サムスン、家電モーター技術を転用したヒューマノイドロボットを極秘開発か

2026年8月13日 13:48

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記事提供元:Tech Times

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サムスン電子が、公表済みのロボティクス部門とは別に、ヒューマノイドロボットを完全内製で開発していると韓国メディアが報じた。家電向けモーター技術を応用したアクチュエータと、自社工場から得られるAI学習データが強みになるとみられる。サムスンは、この社内プロジェクトの存在を公式には確認していない。

■公表部門とは別の秘密プロジェクト

韓国の経済紙、毎日経済新聞とZDNet Koreaの8月11日の報道によると、サムスン電子は、公表済みのRobotics eXperience(RX)部門や子会社のRainbow Roboticsとは別に、ヒューマノイドロボットを完全内製するプロジェクトを数年前から秘密裏に進めてきたという。韓国メディアが引用した業界関係者によれば、この非公開プロジェクトはすでに高度な段階にあり、韓国内の主要な競合を上回る性能を備えているとされる。

この報道により、同社が2026年に行った重要なロボティクス関連発表の見方も変わってくる。サムスンが7月21日にRX部門を立ち上げ、Rainbow Roboticsをハードウェアの基盤として位置づけたことは事実だが、それは全体像の一部にすぎなかった可能性がある。その裏では、公の発表で説明されなかった、より踏み込んだ社内プロジェクトが数年前から並行して進められていたと報じられている。

■Rainbow Roboticsにはない社内プログラムの強み

サムスンの社内開発ヒューマノイドは、ロボット専業企業にはない2つの資産を基盤としている。1つ目は、同社の家電向けモーター技術を応用した独自のアクチュエータ技術だ。2つ目は、家電、スマートフォン、半導体、ディスプレイにまたがる製造現場から得られる学習データのパイプラインである。

ロボットの関節を動かすアクチュエータは、ヒューマノイドロボットの部品表において最も高価な部品カテゴリーだ。Interact Analysisの2026年のヒューマノイド市場調査によると、関節アクチュエータは高機能なヒューマノイドで総材料費の30%以上、よりシンプルなプラットフォームでは50%以上を占める。Bank of Americaの製造コスト予測でも、2030年のヒューマノイドの部品表において、リニアアクチュエータとロータリーアクチュエータを合わせたコストが半分以上を占めるとされている。また、現代モビス(Hyundai Mobis)はCES 2026で、Boston Dynamicsの「Atlas」向けアクチュエータ供給契約について説明した際、アクチュエータがヒューマノイドの材料費の「60%以上」を占めると述べている。

サムスンはすでに、洗濯機、エアコン、冷蔵庫向けのブラシレスDC(BLDC)モーターを大規模に製造している。これらのモーターは、巻線技術、永久磁石を用いた部品構成、ローターのバランス調整工程、統合型電子コントローラーなど、ロボットの関節アクチュエータと基本的な設計要素を共有している。既存の家電用モーター製造ラインをロボット用アクチュエータモーターの生産に転用できれば、スタートアップ企業が専用ラインをゼロから構築する場合よりも、短期間かつ低コストで生産を始められる。必要な設備はすでに整い、サプライチェーンも確立され、品質管理工程も成熟している。

こうした製造基盤の蓄積こそが、サムスンがコスト構造で優位に立つ可能性の核心である。専門サプライヤーから1ユニット当たり500~2,000ドル(約7万9,500円~31万8,000円、1ドル=159円換算)で調達するのではなく、家電と同等の規模でアクチュエータを生産できれば、ヒューマノイドロボットにおける最大のコスト項目を圧縮できる可能性がある。

■非公開ロボットを支えるAIスタック

ハードウェア開発には、それを支えるAI開発も伴っている。サムスンの大規模言語モデル「Gauss」は、同社のロボティクスAI開発における基盤レイヤーとして機能している。また同社は、視覚・言語・行動を統合するVision-Language-Action(VLA)モデル「Shallow-π」を開発している。Samsung Researchが発表したこのモデルは、すでに厳格な工場テストを通過したとされる。

