中国製ヒト型ロボット、工場受注を拡大―VLAが広げる作業範囲と実用化の課題

2026年8月27日 12:46

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記事提供元:Tech Times

中国のヒト型ロボット産業で、完成車、電池、電子機器、物流などの現場を対象とした大型受注や導入事例が相次いでいる。優必選科技(UBTECH)や銀河通用機器人(Galbot)、智元機器人(AGIBOT)などが量産や工場展開を進め、技術実証だけでなく、実際の生産工程で価値を示す段階に入りつつある。

その中核技術として注目されるのが、画像と言語指示をロボットの行動へ結び付けるVLA(Vision-Language-Action)モデルだ。作業変更への対応を柔軟にする可能性がある一方、現在のVLAが未知の作業や環境へどこまで適応できるかは、引き続き重要な技術課題となっている。

■中国メーカーで相次ぐ大型受注と工場導入

2026年8月に北京で開催された世界ロボット会議(WRC 2026)では、中国電子学会の徐暁蘭理事長が、中国のヒト型ロボット産業は「大規模な商用化と導入の重要な段階」に入ったとの認識を示した。各社に求められる評価軸は、デモでの運動能力だけでなく、工場での稼働実績、生産性、納入能力、継続受注へと移りつつある。

UBTECHによると、産業用ヒト型ロボット「Walker S2」の受注額は8億元(約189億円)を超えた。顧客としてBYD、東風柳州汽車、吉利汽車、一汽フォルクスワーゲン、アウディ一汽、北汽新能源、Foxconn、順豊速運などが挙げられている。

Galbotは、中国の電池大手CATLと戦略提携し、車輪型の産業用ロボット「Galbot S1」をCATLの生産ラインへ導入している。CATLによると、同機はモジュールやバッテリーパックの製造工程で、資材の運搬やピッキングなどを担当する。Galbotについては、CATL関連の調達案件で2億3600万元規模の落札も報じられている。

AGIBOTは、同社の「G2」が民生用電子機器の生産ラインで精密な搬入・搬出作業を行い、140時間の連続運転で99.9%を超えるタスク成功率と、1時間当たり310個の処理能力を記録したと発表している。これらは同社が公表した数値であり、独立機関による監査結果ではない。

■VLAが目指す視覚、言語、行動の統合

VLAモデルは、カメラ画像などの視覚情報、自然言語による指示、ロボットの状態を組み合わせて処理し、行動を生成するモデルの総称である。実装方式は一様ではなく、すべてのVLAが関節位置を入力してモーターを直接制御するわけではない。

従来型の産業用ロボットは、あらかじめ定義された設備や部品、動作手順に沿って、高い精度と再現性で作業することを得意としてきた。一方、VLAは視覚情報と言語指示を利用することで、対象物や作業内容の変化へ少ない追加調整で対応できるロボットを目指している。

例えば、扱う箱や部品の形状が変わった場合、従来型のシステムでは認識条件や動作軌道の再設定が必要になることがある。VLAを利用するシステムでは、学習済みの範囲内であれば、視覚情報と新しい指示を基に行動を変更できる可能性がある。

この柔軟性は、品種変更の多い生産ラインや物流作業で有用になり得る。ただし、VLAを採用しただけで再プログラミングが不要になるわけではなく、安全条件の設定、設備との接続、現場データによる追加学習、動作の検証などは依然として必要になる。

■世界モデルとの組み合わせで複数工程を計画

ロボット分野では、VLAに「世界モデル」と呼ばれる仕組みを組み合わせる研究や製品開発も進んでいる。世界モデルは、現在の状態と行動から、その後に起こり得る状態を予測するための内部表現を指す。

ロボットが物体を認識して直ちに反応するだけでなく、複数の行動候補やその結果を予測できれば、対象物をつかみ、運び、指定位置へ置くといった一連の作業を計画しやすくなる。このため、VLAと世界モデルの組み合わせは、認識、指示理解、行動計画を結び付ける構造として注目されている。

