Nvidia製AIチップの米国輸入額、2025年にPC・スマホ合計を上回る メモリ不足で消費者向け機器にしわ寄せ

2026年7月26日 09:16

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記事提供元:Tech Times

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AIデータセンター向けの半導体需要が、消費者向け機器の供給と価格にまで影響を広げている。SemiWikiに2026年7月23日付で掲載されたSemiconductor IntelligenceのBill Jewell氏の分析によると、2025年のNvidia製AIプロセッサーの米国輸入額は、スマートフォンとPCの合計輸入額を上回った。IDCや各社の決算説明によれば、足元のPC・スマートフォン出荷減は需要低迷よりもメモリの供給制約による色合いが強く、価格面の正常化も短期では見込みにくい。

■AI向け半導体が消費者向け機器を輸入額で逆転

22日に公表された世界の貿易データには、消費者向け電子機器市場の見方を変える数字が含まれていた。SemiWikiに2026年7月23日付で掲載されたSemiconductor IntelligenceのBill Jewell氏の分析によると、米国税関の輸入分類「HTS 847150」で追跡されるNvidiaのAIプロセッサーは、2025年に1650億ドル(約27兆600億円、1ドル=164円換算)に達した。これは同年のスマートフォンとPCの米国輸入額合計1090億ドル(約17兆8760億円)を上回る規模だ。

実際に人々が使うノートPCやスマートフォンよりも、データセンターを支えるAIチップのほうが、どの製品が優先的に生産・出荷されるかという序列で上位に来ていることになる。Jewell氏が分析したIDCデータによれば、この逆転を背景に、2026年第2四半期のPC世界出荷台数は前年同期比4.9%減、スマートフォンは6.7%減となった。

■PCとスマートフォンの減少は需要不足ではない

この減少は需要の問題を示しているわけではない。Jewell氏が決算説明資料や説明会の記録を分析したところ、米国市場の主要PCメーカー3社は直近の決算でそろって供給制約に言及している。Appleは2026年3月終了四半期のForm 10-Qで、先端半導体、NAND、DRAMの供給制約に直面していると説明した。HPは4月終了四半期の決算で、第2四半期にメモリとストレージのコストが前四半期比で上昇し、その傾向は2026年後半も続く見通しだと述べた。Dellは5月終了四半期の決算で、2026年後半に供給制約があると認め、需要の問題ではないと明言した。

企業向けに数百万台規模のノートPCを販売する企業が、問題は需要ではないと明言する以上、購入を希望する消費者が必要な構成の製品を見つけられない状況が起きていることを意味する。IDCは2026年通年で、PCが11.3%減、スマートフォンが13.9%減になると予測している。どちらの分野も2024年と2025年には成長していただけに、これは誤差の範囲ではない。端末の製造に必要な半導体が別の用途へ振り向けられた結果、生産されない端末が数千万台に上ることを意味する。

■HBMへの転換が供給制約の中核にある

不足の仕組みは具体的で、裏付けもある。HBM(高帯域幅メモリ)は、DRAMを3次元に積層したメモリで、NvidiaのAIアクセラレーターではプロセッサーのすぐ隣に搭載される。一方、スマートフォンに使われる低消費電力のモバイルDRAMも、同じ3社が、同じ製造拠点で、同じシリコンウエハーを使って生産している。Samsung Electronics、SK hynix、Micron Technologyの3社で、世界のDRAM生産の95%超を占める。

2024年以降、この3社は製造能力を体系的にHBMへ振り向け始めた。理由は採算性にある。HBMは標準的な消費者向けDRAMに比べ、ウエハー1枚当たりの売上が約3~5倍になる。しかもHBMは従来型DRAMより製造効率が低い。TSV(Through-Silicon Via、シリコン貫通電極)技術を使って最大16枚のDRAMダイを積層し、さらにGPUダイと接続する高度なパッケージングが必要なため、利用可能なメモリ容量1ビット当たりで見ると、HBMは従来のDDR5やLPDDR5Xの約3~4倍の製造能力を消費する。Micronは3対1の転換比率を公表しており、HBM用ウエハー1枚の生産は、事実上、従来型DRAM用ウエハー3枚分の生産を置き換えることを意味する。