VLAモデルとは、視覚認識、自然言語理解、ロボットの動作制御を単一のエンドツーエンドシステムに統合するAIアーキテクチャだ。人間が個々の作業をすべて事前にプログラムしなくても、ロボットが見たものを具体的な行動へ変換できる。Shallow-πは、従来のVLAモデルと比べて必要な計算ステップを3分の1に圧縮し、ロボットが1秒間に17回の意思決定を行えるようにした。これは、それまで業界の基準とされていた8Hzの2倍を超える。工場で行われた独立試験では、1ミリ未満の精度が求められるウォーターホースの超精密挿入作業において95%の成功率を達成し、双腕とハンドの計22自由度を40ミリ秒で協調制御したとされる。

Shallow-πに加え、サムスンはロボティクス向けの「世界モデル(World Model)」も構築していると報じられている。これは、物理世界そのものを予測するモデルを学習するAIシステムだ。VLAモデルが知覚を行動へ変換するのに対し、世界モデルは、ロボットが実際に行動する前に、その結果を予測できるようにする。これにより、新しい作業を学ぶ際の失敗回数を減らし、未知の物体や環境にも対応しやすくなる。このアーキテクチャは、Teslaや韓国のNC AIコンソーシアムが開発しているアプローチと共通しており、ロボティクスAI分野全体が向かいつつある方向性を示している。

■AIを実用化する「データファクトリー」

Shallow-πや世界モデルには学習データが必要であり、ここでサムスンの幅広い製造拠点が、模倣の難しい構造的な資産となる。同社は慶尚北道の亀尾(グミ)キャンパスに「ロボットデータファクトリー」を構築し、既存の生産ラインから得られる工程データを専用の学習システムへ統合する計画だ。

現代のヒューマノイドロボット向けAIであるVLAモデルや世界モデルは、主として実際のロボットの動作データから学習する。具体的には、実際の作業を行うロボットの映像、関節トルクの値、力覚センサーの測定値などだ。シミュレーションデータは豊富に生成できる一方、シミュレーション上で学習したロボットが現実の物理環境ではうまく動作しないことがある。この課題は「Sim-to-Realギャップ」と呼ばれている。サムスンの亀尾工場では、質が高く希少な学習データを、通常の製造活動の副産物として生成できる可能性がある。

亀尾の半導体、スマートフォン、家電の生産ラインに配備されるロボットは、資材の運搬、組み立て、部品の挿入などを行い、その際に得られたセンサーデータがAIの学習へフィードバックされる。学習が進んだロボットはエラーを減らし、安定して稼働することでさらに多くのデータが集まり、そのデータが次の学習に使われる。工場そのものが、継続的な改善を生むフライホイールになるという構想だ。

■Rainbow Roboticsの現在の立ち位置

独立した社内プログラムの存在が報じられたことで、サムスンが公表してきたロボティクス体制の見方も変わってくる。KAIST発の企業であるRainbow Roboticsは、サムスンが2025年3月に35%の持ち分取得を完了して支配権を握った企業であり、これまでは同社における主要なヒューマノイドハードウェア開発の担い手とみられていた。

しかし新たな報道は、これとは異なる組織的な構図を示唆している。Rainbow Roboticsは主軸そのものではなく、社内開発と並行する別の開発経路だという見方だ。同社の車輪型双腕プラットフォーム「RB-Y1」は、Coupangのフルフィルメントセンターで実証運用され、RX部門が改良を重ねるための実用的なハードウェア基盤となっている。一方、非公開の社内プログラムは、これとは別に開発されており、より高度な段階にあると説明されている。サムスンが掲げる「独自のAIおよびソフトウェア技術とRainbow Roboticsの機械ロボティクスに関する専門知識を組み合わせ、インテリジェントヒューマノイドの開発を加速する」という方針も、同社のハードウェア戦略全体ではなく、範囲を限定した特定の協業を示しているように見える。

■RX部門:より大きな計画の「表の顔」

2026年7月21日、TM Roh CEOの直轄組織として設立されたRX部門は、サムスンのロボティクス分野における構想を公式に担う組織であり続けている。現代自動車グループで電動ヒューマノイド「Atlas」と四足歩行ロボット「Spot」の開発を指揮し、2026年5月にサムスンへ採用されたLee Dongkun氏が、同部門の戦略を率いている。また、自律型ロボットの誘導・制御を専門とするソウル大学のHyun-Jin Kim教授と、ロボットハンドおよびマニピュレーションを研究する亜洲大学のEui-Kyum Kim教授もRXチームに加わっている。