Galbotは、把持など異なる作業向けのVLAモデルを同じロボット上で使い分け、世界モデルと組み合わせて複数段階の作業を処理する構成を示している。Galbot S1については、QRコードや位置決め用ラベルへの依存を抑え、主に視覚情報を使って移動や作業位置の認識を行うとしている。

ただし、こうした構成の有効性は、対象となる工程、学習データ、センサー、制御系、安全設計などにも左右される。大型受注がVLAの採用だけによって決まったとする公表資料は確認できず、価格、可搬重量、保守体制、量産能力、既存設備との統合性なども調達判断の要素になる。

■現在の得意分野は構造化された反復作業

現在のヒト型ロボットが導入されやすいのは、固定された作業場所、倉庫内物流、危険環境の点検など、作業内容と周辺環境を一定範囲に管理できる用途である。

Roboteraの共同創業者である席悦氏は、物流、先端製造、危険作業などの制御された環境が、当面の大規模導入先になるとの見方を示している。現実のデータ基盤やアルゴリズムを活用し、動的な環境での判断力と器用な操作能力を高めることが中心的な課題になるという。

VLAは、幅広いデータから複数の作業を学習し、新しい対象や指示へ対応することを目指している。一方、学習時と条件が大きく異なる分布外の作業では性能が低下しやすく、異なる製造工程へ移す際には追加データや再学習、現場での調整が必要になる場合がある。

したがって、現段階でのVLAの強みは、あらゆる作業を言葉だけで実行できることではなく、一定の作業領域内で変更への対応範囲を広げられる可能性にある。未知の作業への汎化性能は、VLA研究全体に残る主要な課題の一つである。

■受注額と現場での生産性は分けて評価

受注額や出荷台数の増加は商用化の進展を示すものの、工場での生産性や投資回収を直接保証するものではない。処理速度、稼働率、故障率、保守費用、作業変更に必要な調整時間などを、用途ごとに評価する必要がある。

UBTECHについては、Walker S2の作業効率が一定の工程で人間の半分程度にとどまるとの説明も報じられている。この水準が適するかどうかは、作業内容や労働環境によって異なる。

高速な組み立てラインでは、専用の産業用ロボットや人間の作業を置き換えられない場合がある。一方、高温、腐食性物質、有害ガス、狭い場所、夜間といった環境では、単純な処理速度以外にも、人が危険な場所へ入る回数を減らせることや、長時間の監視を自動化できることが導入価値になる。

CATLが公表したGalbot S1の仕様では、最大8時間の連続稼働が示されている。ヒト型ロボットの稼働時間は機種、負荷、動作内容、電池容量によって異なるため、一律に1〜4時間とすることはできない。交代勤務に近い運用では、急速充電、自動充電、交換式バッテリーなどを含めた運用設計が必要になる。

■市場拡大と量産競争

中国のヒト型ロボット市場では、多数のメーカーが研究開発、量産設備、工場導入への投資を拡大している。UBTECH、AGIBOT、Unitree、Galbotなどが代表的な企業として挙げられるが、出荷台数や市場シェアの算定には、研究・教育向け機体、産業用途、車輪型ロボットを含めるかなどの違いがある。

Unitreeは2026年8月19日、上海証券取引所の科創板へ上場した。同社はヒト型ロボットに加えて四足歩行ロボットも展開しており、研究、教育、消費者向けを含む複数の市場を対象としている。このため、同社全体の販売実績と、工場で稼働するヒト型ロボットの実績は区別して見る必要がある。

今後は、機体を大量に生産できることだけでなく、導入後の保守、ソフトウェア更新、顧客ごとの工程統合、現場データを使った継続的な改善まで提供できるかが競争を左右する。ハードウェア、基盤モデル、実際の導入現場を結び付ける運用体制が重要になる。

■安全性とデータ管理を導入前に確認

カメラやLiDAR、マイクなどを搭載するロボットは、周辺環境を認識するために映像、距離情報、音声などを取得する場合がある。工場では、設備配置、製造工程、試作品、従業員の姿などがセンサーデータに含まれる可能性がある。

