映画としてどのように表現されるかも注目点だ。
■神経信号で車両を操作する研究
「Cosmic Motors」の原作には、神経からの入力によって操作するレーシング車両が登場する。この設定を読み解く補助線の一つが、脳活動から利用者の意図を読み取り、外部機器の操作信号へ変換するブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)の研究だ。
Caltech、Ford Motor Company、Blackrock Neurotechなどの研究チームは2025年、四肢まひのある参加者が皮質内BCIを使い、市販の電気自動車Ford Mustang Mach-Eを遠隔操作する実験を報告した。参加者はカリフォルニア州にいながら、ミシガン州の閉鎖試験施設に置かれた車両の速度と進行方向を、画面上のカーソル操作に変換した神経信号によって制御した。
研究ではまず、参加者の左右の手に対する運動意図を個別のカーソル操作として読み取った。これを車両の加減速と操舵に割り当て、さらにクリックに相当する信号を停止操作へ利用した。実車試験は一般道路や交通のある環境ではなく、閉鎖施設内の障害物コースで行われた。
実験参加者は反応課題で、運動機能に障害のない比較参加者と同程度、またはそれ以上の速さと精度を示し、シミュレーター上の運転課題でも比較群と同程度の成績を収めた。実車の遠隔操作については、安全性と実行可能性を示す概念実証と位置付けられる。
ここで作品と研究に共通するのは、脳から得た信号を解読し、車両の操作へ変換する情報処理の構造だ。原作ではこの技術がレースのカテゴリーとして制度化され、神経操作と手動操作が異なる競技区分を構成している。技術だけでなく、それをスポーツの規則や文化に組み込んだ点に、世界設定としての広がりがある。
Precision Neuroscienceも2025年、脳表面の電気活動を記録、監視、刺激する電極アレイ「Layer 7 Cortical Interface」について、米食品医薬品局の510(k)クリアランスを取得した。この承認は最大30日間の留置や脳機能マッピングなどを対象とするもので、同社が開発中の完全埋め込み型BCIシステム全体を承認したものではない。それでも、神経信号を長期間記録して解読技術の開発に役立てる基盤として重要な動きである。
■核融合推進が重ねる科学的イメージ
原作のGalaxion 3000 Coupéは1840馬力、最高時速330マイル(約531km)という設定で、動力源には架空の小型核融合炉「Xenoranium Fusion Reactor CM980」を搭載する。現実の核融合研究との共通点は、非常に大きなエネルギーを小型の装置から得て、移動体の推進と電力供給に使うという発想にある。
核融合では、軽い原子核を融合させた際に放出されるエネルギーの利用を目指す。地上では大型の実験施設を中心に研究が進められており、発電設備として継続的かつ経済的に正味のエネルギーを取り出す段階には到達していない。自動車に搭載できる核融合炉は、さらに先の構想となる。
一方、宇宙機向けには核融合反応で生じるプラズマを推進に利用し、同時に機内電力も供給する研究構想がある。英国のPulsar Fusionは、核融合推進エンジンの試験装置として幅約8メートルのチャンバーを開発し、2027年の試験を目標に掲げている。これは同社の開発目標であり、核融合推進の実証済み性能を示すものではない。
Lockheed MartinのSkunk Worksも2010年代に小型核融合炉の構想を公表し、関連する特許を取得した。しかし、近年は同計画の具体的な進展が公表されておらず、現在も活発な開発計画として継続しているかは確認できない。
作品世界では、軍用機に使われていた核融合技術が民生用レーサーへ転用されている。高密度の動力源が推進だけでなく車内の各種システムにもエネルギーを供給するという構造は、発電と推進を一体化しようとする宇宙工学の研究を連想させる。原作の技術を現実の研究成果と同一視するのではなく、乗り物のエネルギー設計を考える手掛かりとして楽しめる部分だ。
■バイオファイバーが示す材料設計の発想
Galaxion 3000のシャシーには、「先進バイオファイバー」と呼ばれる生物由来の架空素材が使われている。この設定には、限られた種類の材料を加工するのではなく、生物の構造や生成過程を利用して必要な特性を持つ材料を作るという発想が表れている。
現実の材料科学でも、細菌が作るセルロース、菌糸体、キチン、絹由来の繊維などを利用した複合材が研究されている。研究対象は包装材や断熱材、建築材料、医療用途など幅広い。それぞれの材料は機械的強度、密度、耐久性、製造方法が異なるため、一括して鋼鉄を上回る構造材とみなすことはできないが、再生可能な原料や生物の微細構造を工業材料に生かす点で、作品のバイオファイバーに通じる。
Cosmic Motorsの車両は、小型の高出力動力源、神経信号を解読する操作系、軽量な構造材料が組み合わされた一つのシステムとして描かれる。個別の未来技術を並べるだけでなく、動力、制御、材料が相互に支え合う設計になっていることが、サイモンの世界に機械としての一貫性を与えている。
■兵器をレーサーへ変える世界設定
CoMoが退役した軍用機械をレーシング車両へ転用したという設定は、軍事目的で開発された技術が民生分野へ広がってきた歴史とも重なる。ジェットエンジン、衛星測位システム、コンピューターネットワークなどは、軍事や政府の研究開発と深く関わりながら発展し、後に民間の交通や通信、情報サービスへ利用範囲を広げた。
もっとも、こうした技術移転は、軍事利用が限界に達したため自動的に起きるものではない。政府による利用制限の変更、民間向け技術の開発、標準化、インフラ整備などが重なって進む。「Cosmic Motors」はその複雑な過程を、軍用機械に新たな役割を与える企業の創業物語として視覚化している。
戦うために作られた機械を競技や移動のために再生するという構図は、車両デザイン以上の物語性を持つ。「カーズ」シリーズで、乗り物を通じてアイデンティティーや共同体、世代交代を描いてきたラセターにとっても、人物と機械の関係を掘り下げられる題材になりそうだ。
■劇場公開で問われる映像表現
原作の魅力は、精密な機械設計を思わせるスケッチと、巨大な乗り物の質感やスケールを伝えるフォトリアルな画像にある。映画の映像表現はまだ明らかにされていないものの、こうしたデザインを大画面と劇場音響でどう動かすかは、劇場公開版「Cosmic Motors」の重要な見どころになる。
Netflix配信からParamountによる劇場公開への変更は、作品の届け方を大きく変える。ただし、公開規模や上映方式、日本での公開時期は発表されていない。
BCIによる遠隔運転、宇宙機向け核融合推進、生物由来複合材の研究は、それぞれ目的も成熟度も異なる。それでも、入力された意図を機械の動作へ変換する制御構造や、高密度のエネルギーを移動へ利用する設計、生物の仕組みを材料へ取り込む発想は、「Cosmic Motors」の世界を読み解く興味深い補助線になる。2007年に描かれた架空の乗り物が、2027年の映画でどのような物語と映像を得るのか、今後の発表が待たれる。
元記事: Thought-Controlled Driving Is Real: Cosmic Motors Brings That World to Paramount
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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