同部門の正式な任務は、中長期戦略、コア技術の開発、事業の遂行、米国、中国、日本における研究拠点の構築をカバーする。部門設立の発表当日、サムスンの株価は約7%上昇した。ただし、この発表では、非公開の社内ヒューマノイドプログラムがすでに存在し、業界関係者の説明では韓国内の競合よりも先行していることは明かされなかった。

■競合他社の動向

サムスンが参入する世界のヒューマノイド分野には、すでに300社を超える企業が存在する。主な競合の状況は次の通りだ。

現代自動車グループはBoston Dynamicsと同社の電動ヒューマノイド「Atlas」を傘下に収めている。Atlasの2026年の全生産枠は、現代自動車とGoogle DeepMind向けに割り当てられている。Lee Dongkun氏が現代自動車を離れてサムスンに加わったことは、現代自動車のヒューマノイド戦略を構築した人物を引きつけられるだけのリソースと開発基盤が、サムスンにもあることを示唆する。

Teslaの「Optimus」プログラムは、チップ設計からシャーシまでのエンドツーエンドの垂直統合を進めている。また、学習データを大規模に生成できる、カメラ搭載車両の膨大なフリートを利用できる強みがある。TeslaはAI5ロボットチップをサムスンの米テキサス州テイラーにあるファウンドリーで製造しており、この関係を通じて、サムスンはOptimusのコンピューティングアーキテクチャに関する製造上の知見を得られる立場にある。

Figure AIの「Figure 03」は商用の製造現場に導入されており、2026年半ばまでにBotQ施設で1時間当たり1台を超える生産ペースを達成した。

Unitreeは、中国でヒューマノイドロボットを1台当たり約1万6,000ドル(約254万4,000円、1ドル=159円換算)で出荷している。この価格帯は、中国国内における積極的なアクチュエータのコスト削減と、国家規模のサプライチェーン戦略によって実現したものだ。サムスンが家電用モーター技術を生かして、技術的な比較から想定されるコスト削減を実現できれば、欧米企業に匹敵するエンジニアリング品質を保ちながら、中国企業の価格水準と競争できる可能性がある。

■グループ全体での産業変革と「超格差」戦略

社内ヒューマノイドプログラムは、4つの子会社と3つの都市にまたがるサムスングループ全体の取り組みの中に位置づけられる。サムスン電子とサムスンSDSは、ヒューマノイドロボットの量産とAIを中心とした製造のため、亀尾の拠点に19兆ウォン(約134億ドル、約2兆1,306億円、1ドル=159円換算)を投じる。サムスンSDIは蔚山(ウルサン)工場に16兆ウォン(約113億ドル、約1兆7,967億円、同)を投資し、同社が世界初と説明する、ヒューマノイドロボットと電気自動車向け全固体電池の量産ラインを構築する。サンプルセルはすでに、評価用としてヒューマノイドロボット関連の顧客へ納入されている。サムスン重工業は巨済(コジェ)に10兆ウォン(約71億ドル、約1兆1,289億円、同)を投じ、自律型造船所を建設する。グループがこのロボティクス構想へ投じる総額は、推定60兆ウォン(約424億ドル、約6兆7,416億円、同)に上る。

李在鎔(イ・ジェヨン)会長は、6月29日に青瓦台で開かれた国家ブリーフィングに、サムスングループを代表して出席した。李在明(イ・ジェミョン)大統領とSKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長も出席したこの場で、2026年から2036年までを対象とする国家戦略が発表され、半導体、AIデータセンター、フィジカルAIが3本の柱に指定された。韓国政府はこれとは別に、2028年までに産業特化型ヒューマノイドロボットを商用化し、世界のロボット市場で20%のシェアを獲得する目標を掲げている。

社内の競争原則である「超格差(cho-gyeokcha)」は、競合と少しずつ差を競うのではなく、追いつくことが困難なほど大きな差をつけて先行するという、サムスンの長年の戦略を表す。社内ヒューマノイドプログラム、グループ全体での資本投下、そして開発が高度な段階に入るまで機密にされていたという報道は、いずれもこの原則の表れと読み取れる。サムスンが計画していたのは、秘密のロボット計画そのものを発表することではなく、完成度を高めたうえで明らかにすることだったと考えられる。

ただし、サムスンは社内ヒューマノイドプロジェクトの存在を公式には確認していない。

■注目ポイントQ&A

●サムスンの秘密のヒューマノイドプログラムは、公表されているRX部門やRainbow Roboticsとどう違うのですか?