導入企業は、取得されるデータの種類、保存場所、保存期間、外部送信の有無、遠隔保守でアクセスできる範囲、ソフトウェア更新の経路を確認する必要がある。中国企業の製品に限らず、ネットワーク接続された産業機器に共通する管理項目である。

中国の国家情報法第7条は、中国の組織と国民に対し、法に基づく国家情報活動への支持、協力、連携を求めている。一方、この条文だけから、海外に設置されたロボットのデータが自動的に中国当局へ提供されると結論付けることはできない。導入時には、適用法、契約内容、データの流れ、メーカーや保守事業者のアクセス権限を個別に確認する必要がある。

米連邦通信委員会(FCC)は2026年7月28日、外国製の一定の先進ロボット機器をCovered Listの対象へ追加した。この措置は中国メーカーだけを名指ししたものではなく、対象となる外国製の新規モデルが米国で機器認証を取得する際に制限を設けるものだ。すでに認証された製品の継続利用や販売を一律に禁止する措置ではなく、一般的な政府調達禁止リストとも異なる。

米国防総省はUnitreeを中国軍事企業に関するSection 1260Hリストへ掲載している。この指定自体が、米国の民間企業や個人による購入を全面的に禁止するものではないが、国防総省との契約や関連する調達では追加の確認が必要になる。

実際の対策としては、ロボット用ネットワークの分離、不要なインターネット接続の遮断、通信先の監視、ソフトウェアとファームウェアの管理、アクセス権限の制限などが考えられる。機密性の高い工程や規制対象分野へ導入する場合は、法務、セキュリティ、製造部門が共同で設計を審査することが重要になる。

■実用化を左右する汎化性能

ヒト型ロボットの商用化を左右するのは、出荷台数だけでなく、一つの機体が現場で担当できる作業の幅である。作業を変更するたびに大規模な再設定やデータ収集が必要になれば、導入コストや停止時間が増える。

VLAは、視覚と言語を利用して複数の作業を共通の枠組みで扱うという点で、この問題への有力なアプローチになっている。世界モデルとの組み合わせは、指示を理解し、周辺を認識し、結果を予測しながら行動するという情報処理の流れを強化する。

一方、現在の導入事例の多くは、工場の固定作業、物流、検査など、環境を管理しやすい用途に集中している。今後は、異なる部品や設備、人の動きが混在する環境で、どの程度の追加学習によって安定した性能を維持できるかが焦点になる。

中国メーカーによる大型受注は、ヒト型ロボットがデモ中心の段階から工場導入へ進んでいることを示している。ただし、どの案件が量産納入に至り、継続受注や生産性向上につながるかは、今後の稼働実績を見極める必要がある。

■注目ポイントQ&A

●VLAモデルとは何ですか?

VLAは、画像などの視覚情報と言語による指示をロボットの行動へ結び付けるモデルの総称です。モデルによって構成は異なり、行動を直接生成する方式のほか、別の制御システムと組み合わせる方式もあります。

●VLAを使えば、作業変更時のプログラミングは不要になりますか?

必ずしも不要にはなりません。学習済みの範囲では変更へ柔軟に対応できる可能性がありますが、現場への導入には安全設定、設備との連携、追加学習、動作検証などが必要です。

●中国製ヒト型ロボットには特有のセキュリティリスクがありますか?

製造国にかかわらず、カメラやネットワーク機能を備えたロボットにはデータ流出や不正アクセスのリスクがあります。中国企業の製品では中国法や米国の規制も確認事項になりますが、法律の条文だけからデータ提供が行われると断定せず、通信、保存、遠隔保守、契約条件を製品ごとに調べる必要があります。

●現在の商用ヒト型ロボットが得意とする作業は何ですか?

固定された作業場所での搬送や部品の取り扱い、倉庫内物流、危険環境の点検など、反復性が高く周辺環境を管理しやすい作業です。未知の物体や大きく異なる工程へ対応する汎化性能には、引き続き課題があります。

元記事: China’s Humanoid Robots Win Factory Contracts: VLA Models Drive Orders

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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