BMW、メキシコ工場で次世代EV「iX3」「i3」を生産へ 関税圧力下でも約1492億円を投資

2026年7月26日 16:40

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記事提供元:Tech Times

BMWは、メキシコのサンルイスポトシ工場で次世代EV「ノイエ・クラッセ」の「iX3」および「i3」を2027年から生産すると発表した。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準を満たさない場合の関税リスクがある中、約9億1000万ドル(約1492億円、1ドル=164円換算)を投じて工場を拡張し、バッテリー組み立てセンターも新設する。米国市場への割り当てや価格は未確定であり、購入検討者は今後のUSMCA見直しの動向を注視する必要がある。

■メキシコ・サンルイスポトシ工場での生産モデルが確定

BMWは、メキシコ中部のサンルイスポトシ工場で2027年からクロスオーバー「iX3」とセダン「i3」の両方を生産することを確認した。これにより、同工場は米州で唯一、BMWの次世代電気自動車(EV)「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」の生産拠点に選ばれたことになる。この発表は、同工場の定礎から10周年の節目に合わせて行われた。BMWは、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たさないメキシコ産車両に対する25%の米通商拡大法232条関税により、年間10億ドル以上のコストが見込まれる状況にある。BMWグループの公式な周年声明で確認された今回の発表は、同社がそうした逆風にもかかわらず計画を推し進めていることを示している。

独立系EV専門メディアの報道によると、今回の拡張に伴う総投資額は8億ユーロ(約9億1000万ドル、約1492億円)に上る。ドルから円への換算は、1ドル=164円として概算した。

BMWは2023年2月の時点で、2027年からメキシコでノイエ・クラッセのEVを生産することを明らかにしていたが、当時は具体的なモデル名を公表していなかった。その不確実性が今週解消された。BMWサンルイスポトシ工場の社長兼CEOであるクラウス・フォン・モルトケ氏は、工場の10周年記念式典において、生産される2モデルがノイエ・クラッセの「i3」セダン(社内コードネーム:NA0)と「iX3」クロスオーバー(同:NA5)であることを明らかにした。式典に関するBMWグループの公式声明で確認されている。

electriveの報道によれば、サンルイスポトシは、ハンガリーのデブレツェン、ドイツのミュンヘン、中国の瀋陽と並び、ノイエ・クラッセ車両を組み立てる世界4カ所のBMW生産拠点の1つとなる。また、BMWの第6世代(Gen6)バッテリーパックの製造拠点として認められた世界5カ所のうちの1つでもある。ノイエ・クラッセの車両組み立てとGen6バッテリーの生産を同一拠点で行うという二重の役割を実現するため、8億ユーロ(約9億1000万ドル)が投じられる。工場は11万平方メートル以上拡張され、そのうち5億ユーロ(約5億6900万ドル、約933億円)以上が、8万平方メートルを超える新たな高電圧バッテリー組み立てセンターに充てられる。

iX3は、デブレツェンでの生産開始から約2年後となる2027年8月に、メキシコでの生産を開始するとみられている。TechTimesの米国購入者向けBMW i3詳細ガイドによると、ミュンヘンで2026年8月に生産が始まる予定のi3セダンも、その後サンルイスポトシで生産される見込みだ。両モデルは、生産立ち上げ期間中、既存の内燃機関車と拡張後の組み立てラインを共有する。

■ノイエ・クラッセ「iX3」および「i3」とは何か

ノイエ・クラッセのプラットフォームに馴染みのない購入者に向けて説明すると、これらは従来のBMW製EVを改良したモデルではない。BMWグループのノイエ・クラッセ・プラットフォーム概要で詳しく説明されている通り、バッテリー式電気自動車専用に設計された全く新しいアーキテクチャを採用しており、BMWの現行の内燃機関車やハイブリッド車のプラットフォームとは部品を共有しない。