実際には、AIアクセラレーター1個によって、スマートフォン約3台分に相当するメモリ製造能力が消費者向けに使えなくなる計算だ。IDCの分析によれば、2026年半ばまでにAIデータセンターは世界で生産される全メモリチップの約70%を消費しており、2022年時点の20~30%から大きく上昇した。これは循環的な変動ではなく、構造的な再配分だ。

■規模の大きいPCメーカーほど有利になっている

2026年第2四半期のデータは、これまでの消費者向け電子機器の不況局面とは異なるパターンを示している。需要減退なら在庫が積み上がり、価格は軟化し、メーカーは自発的に減産する。今回見えているのはその逆だ。

Appleは2026年初めにMacBookとiPadを値上げし、半導体不足によるコスト増を認めた一方で、第2四半期のPC出荷台数は前年同期比10.1%増となった。世界PC出荷に占めるシェアはほぼ10%まで上がり、第2四半期としては同社史上最高となった。TechTimesの報道では、この例外的な強さはサプライチェーン管理によるものとされている。AppleはDRAMとNANDの契約を12~24カ月前から確保しており、プレミアム製品では部材コスト全体に占めるメモリの比率も低価格帯の製品より小さい。

一方、上位3社ではHPの落ち込みが最も大きく、出荷台数1300万台で前年同期比9.0%減だった。Dellは930万台で5.0%減、Lenovoは2.1%減ながら1660万台で世界首位を維持した。いずれもIDCの「Worldwide Quarterly Personal Computing Device Tracker」2026年第2四半期版の数字だ。

TechTimesが伝えたIDCのJean-Philippe Bouchard氏の見方では、供給制約下では規模が大きいベンダーほど購買力と長年の調達関係を生かし、小規模な競合からシェアを奪いやすい。「Other」に分類される中小ブランド群が10.5%減となったことは、その構図を端的に示している。

■HTS 847150がAIインフラ支出の実勢を映す

Jewell氏の分析で最も目を引くのは、米国税関の輸入分類「HTS 847150」だ。これは完成したコンピューターシステムではなく、入力装置や出力装置を含まないデジタル処理装置を対象とする分類で、貿易統計上ではNvidiaのAIプロセッサーがここに表れる。

数字は明確だ。HTS 847150の輸入額は2023年の370億ドル(約6兆680億円、1ドル=164円換算)から、2025年には1650億ドル(約27兆600億円)へ拡大した。2025年の1650億ドルは、スマートフォンとPCの米国輸入額合計1090億ドルより51%大きい。輸入元の内訳もNvidiaの供給網を直接示しており、49%がメキシコ、42%が台湾からだった。

NvidiaのAIプロセッサーは台湾でTSMCが製造し、Foxconnがメキシコの工場でモジュール化する。Foxconnは、NvidiaのGB200サーバーシステム向けに9億ドル(約1476億円、1ドル=164円換算)の組立工場も運営している。輸入企業はそのモジュールを購入し、自社でメモリ、ストレージ、ネットワーク機器を加えてAIサーバーを構築する。台湾のTSMCからメキシコのFoxconnを経て、米国のハイパースケーラーのデータセンターへ向かうこの供給網は、金額ベースで見れば米国のスマートフォンとPCの輸入額合計をすでに上回っている。

HTS 847150の輸入増加率は、Nvidia自身の売上高の伸びとも近い軌道を描く。2023年から2025年にかけて輸入額は4倍超に増え、同期間のNvidiaの売上高も約3.5倍に伸びた。この相関は偶然ではなく、HTS 847150が米国のAIインフラ支出をほぼリアルタイムで映す貿易台帳として機能していることを裏付けている。

■組立地は移っても、半導体の製造地はすぐには変わらない

Jewell氏の分析が示す構造変化は、供給制約だけではない。関税や通商政策の圧力の下で、世界の消費者向け機器の組立地がどこへ移っているかもデータに表れている。

PCでは変化が際立つ。2022年には米国のPC輸入額の92%を中国が占めていたが、2025年には19%まで低下し、ベトナムが60%を担うようになった。HP、Lenovo、Apple、ASUS、Quantaなど大手PCメーカーは、中国からベトナムやその他の国へPC生産を移してきた。

スマートフォンでも同様の流れがあり、最大の受益国としてインドが浮上している。中国の米国スマートフォン輸入額に占める割合は2022年の79%から2025年には40%へ下がり、インドは2%から39%へ上昇した。2026年最初の5カ月では、インドからのスマートフォン輸入額は中国からの輸入額の2倍超に達した。Apple、Samsung、Xiaomi、OPPO、vivoはいずれもインドで生産している。

