世界の半導体競争、4つの戦略に分岐 米国は2650億ドル投資後も先端パッケージングに空白

2026年7月26日 09:13

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TSMCのアリゾナ投資拡大で米国内の先端製造能力は大きく前進したが、AIチップを出荷可能な製品に仕上げる先端パッケージングは、なお台湾依存が続く見通しだ。Semiconductor Engineeringの分析によると、この空白は少なくとも今後2年程度残る。2026年7月時点で、各国・地域の半導体戦略は、単独の国では完全に掌握できないサプライチェーンの異なる層に賭ける4つの方向へ分かれている。

■米国は前工程を増強した一方、仕上げ工程が埋まっていない

TSMCがアリゾナ州への投資総額を2650億ドル(約43兆4600億円、1ドル=164円換算)に拡大し、現地の先端パッケージング専用能力も発表してから約1週間後、Semiconductor Engineeringの新たな分析は、その発表が同時に確認した現実を浮き彫りにした。米国は前例のない規模の投資を進めているものの、AIチップを国内だけで完成させることは、なおできていない。

TSMCのフェニックス工場で作られるアクセラレーターは、出荷前にいったん台湾へ送られ、CoWoSパッケージングを受ける。こうした状況は少なくとも今後2年は続く見通しだ。2026年7月時点の世界の半導体競争では、単独の国で供給網全体を完全に握ることができないなか、各国はサプライチェーンの異なる層に賭ける4つの戦略へと分岐している。

CHIPS法による530億ドルの直接支援と税額控除は、米国内の半導体ウエハー製造能力の大幅な拡大を後押しした。象徴的な存在はフェニックス近郊のTSMC Fab 21で、第1期は4nm生産で約92%の歩留まりに達したとされる。ある報告では、台湾にあるTSMCの同等施設をやや上回る水準だった。3nm生産を目指す第2期は2026年4月に建設を終え、2026年第3四半期に装置の搬入を開始した。量産開始は2027年へ前倒しされている。

TSMCのCEO、魏哲家氏が7月16日に台北で開かれた2026年第2四半期決算説明会で発表した内容を受け、同社の米国向け投資総額は、計画中の12施設を合わせて2650億ドルに達した。これは米国史上最大の対内直接投資となる。

ただし、この投資規模の大きさが見えにくくしている構造的な空白がある。TSMCは現在、先端的なフェニックス工場で製造したチップを含め、事実上すべてのチップを台湾へ送り、パッケージングしている。ボトルネックはCoWoSにある。CoWoSはChip on Wafer on Substrateの略で、市場に出ている主要なAIアクセラレーターが、出荷可能な製品として機能するために必要とする2.5D先端パッケージング工程である。

■CoWoSは何をしているのか、なぜ米国にはまだ十分ないのか

CoWoSはウエハー製造の改良版ではない。別個の製造工程であり、GPUや専用AIアクセラレーターなどのロジックダイを、複数のHBM(広帯域メモリー)スタックとともにシリコンインターポーザー上へ実装する。インターポーザーは高密度の金属配線とTSV(シリコン貫通電極)を備えた薄いシリコン基板で、従来の回路基板では物理的に実現できない速度と帯域で、部品間のデータをやり取りさせる。

NVIDIAのH100、H200、Blackwell世代GPU、AMDのMI300シリーズはいずれもCoWoSパッケージで出荷される。これがなければ、製造済みのAIチップダイは販売可能な製品にならない。

TrendForceのデータによると、TSMCのCoWoS生産能力は2026年末までに月間12万〜14万枚のウエハー投入規模へ拡大する方向にあり、2024年後半比でおよそ4倍となる見込みだ。2022年から2027年までの年平均成長率は80%を超える。それでも需要は供給を上回っている。魏氏は2026年第2四半期決算説明会で、CoWoSが引き続き生産能力をすべて予約済みの状態にあり、現在のリードタイムは1年を超えていると公に認めた。

アリゾナでは先端パッケージング施設の計画も進む。TSMCは2026年7月16日の投資表明の一環として、CoWoS専用の生産能力を設ける計画を発表した。さらにAmkor TechnologyはApple、NVIDIAと連携し、アリゾナ施設で2028年初めの生産開始を目標にしている。TSMC自身のアリゾナでのパッケージング事業は、2029年の稼働を目標としている。

示唆は明確だ。米国の半導体主権における最も重要な空白は、CHIPS法で数百億ドル規模の投資が進んだウエハー製造ではなく、パッケージングにある。AIチップを供給するうえで同じく不可欠な仕上げ工程が、これまで国内半導体戦略の後景に置かれてきた。