2025年9月のIAAモビリティで発表され、同年後半にデブレツェンで生産が始まったiX3は、大半の購入者が実車に乗ったことがない段階にもかかわらず、すでに欧州で5万件以上の注文を集めている。これは潜在需要の大きさを示すものだ。米国では、iX3 50 xDriveの現在の開始価格は6万1500ドル(約1009万円、1ドル=164円換算)で、デブレツェンから供給されている。BMWは、将来メキシコで生産されるiX3を米国市場に割り当てるかどうかをまだ確認していない。米国の購入者は、少なくともサンルイスポトシでの生産立ち上げ初期までは、デブレツェン工場が米国向け車両の供給元となる点に留意すべきである。

ノイエ・クラッセの第2弾モデルであるi3セダンは、2010年代に販売されていた旧型i3ハッチバックとは別のモデルだ。TechTimesのBMW i3購入者ガイドによると、2026年6月に欧州で注文受付を開始し、英国での開始価格は5万7905ポンドに設定された。BMWは米国で2027年モデルとして投入することを確認しているが、米国での公式価格は発表していない。

■BMWのメキシコ投資が事実上後戻りしにくい理由

バッテリーセンターへの投資規模は付随的なものではない。一般的な製造コストの問題を超えた、技術上の要件を反映している。BMW BlogによるGen6アーキテクチャの技術解説によると、ノイエ・クラッセのGen6バッテリーは車体構造そのものに統合されている。バッテリーハウジングは車両シャシーの荷重を支える構造部材として機能し、円筒形セルは完成したバッテリーパックとして生産ラインの最終段階でボルト留めされるのではなく、車体組み立ての段階でハウジングに直接組み込まれる。

electriveの報道によれば、この構造こそが、デブレツェン、ミュンヘン、瀋陽、スパータンバーグ(将来のモデル向け)、サンルイスポトシという世界5カ所のみがGen6バッテリーの製造拠点とされている理由である。併設され、車両生産と同期するバッテリー組み立てセンターなしに、工場はノイエ・クラッセ車両を生産できない。5億ユーロ(約5億6900万ドル)のバッテリーセンターは、任意の付帯設備ではなく、車両を製造するための技術上の前提条件である。このセンターが稼働すれば、関税環境にかかわらず、計画を撤回するコストは計画を続行するコストを上回ることになる。

BMWグループの公式な周年声明によると、フォン・モルトケ氏は記念式典で関税を巡る環境に直接言及し、「自動車産業が絶えず変化する中でも、われわれのメッセージは明確だ。われわれは引き続きメキシコを信頼し、サンルイスポトシを信頼し、共に築く未来に投資し続ける」と述べた。

その自信には、こうした外交的な表現であえて明示するまでもない技術的な裏付けがある。

■Gen6バッテリー:米州の購入者が知っておくべきこと

第6世代のeDriveシステムは、BMWが2013年にi3ハッチバックを導入して以来、同社のEVに加えた最も重要な技術変更である。BMWグループのGen6技術文書で詳述されている、従来のBMW製EVのアーキテクチャとの主な違いは以下の通りだ。

BMWは、角柱型のリチウムイオンセルから、4695形式(直径46mm、高さ95mm)の円筒形セルに切り替えた。batterydesign.netのバッテリー技術分析によると、新しいセルはGen5の角柱型セルと比べてエネルギー密度が約20%高く、同等の容量ではバッテリーパックの重量を約60〜70kg軽減できる。iX3には82.7kWhと108.7kWhのバッテリーパックが用意されている。

システム電圧は800ボルトに引き上げられ、最大400キロワットの直流急速充電が可能になる。最適な条件下では、約10分の充電で350km以上の航続距離を追加できる性能だ。BMWの米国向け公式価格・仕様発表によると、対応する充電設備では、バッテリー残量10%から80%までの充電に約21分かかる。iX3 50 xDriveのEPA認定航続距離は最大434マイル(約698km)であることが確認されており、プレミアムクロスオーバー分野では航続距離が比較的長いEVの1つとなっている。

BMWグループのGen6技術文書によれば、このプラットフォームは双方向充電(V2H、V2G、V2L)にも標準対応する。これにより、ノイエ・クラッセの車両を家庭用の非常用電源として利用したり、外部機器に電力を供給したりできる。