RX部門は2026年7月21日に設立された、サムスンのロボティクス戦略とAIシステム「Shallow-π」を担う公式組織です。サムスンが35%の持ち分を保有するRainbow Roboticsは、短期的な実証運用や改良のため、既存のハードウェアプラットフォーム「RB-Y1」を提供しています。一方、2026年8月にZDNet Koreaと毎日経済新聞が報じた非公開の社内プログラムは、これらとは別に開発され、公表済みの体制から想定される以上に進んでいると業界関係者は説明しています。Rainbow Roboticsの既存設計ではなく、サムスンの家電用モーター製造技術を応用した独自のアクチュエータを利用しているとされます。2つの開発経路は順番に進むものではなく、並行しているとみられます。

●なぜアクチュエータ技術がヒューマノイドロボットのコストにおいてそれほど重要なのですか?

アクチュエータは、ヒューマノイドロボットを動かすモーター駆動の関節です。ロボットの腕、脚、手、胴体にある各自由度には、少なくとも1つのアクチュエータが必要です。ヒューマノイドロボットの部品表では、最も高価な部品カテゴリーとされています。Interact Analysisの市場調査によると、高機能なヒューマノイドではアクチュエータが材料費の30%以上を占めます。また現代モビスは、Boston DynamicsのAtlas向けアクチュエータ供給について発表した際、60%以上という数字を挙げました。サムスンのように、基盤となるBLDCモーター技術を洗濯機やエアコンなどの家電向けに大規模生産している企業は、専門サプライヤーから調達する競合よりも、ロボット用アクチュエータモーターを低コストで生産できる可能性があります。アクチュエータがロボットの総コストの30~60%を占める場合、そのコストを20%削減できれば、ロボット全体の価格を6~12%引き下げられる計算になります。

●サムスンのロボットAI学習へのアプローチは、TeslaやFigure AIなどの競合とどう違うのですか?

サムスンは、業界で「データフライホイール」と呼ばれる仕組みを構築しようとしています。実際の工場に配備されたロボットが、センサー値、関節トルク、カメラ映像などの実行データを生成し、そのデータによってロボットを制御するAIモデルを継続的に改善する仕組みです。亀尾のロボットデータファクトリーは、半導体、スマートフォン、家電の実際の生産ラインから、このデータを取得するために設計されています。Teslaも同様の考え方を採用し、数百万台の公道走行車両から得られるカメラデータをOptimusの学習に利用しています。Figure AIは、BMWとの提携やカリフォルニア州のBotQ生産施設を通じて、実際のロボットによるデモンストレーションデータを学習に利用しています。サムスンの特徴は、製造領域の幅広さにあります。半導体ウエハーを扱うロボットには、スマートフォンのベゼルを扱うロボットとは異なる巧緻性が求められますが、サムスンの工場はその両方をカバーしています。こうした現実世界の操作データの多様性により、単一分野のデータで学習した場合よりも汎用性の高いロボットを開発できる可能性があります。

●サムスンはいつ秘密のヒューマノイドロボットを公開または導入する予定ですか?

サムスンは、非公開プログラムの発表時期を明らかにしていません。Korea JoongAng Dailyは2026年7月、サムスンが早ければ2026年下半期にも、自社の半導体、スマートフォン、家電の生産ラインへヒューマノイドロボットを導入し始める計画だと報じました。ただし、初期に導入されるロボットが社内プログラムによるものか、Rainbow Roboticsを基盤とするものか、両者を組み合わせたものかは明記されていません。サムスンは、2026年末までにヒューマノイド開発の具体的な進展を示す見通しだとしています。長期目標として掲げる消費者向けヒューマノイドは、工場への導入後に続く位置づけであり、まず製造現場の自動化を進める順序と整合します。業界では、消費者向けヒューマノイドが本格的に普及するのは2030年代初頭より後になるとの見方が一般的です。

元記事: Samsung Secretly Built Humanoid Outside RX Using Home-Appliance Motor Tech

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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