EUでも似た構図が見える。欧州会計監査院は2025年のEU Chips Actに関する特別報告で、Pillar IとIIの下でウエハー工場への資金投入が急がれる一方、サプライチェーンにおける実際のAI向けボトルネックである先端パッケージングには、構造的な注意が比較的向けられなかったと指摘した。パッケージングの盲点は米国固有ではなく、西側諸国の半導体主権政策に共通する失敗である。

■英国は巨大投資ではなく、設計IPに狙いを定める

ワシントンが大規模かつ広範囲に動いたのに対し、ロンドンは対象を絞った慎重な戦略を取っている。

2026年6月8日にロンドン・テック・ウィークでテクノロジー担当相のLiz Kendall氏が発表したAI Hardware Planは、AIを支えるチップや半導体技術を開発する英国企業を支援するとともに、新たなアイデアを英国で製品と質の高い雇用へ結び付けるため、科学者、エンジニア、技術者へ投資する方針を打ち出した。中核はエディンバラ大学に建設する7億5000万ポンド(約9億9900万ドル、約1638億3600万円)の国家AIスーパーコンピューターで、2030年の稼働を目標とする。このうち4億ポンド(約5億3300万ドル、約874億1200万円)が次世代AIチップ向けに充てられる。さらに1億2000万ポンド(約1億6000万ドル、約262億4000万円)のAI Hardware Innovation Programmeで、先端半導体技術を開発するスタートアップを支援し、研究から商用展開への移行を後押しする。

この戦略は、フルスタックを国内で再構築する考え方を、明示的かつ合理的に退けている。工場は1カ所でも200億ドル超を要する場合があり、立ち上げにも年単位を要するため、中規模経済にとって完全な国内半導体産業の再構築は、資本の使い方として現実的ではない。その代わり、英国は設計IPに注力している。英国のCouncil for Science and Technologyの分析は、AIを支える複数の半導体技術分野で、英国に差別化された強みがあると結論づけている。その一つがArmの本拠地であることだ。Armのアーキテクチャーは最先端のAIチップの多くに採用され、同社は現在、エージェント型AI向けの自社CPUチップも手がけている。

Kendall氏は、ハードウェア競争はすでに米国と台湾が勝ったという見方を受け入れない姿勢を示している。英国は製造量ではなく、その上位層にある設計IPとアーキテクチャーの分野で勝者になれる可能性がある、という位置づけだ。そこは半導体技術スタックの中でも、最も高い利益率を生み出す部分である。

人材育成も明示的に組み込まれている。Semiconductor skills programは4800万ポンド(約6400万ドル、約104億9600万円)へ拡大され、学部生向け奨学金の対象は2025〜26年度の300人から、2026〜27年度は400人、2027〜28年度は500人へ増える。加えて、1200万ポンド(約1600万ドル、約26億2400万円)を投じ、新たなCentre for Doctoral Training in Chip Designも設ける。

もっとも、アナリストが指摘するように、実行面では当面、英国以外で製造されたハードウェアへの依存が残る。ケンブリッジのDAWNスーパーコンピューターの増強にはAMDのチップが使われ、最近のNebiusの導入にはNVIDIA製ハードウェアが用いられている。計算資源の整備と、その基盤となる技術スタックのIPを実質的に保有することは別の課題であり、この計画はまだ両者の隔たりを完全には埋めていない。

■EUは数量目標から「戦略的に不可欠な地位」へ軸足を移す

欧州連合の半導体戦略は、主要経済圏の中でも最も目に見える形で、基本的な考え方を転換している。

2023年のEuropean Chips Actは、世界の半導体生産に占めるEUの比率を、およそ10%から2030年までに20%へ引き上げる目標を掲げ、430億ユーロ(約489億ドル、約8兆196億円)の投資枠組みを据えた。だが2025年4月、欧州会計監査院は厳しい評価を示した。2030年までに20%を達成するにはEUの生産能力をおよそ4倍にする必要があるが、「現在の進捗ペースでは、その水準にはほど遠い」と監査院のAnnemie Turtelboom氏は述べた。欧州の市場シェアは2022年の9.8%から、2030年には11.7%にとどまると予測されており、目標を大きく下回る。

それでも当初のChips Actは、公的・民間を合わせて520億ユーロ超(約592億ドル、約9兆7088億円)の投資を呼び込み、推計4万6000人の直接・間接雇用を生み、欧州の半導体研究・イノベーション能力を強化する成果を上げた。こうした進展にもかかわらず、EUは先端チップ製造や半導体設計などの主要分野で、依然として第三国に依存している。これに対し欧州委員会は2026年6月3日、より広範なTechnology Sovereignty Packageの一部としてChips Act 2.0案を公表した。認可手続きを加速して承認までの期間を最長12カ月以内に収めることや、AIチップを含む戦略技術の産業化を支援する「Grand Challenges」の立ち上げを目指す。