■メキシコ工場とデブレツェン、ミュンヘン工場の比較

サンルイスポトシ工場は、典型的な低コストの委託生産施設とは異なる生産実績を持つ。BMWグループの公式な周年声明によると、同工場は2019年に操業を開始して以来、3シリーズ、2シリーズ クーペ、高性能モデルのM2を含む55万台以上の車両を生産してきた。2シリーズ クーペとM2は、世界市場向けの全量がメキシコで組み立てられている。同拠点への累積投資額は20億ドルに近づいている。工場は現在約3700人を雇用しており、ノイエ・クラッセ向けの拡張によって約1000人の雇用が創出され、そのうち500人以上が新しいバッテリー組み立てセンターに配置される。

BMWBlogのサンルイスポトシ生産計画に関する報道によると、ノイエ・クラッセ生産の2年目までに、バッテリー施設は2シフト制で年間約14万個のGen6バッテリーパックを生産する見込みだ。生産立ち上げが完了すると、同工場におけるノイエ・クラッセ車両の年間生産能力は約17万5000台に達すると予測されている。

BMW初のEV専用施設として建設されたハンガリーのデブレツェン工場は、2025年後半にノイエ・クラッセの生産を開始し、現在は欧州および米国市場向けiX3の唯一の供給元となっている。BMWの歴史的な中核拠点であるミュンヘンの本工場は、2026年8月からi3セダンの生産を開始し、2027年までにEV専用工場となる予定だ。中国の瀋陽工場は、ブリリアンス・オート(華晨汽車)との提携によってノイエ・クラッセの派生モデルを生産し、中国国内のEV市場に供給する。サンルイスポトシは、これらの拠点のうち西半球で唯一の工場である。

■関税の逆風と米国の購入者が注視すべきUSMCAの動向

BMWは、関税関連のコストが10億ドルを超えると報告または予測している自動車メーカーの1社である。CalcMyTariffが公開した関税ガイダンスによると、USMCAが定める北米産部材比率75%の基準を満たさないメキシコ産車両に対し、25%の米通商拡大法232条関税が2025年4月に発効した。メキシコから米国への自動車輸出台数は、2026年1〜4月に前年同期比5.1%減少しており、これは同関税制度の直接的な影響とされている。

協定発効後初となるUSMCAの共同見直しが2026年7月時点で進行中であり、メキシコと米国は未解決の争点を54件から14件に絞り込んだと報じられている。BMWにとって重要なのは、メキシコで生産されるノイエ・クラッセ車両がUSMCAに基づく無関税措置の対象となるかどうかだ。これは、Gen6バッテリーのサプライチェーンが、75%の基準を満たせるだけの北米産部材を調達できるかどうかに左右される。BMWは、ノイエ・クラッセをUSMCAに適合させる具体的な計画を明らかにしていない。工場のバッテリーセンターがまだ建設中であることを踏まえると、適合の可否が判明するのは12〜18カ月後になる可能性が高い。

BMWのグローバルな輸出戦略は、米国固有の関税リスクをある程度緩和する。サンルイスポトシ工場は当初から、米国中心の生産拠点ではなく、世界市場向けの輸出拠点として構想されていた。モデルイヤーや車種によるものの、現在のサンルイスポトシ工場の生産量の30〜42%が米国向けである。一方、一部のモデルでは最大40%が中国向けで、現在これに該当するのは2シリーズ クーペとM2だ。残りは欧州、中東、ラテンアメリカ、アジア太平洋地域へ輸出される。メキシコは広範な自由貿易協定のネットワークを通じ、これらの市場にアクセスできる。この輸出先の多様化により、BMWのメキシコ投資の採算性はUSMCA見直しの結果だけに左右されるわけではない。

■メキシコの自動車産業が得るもの

BMWグループの公式な周年発表によると、メキシコ中部のサンルイスポトシ州では、BMWが進出した2016年以降、輸出が推定1600%増加した。サンルイスポトシ工場は、メキシコのプレミアム自動車生産拠点として初めて、また北米のBMW工場として初めて、完全電気自動車とそのバッテリーシステムを同一拠点で生産することになる。この節目は、BMW自身のサプライチェーンを超える意味を持つ。自動車産業の地理的な重心が急速に変化する中、メキシコがEV生産の有力な担い手として位置付けられるためだ。

