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わずか80分の睡眠不足が体重増加を招く:原因は食欲ではなく「活動量の低下」、コロンビア大が発表

(unsplash.com/Kostiantyn Trundaiev)[写真拡大]
毎晩の睡眠時間が推奨される7時間より約80分短いだけで、人は無意識のうちに活動量を減らし、体重増加につながることがコロンビア大学の最新研究で明らかになった。この研究は、睡眠不足による体重増加の原因が「食欲の増進」ではなく「座りがちな行動の増加」であることを示している。食事制限や運動だけでなく、睡眠不足そのものを解消することが、効果的な体重管理において極めて重要である可能性が浮き彫りになった。
■「食欲」ではなく「活動低下」が体重を増やす
多くの人は、6時間から6時間半程度の睡眠であれば、多少寝不足であっても日常生活に支障はないと考えがちである。しかし、生理的に必要とされる7時間以上の睡眠から約80分不足した状態が続くと、体に変化が生じることがコロンビア大学の厳密な対照試験で明らかになった。
学術誌『Annals of Internal Medicine』に掲載された研究によると、6週間にわたりこの睡眠不足の状態で過ごした成人は、平均で0.45キログラム(約1ポンド)体重が増加した。重要なのは、この体重増加が「食べる量が増えたこと」によるものではなく、「動く量が減ったこと」に起因している点である。
この発見は、体重管理のあり方を大きく変える可能性がある。従来の「疲労によって食欲が増し、食べすぎて太る」という仮説とは異なり、1時間20分の睡眠不足は人をより座りがちにさせ、その結果として体重が増加するというメカニズムが示された。
■コロンビア大学による厳密な「クロスオーバー試験」
コロンビア大学イルビング医療センターの睡眠・体内時計研究センター長であるマリー=ピエール・スト=オンジュ教授(栄養医学)率いる研究チームは、20歳以上の成人95人を対象としたデータを分析した。参加者は全員、心血管疾患や代謝疾患のリスクが高いものの未診断で、研究開始前は毎晩7時間以上の睡眠をとっていた。
研究は「ランダム化クロスオーバー設計」で実施された。参加者は「6週間の軽度な睡眠制限」と「6週間の十分な睡眠」の両方の期間を、4〜6週間のインターバルを挟んで体験した。これにより、各参加者が自分自身の対照群となり、睡眠と体重に関する研究で課題となりやすい個人差などの影響を排除している。
睡眠制限期間中、参加者は通常の起床時間は変えずに就寝時間を90分遅らせるよう指示され、実際の睡眠時間は平均して約78〜80分短縮された。睡眠状態は手首に装着するアクティグラフ(活動量計)と睡眠日記で継続的に記録された。
■6週間の睡眠制限がもたらした数値の変化
6週間の睡眠制限フェーズの後、参加者は十分な睡眠をとっていたフェーズと比較して、平均0.45キログラム体重が増加し、腹囲は約0.52センチメートル増加した。MRIスキャンによる体組成測定では全身の体積が0.56リットル増加したが、脂肪量と除脂肪量の比率に劇的な変化は見られなかった。これは、本格的な脂肪蓄積の前に、水分や組織の再分布が起きている可能性を示唆している。
血液検査では、脂肪細胞から分泌されエネルギーの充足を知らせるホルモン「レプチン」の空腹時レベルが平均2.03ナノグラム/ミリリットル上昇した。これは脂肪量の増加と一致するが、従来の「食欲の乱れ」説とは矛盾する。もし過食が原因であればレプチンは低下し、食欲を促す「グレリン」が上昇するはずだが、グレリンや別の食欲調節ホルモン「GLP-1」に有意な変化は見られなかった。
一方で、活動データは明確な事実を示していた。睡眠制限中、参加者は起きている時間が長くなったにもかかわらず、座っているなどの活動量の低い状態で過ごす時間が1日あたり約17分増加した。特に男性と閉経後の女性では、座りがちな時間が1日あたり約30分も増加していた。