ただし、ここでは重要な区別がある。中国からベトナムやインドへの移転は、部品を完成品に組み立てる最終工程の話であり、重要な半導体がどこで作られているかは変えていない。DRAM、NAND、ロジック半導体の製造は、引き続き台湾のTSMCや韓国のSamsung、SK hynixに集中している。関税政策は組立作業の場所を変えられても、半導体工場を短期間で移すことはできない。

■供給緩和は数年先、価格は元に戻らない可能性がある

厳しい見方をすれば、不足そのものの緩和にはなお2年以上かかり、価格が不足前の水準に戻るとは限らない。SamsungとMicronはいずれも設備投資を前年の2倍に増やしているが、意味のある規模のメモリ増産には年単位の時間が必要だ。TechTimesの過去の報道によれば、Samsungの平沢P5工場が量産段階に入るのは2030年ごろと見込まれ、SK hynixのM15X工場は最初のクリーンルーム段階を2027年第1四半期に迎えることを目指している。Micronの米アイダホ州のID1新工場も2027年より前の稼働は見込まれておらず、十分な量産歩留まりに達するには、その後さらに数年を要する見通しだ。SemiWikiに2026年7月23日付で掲載されたJewell氏の評価では、メモリ生産能力の増強とAI需要の伸びの鈍化が組み合わさって解消に向かうとしても、おそらく少なくとも2年はかかる。

Gartnerは2026年末までにメモリ価格が約130%上昇し、その結果、PC価格は2025年比で17%、スマートフォン価格は13%上がると予測している。Gartnerのシニアディレクターアナリスト、Ranjit Atwal氏は、500ドル未満(約8万2000円、1ドル=164円換算)のエントリーPC市場は2028年までに消滅すると結論づけた。メモリがPCの総部材費に占める割合が2025年の16%から23%へ上がり、利益率の低い製品構成ではベンダーがコスト増を吸収できなくなるためだ。

IntelのCEO、Lip-Bu Tan氏は2026年2月のCisco Systemsの会議で、メモリ業界の主要企業との直接の会話を踏まえ、「2028年まで緩和はない」と率直に述べた。SK Groupの崔泰源会長も、今後数年は供給が需要に追いつかない可能性があると別途警告している。

より根深い問題は、いつ緩和するかだけではなく、この市場での「緩和」が何を意味するかにある。2027年や2028年に新工場の生産能力が立ち上がったとしても、Samsung、SK hynix、Micronは、そもそも再配分を進めたのと同じ経済合理性に直面する。HBMは消費者向けDRAMよりウエハー当たり3~5倍の売上を生む。長期契約を結んだハイパースケーラー向けのHBMを作るのか、スマートフォンメーカー向けのLPDDR5Xを作るのかという選択では、どちらが収益を最大化するかは明白だ。新たな生産能力は「選べる余地」を取り戻すだけで、どちらの選択肢がウエハー当たりの収益を最大化するかという損得勘定そのものを変えるわけではない。

IDCは現在の再配分を「恒久化する可能性がある」と表現している。これは一時的なボトルネックではなく、構造的な再編だ。複数の調査会社のアナリストも、不足は2028年以降まで続くと予測している。買い手にとって重要なのは、これが循環的な不足か、構造的な再配分かという違いだ。循環的な不足なら、待てば価格低下の恩恵を受けられる。構造的な再配分なら、待つことは、今日買える製品より機能が少ないかもしれない端末を、より高い価格で買うことを意味しかねない。

■今買うべきか、待つべきか

Gartnerは、価格上昇への対応としてPCの買い替えサイクルが法人で15%、個人で20%長期化すると見込んでいる。つまり、多くの人にとっては既存のハードウェアをより長く使う判断が合理的になる。同等の仕様に17%高い価格を払うことになるなら、十分に筋の通った選択だ。