より重要なのは戦略の転換だ。数量目標をさらに追うのではなく、「戦略的に不可欠な地位」の確立へ明確に軸足を移している。つまり、欧州企業が実質的な競争上の優位性を持つサプライチェーンの領域を押さえる考え方である。GlobalFoundriesで欧州担当ゼネラルマネジャー兼シニアバイスプレジデントを務めるManfred Horstmann氏はEE Timesに対し、欧州企業には車載チップ、パワー半導体、決済用チップ、特殊用途の処理技術で確かな強みがあると語った。最先端ノードと巨額の資本を要するハイパースケーラー向け領域を追うことは、戦略的に理にかなわないという。「負けるしかない分野に投資してはいけない。勝てる分野に投資すべきだ」と同氏は述べた。

この論理は現在のEU政策に組み込まれている。Chips Act 2.0は、汎用チップを含む欧州の既存の強みを補強するとともに、最先端半導体技術の能力も育てる設計である。価値連鎖の中で不可欠なプレーヤーとしての地位を維持しながら、レジリエンスを高め、戦略的依存を減らすことを目指している。

■インドは初めてスタック構築に挑み、同時に国際連携も進める

インドの立ち位置は、他の3者と根本的に異なる。米国がかつて持っていた製造能力の回復を目指しているのに対し、インドはそれを初めて築こうとしている。

2026〜27年度連邦予算で打ち出されたIndia Semiconductor Mission 2.0は、エコシステムの創出から、その強化と国際的な統合への決定的な転換を示した。製造、設計、高度人材への支援を深めつつ、半導体を中核的な国家戦略能力として位置づけている。政府は2026〜27年度に1000クロール・ルピー(約1億400万ドル、約170億5600万円)を計上し、産業主導の研究・研修センターを重視する。長期目標には、2035年までの3nmおよび2nmプロセス技術の確立と、ファブレス・スタートアップ基盤の50社への拡大が含まれる。

人材パイプラインは中心的な柱だ。Lam ResearchはISMおよびIIMと提携し、10年間で半導体製造技術に携わるエンジニア6万人を育成する契約を結んだ。315を超えるインドの大学に最先端のEDAツールが整備され、これまでに6万8000人を超える専門技術者が育成された。一方で独立系アナリストは、課題がなお残ると警告する。インドの供給網は依然として半導体製造装置、特殊ガス、原材料への輸入依存度が高く、供給の寸断や外国による輸出規制のリスクに脆弱だ。

重要なのは、インドのアプローチが内向き一辺倒ではない点だ。ナレンドラ・モディ首相は、新たな自由貿易協定と計画中の投資協定を軸とするEUとの連携において、半導体が重要な柱になると明示している。オランダの外相Tom Berendsen氏も、この補完関係を直接表現した。「インドは膨大な工学人材、イノベーション能力、そして拡大する製造への意欲をもたらす。それはオランダの先進的なエコシステムと非常に強力な組み合わせになる」と述べた。インドは国内能力を築きながら、再編が進む世界の供給網で優先的なパートナーとしての位置取りも進めている。供給網の一角を主権の名の下に囲い込むのではなく、国際分業の中で存在感を高めようとしている。

Tata Electronicsは、台湾のPSMCとの数十億ドル規模の提携を通じて、グジャラート州ドレラでインド初の商用シリコン半導体ファウンドリーを整備している。最初のシリコン生産は2026年後半を目指している。

■どの国も解けていない問いは何か

技術主権を正しく理解するなら、それは完全な国内半導体サプライチェーンを意味しない。最も重要なチョークポイントを戦略的に制御することを意味する。アナリストが指摘するように、技術主権は自給自足とは異なる。重要技術への全面的な依存を避けるのであって、相互依存そのものをなくすことではない。この違いは、4つの戦略をどのように評価し、どの戦略が実際の目的に最も適しているかを判断するうえで、重大な意味を持つ。

Semiconductor Engineeringに掲載された、Baya Systemsのチーフ・コマーシャル・オフィサー、Nandan Nayampally氏によるスポンサーブログの分析は、この点を率直に示している。完全な半導体スタックを単独で運営している経済圏は存在せず、米国でさえ例外ではない。どの政策枠組みも、結局は同じ3つの問いに答えようとしている。国内で何を管理する必要があるのか、どこで相互依存を受け入れるのか、そしてそのためにどれだけの資本を投じるのか、である。