この発表は、より広範なニアショアリングの流れを示す一例でもある。パンデミック期のサプライチェーン混乱は、単一の生産地域に過度に依存するリスクを浮き彫りにした。electriveによる世界のノイエ・クラッセ生産ネットワークに関する報道が示すように、ノイエ・クラッセの生産をハンガリー、ドイツ、中国、メキシコに分散させるBMWの決定は、そうした脆弱性への明確な備えである。USMCA見直しで自動車産業の競争力維持を主要な交渉課題とするメキシコ政府にとって、BMWの発表は将来に向けた投資のシグナルであり、交渉上の立場を強める材料となる。

■注目ポイントQ&A

●メキシコで生産されるBMW iX3とi3は米国で販売されますか?

BMWは、メキシコで生産されるノイエ・クラッセ車両を米国市場に割り当てるかどうかをまだ確認していません。2026年7月現在、米国で販売されるiX3は、ハンガリーのデブレツェン工場で生産されています。メキシコでの生産は2027年半ばから後半に始まる予定です。メキシコ産車両の米国への納車時期は、生産立ち上げの進捗と、進行中のUSMCA共同見直しの結果に左右されます。この見直しは、対象車両が無関税で米国に輸入されるか、25%の米通商拡大法232条関税の対象となるかに影響します。

●BMWの第6世代(Gen6)バッテリーは、従来のBMWのEVバッテリーとどう違うのですか?

Gen6システムでは、従来の角柱型リチウムイオンセルに代えて4695形式の円筒形セルを採用しています。セルレベルのエネルギー密度は約20%高まり、システム電圧も従来の400ボルトから800ボルトに引き上げられています。最も重要な技術変更は、その構造です。Gen6のバッテリーハウジングは車体構造に直接統合され、セルは完成したバッテリーパックとして後から取り付けるのではなく、車体組み立ての段階で組み込まれます。BMWグループのGen6技術文書によると、これにより重量を軽減し、搭載スペースを効率化できますが、従来とは根本的に異なる生産設備が必要です。このため、世界で5カ所の拠点のみがGen6バッテリーを生産します。

●なぜBMWのメキシコ工場は、iX3とi3を製造するために5億6900万ドルのバッテリーセンターを必要とするのですか?

Gen6バッテリーは、車両とは別の拠点で完成品として製造し、組み立てラインへ運ぶ方式を採れないためです。バッテリーハウジングが車体構造の一部となっており、セルは車体組み立ての段階でハウジングに組み込まれなければなりません。このため、バッテリーセンターは車体組み立て施設に隣接し、その工程と同期して稼働する必要があります。BMWによる総額8億ユーロ(約9億1000万ドル)の拡張投資のうち、5億ユーロ(約5億6900万ドル)が新しい高電圧バッテリー組み立て施設に充てられるのはこのためです。batterydesign.netによる構造統合の技術分析が説明する通り、このセンターを持たない工場ではノイエ・クラッセ車両を生産できません。

●2026年のUSMCA見直しは、BMWのEVを検討している購入者にとって何を意味しますか?

協定発効後初となるUSMCAの共同見直しは、2026年7月時点で進行中です。その結果は、メキシコ産車両が引き続き無関税で米国市場に入れるか、USMCAの基準を満たさない製品として25%の米通商拡大法232条関税の対象となるかに影響します。CalcMyTariffの関税ガイダンスとベイカー研究所のUSMCA戦略分析によると、仮にメキシコで生産された6万5000ドルのBMW iX3に25%の関税が課されれば、追加コストは1万6250ドル(約267万円、1ドル=164円換算)となります。このコストはBMWの利益率を圧迫するか、車両価格を通じて購入者に転嫁される可能性があります。BMWはメキシコ産ノイエ・クラッセモデルの価格を発表しておらず、米国市場への割り当ても確認していません。2027年にノイエ・クラッセの購入を検討している人は、USMCA見直しの動向を注視する必要があります。その結果が、メキシコで生産されたBMW車両の米国での価格を直接左右する可能性があるためです。

元記事: BMW Names iX3 and i3 for Mexico Plant: $910M Bet Defies Tariff Pressure on Americas EV Future

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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