ただし、近い時期に新しい端末が必要なら、Gartner、IDC、独立系の小売アナリストの見解はおおむね一致している。500ドル未満(約8万2000円、1ドル=164円換算)のPCと400ドル未満(約6万5600円、同)のスマートフォンでは、値下がりを待つより早めに買うほうが金銭面で有利だ。現在店頭にある端末は、価格上昇の影響が市場全体に及ぶ前に結ばれたメモリ調達契約に基づいて製造されている。一方、2026年後半から2027年にかけて登場する製品には、現在サプライチェーンに波及している高い部材価格が反映されると、Gartnerの2026年2月の分析は示している。

eMarketerでテクノロジー分野を担当するアナリストのGadjo Sevilla氏は、この環境ではメーカーなどが品質を保証する認定整備済み製品の市場が、例外的に割安な選択肢になると指摘した。2024年と2025年初めの端末は、不足前のメモリコスト構造を引き継いでおり、2026年の新品より価格当たりの仕様が優れる場合が多いという。

輸入統計、出荷データ、決算開示を合わせて見えてくるのは、AIスーパーサイクルが抽象的に半導体市場を変えているのではないということだ。世界で最も重要な半導体が、消費者の使う機器からハイパースケールデータセンターのラックへと物理的に振り向けられ、その影響が電子機器市場全体に定量的かつ具体的な形で表れている。現在得られる証拠の範囲では、市場が自然に2025年の価格へ戻ると見込んで待つのは、この変化の構造的な性質を取り違えた判断になりかねない。

■注目ポイントQ&A

●なぜNvidiaのAIチップ輸入額がPCとスマートフォンの合計を上回るのですか?

AIデータセンターが世界の半導体製造能力をかつてない規模で消費しているためです。Semiconductor Intelligenceが分析した米国税関データでは、台湾でTSMCが製造し、メキシコでFoxconnがモジュール化したNvidiaのAIプロセッサーは、2025年の米国輸入額で1650億ドルに達しました。スマートフォンとPCの合計1090億ドルを上回ります。Microsoft、Amazon、Google、MetaなどのハイパースケーラーによるAIインフラへの支出を背景に、AIチップ関連の輸入額は2023年から4倍超に増えた一方、消費者向け機器の貿易額は縮小しました。Samsung、SK hynix、Micronは消費者向けDRAMとAIチップ向けHBMの両方を生産しており、ウエハー当たりの売上が3~5倍高いHBMへ生産能力を振り向けていることも背景にあります。

●2027年や2028年に新工場が稼働すれば、メモリ価格は2025年水準に戻りますか?

完全には戻らない可能性が高く、低価格帯の製品ではまったく戻らない可能性もあります。新たな生産能力が立ち上がっても、DRAM生産の95%超を握る3社は、AIデータセンター向けHBMと消費者向けDRAMのどちらが収益性に優れるかという同じ判断に直面します。IDCは現在の再配分を「恒久化する可能性がある」と表現しており、Gartnerも不足解消後の価格が2025年を上回る状態が続くと予測しています。GartnerのRanjit Atwal氏は、メモリがPCの総部材費に占める割合が2025年の16%から23%へ上昇することを背景に、500ドル未満のPC市場が2028年までに消滅すると予測しています。

●PCやスマートフォンは今買うべきですか、それとも値下がりを待つべきですか?

500ドル未満のPCと400ドル未満のスマートフォンでは、現時点の証拠に基づけば、早めに購入するほうが金銭面で有利です。現在流通している端末には、価格高騰前の契約で調達したメモリが使われていますが、2026年後半から2027年に登場する新製品では、高い部材コストが販売価格の上昇や仕様の引き下げにつながるとみられます。Gartnerは、PC価格が2026年末までに2025年比で17%上昇すると予測しています。近い時期に新しい端末が必要ないなら、既存機器の使用期間を延ばす判断も合理的です。CNNが伝えたeMarketerのGadjo Sevilla氏の見方では、特に2024年や2025年初めの認定整備済み製品も、価格当たりの仕様に優れた選択肢になります。

●中国からベトナムやインドへの移転で、端末の供給不足は解消しますか?

変わるのは主に組立地であり、重要部品の製造地ではありません。PCの最終組立は中国からベトナムへ、スマートフォンは中国からインドへ移っていますが、DRAM、NAND、ロジック半導体は引き続き台湾や韓国の工場に集中しています。関税政策によって組立地を変えることはできても、短期間でDRAMウエハーの生産能力を増やすことはできません。このため、組立地の変更だけでは消費者向け製品に回せるメモリ生産能力は増えず、供給不足の解消にはつながりません。

元記事: AI Chip Imports Eclipse PC and Phone Shipments as Memory Shortage Squeezes Consumers

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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