最も示唆的なのは投資総額ではなく、各戦略が何を手当てしなかったかにある。米国は歴史的規模でウエハー製造に資金を投じたが、AIチップの仕上げ工程である国内パッケージング、すなわちCoWoSについては、2028年以降まで台湾経由の状態が続く。EUは520億ユーロを動員したが、2030年時点の世界シェアは20%ではなく11.7%にとどまる見通しだ。他地域への長年にわたる製造集中を覆すには、資金が不十分だったためである。英国は意図的にファブ競争から距離を置き、投下資本当たりの価値が高い設計IPに賭けている。筋の通った考え方だが、大規模にはまだ実証されていない。インドは4者の中で最も明確な空白、すなわち最先端の国内ファブがまだ存在しないという課題を抱えながらも、最も国際統合志向の強い姿勢を取っている。

こうした賭けは、今後10年でTSMC、Samsung、Intel Foundryがどこに生産能力を積み増すかを左右する。また、CHIPS法型の補助金が動かした1兆ドル規模の投資フローとも相互作用し、場合によってはその流れを変える可能性もある。現在、米国の半導体主権を制約しているパッケージングの空白は、単なる技術的な問題ではない。他の主要経済圏が注視し、それを前提に戦略を組み立てている政策上のシグナルでもある。2650億ドル規模の投資であっても、当初から戦略上の優先順位を正しく定めることの代わりにはならない。

■注目ポイントQ&A

●なぜ米国はCHIPS法後も台湾でのチップパッケージングに依存するのですか?

CHIPS法による530億ドルの直接支援は主にウエハー製造、すなわちシリコン上にチップを製造する工程に向けられました。ロジックダイとHBMを組み合わせ、機能するAIアクセラレーターのパッケージに仕上げる先端パッケージングには、比較的少ない直接投資しか向けられなかったためです。その結果、フェニックスのTSMC Fab 21が約92%の歩留まりで4nmチップを生産していても、事実上そのほぼすべてが出荷前に台湾でCoWoSパッケージングを受けています。Amkor Technologyのアリゾナ施設やTSMCが計画するパッケージング工場による米国内のCoWoS生産能力は、少なくとも2028年までは稼働しない見通しです。この空白は、AIチップ供給の実質的な制約要因がウエハー製造ではなく、先端パッケージングにあることを示しています。

●Chips Act 2.0後のEUの半導体見通しは現実的にどうなりますか?

当初のChips Actが掲げた2030年の世界シェア20%という目標は、達成の可能性が極めて低いと独立機関から評価されています。欧州会計監査院は2025年の特別報告で、目標達成には2030年までにEUの生産能力を4倍にする必要があるとしましたが、現在の投資ペースでは届かないとみています。欧州のシェアは2022年の9.8%から、2030年には11.7%へ上昇するにとどまると予測されています。2026年6月に提案されたChips Act 2.0は、先端ノードでの量的シェアを追うのではなく、車載チップ、パワー半導体、決済用チップなど、欧州企業がすでに強みを持つ分野で「戦略的に不可欠な地位」を確立する方向へ軸足を移しています。

●インドの半導体戦略は現実的ですか。最大の障害は何ですか?

India Semiconductor Mission 2.0は、2035年までの3nm・2nmプロセス技術の確立、ファブレス企業50社、Lam Researchとの提携を通じた製造技術者6万人の育成といった意欲的な目標を掲げていますが、アナリストは構造的なリスクを指摘しています。インドの半導体供給網は現在、製造装置、特殊ガス、原材料への輸入依存度が高く、供給の寸断や主要供給国による輸出規制のリスクにさらされています。2026〜27年度の1000クロール・ルピーという予算規模も、最先端半導体の製造に必要な資本と比べれば控えめです。短期的には、先端パッケージング、OSAT(半導体の組み立て・テスト受託)、ファブレス半導体設計の方が、資本要件が低く、技術人材を生かせる、より現実的な競争優位の領域とみられています。

●「半導体主権」とは結局何を意味し、実現している国はありますか?

半導体主権は、完全な国内サプライチェーンを意味するのではなく、重要なチョークポイントへの全面的な依存を避けることを意味します。現在、完全な半導体スタックを単独で運営している国はありません。米国は最先端のウエハー製造でTSMCに、先端パッケージングで台湾に依存しています。欧州はEUV露光装置でオランダのASMLに依存し、先端ノードでは域外のファウンドリーに依存しています。英国はスーパーコンピューターに英国以外で製造されたハードウェアを使用し、インドには最先端の国内ファブがありません。真の競争は、世界に分散せざるを得ない供給網の中で、誰が代替不可能な存在になるかを巡るものです。この基準に照らせば、歴史的な費用を投じてフルスタックの再構築を目指す米国のアプローチよりも、欧州企業が容易には代替されない分野へ明確に軸足を移したEUの姿勢の方が、戦略的に妥当である可能性があります。

元記事: Global Chip Race Fractures Into Four Strategies: US Packaging Gap Remains After $265B Bet

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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