コロンビア大学の栄養医学助教で、この研究の筆頭著者であるファリス・ズライカット氏は、「睡眠が短縮されたことで起きている時間が長くなったことを考慮しても、参加者は十分な睡眠をとっているときよりも不活発な状態で過ごす時間が長かった。座りがちな時間が長い人は慢性疾患のリスクが高まるため、これは注目すべき点だ」と述べている。
■「代謝の低下」説も覆る
睡眠不足による体重増加のもう一つの仮説として、「疲労によって代謝(カロリー消費)が低下する」というものがある。研究チームはこの点を検証するため、一部の参加者を対象に「二重標識水法(doubly-labeled water method)」を用いた。
二重標識水法は、水素と酸素の安定同位体で標識した水を服用してもらい、その排泄速度から総エネルギー消費量を精密に測定する手法であり、日常生活におけるカロリー消費測定のゴールドスタンダード(標準基準)とされている。
測定の結果、睡眠制限フェーズと十分な睡眠をとったフェーズの間で、総エネルギー消費量に有意な差は認められなかった。つまり、睡眠不足によって代謝が低下したわけではなかった。食欲ホルモンの変化もなく、代謝も低下していないとなると、残された原因は一つしかない。睡眠不足の成人は、起きている時間が長くなったにもかかわらず、無意識のうちに活動量を減らしていたのである。
■なぜ食事制限だけでは不十分なのか
このメカニズムは、実生活において重要な意味を持つ。座りがちな行動は、運動習慣の有無とは独立した心血管・代謝疾患のリスク因子である。毎日ジムで運動していても、それ以外の時間に座っている時間が長ければ、代謝リスクは高まる。
スト=オンジュ教授は、「十分な睡眠をとることは、体重増加や、心臓病や糖尿病などの肥満関連疾患のリスクを減らすのに役立つ可能性がある」と指摘する。また、「体重増加を抑えるために、健康的な食事や運動量アップだけに焦点を当てるのは単純化しすぎており、維持するのも難しい」と述べている。
今回の研究に関与していないイリノイ大学医学部の内分泌学者シリモン・ロイラクル教授は、今回の結果は既存の証拠と一致していると指摘する。ロイラクル教授が挙げた2022年の研究では、慢性的な睡眠不足の人が睡眠時間を延ばしたところ、1日あたりの摂取カロリーが約270キロカロリー減少したという。睡眠を十分に確保することが、行動や代謝の悪化を逆転させる可能性を示している。
■1年間に換算すると「臨床的に意味のある」体重増加に
過去の睡眠研究の多くは、睡眠時間を4〜5時間に制限する極端な設定で行われており、食欲ホルモンの急増を招いていた。しかし、現実世界で慢性的な睡眠不足に悩む人々(シフト勤務者、介護者、スマートフォンを夜遅くまで使う人など)の多くは、毎晩1〜2時間の睡眠不足が数ヶ月から数年にわたって続いている。
6週間で0.45キログラムの増加はわずかに思えるかもしれないが、ズライカット助教は「これがわずか6週間で起きていることを忘れてはならない。このペースが1年間続けば、約3.6キログラム(8ポンド)の体重増加となり、糖尿病や心血管疾患のリスクを高める臨床的に重大なレベルに達する」と警告する。
なお、本研究にはいくつかの限界もある。参加者95人という規模はクロスオーバー試験としては適切だが、年齢や性別、代謝サブグループごとの違いを確実に検出するには小さい。また、参加者は心血管・代謝疾患のリスクがもともと高い人々であり、若く健康な成人や、すでに高度な肥満がある人にそのまま当てはまるかは不明である。
それでも、今回の結果は、夜更かしをして睡眠時間を削るという日常的な行動が、いかに全身の生理的・行動的変化を引き起こすかを浮き彫りにしている。
■注目ポイントQ&A
●毎晩2時間未満の睡眠不足でも、本当に体重は増えるのですか?
はい、今回の厳密な対照試験で実証されました。毎晩約80分の睡眠制限を6週間続けた参加者は、十分な睡眠をとっていた時期と比べて平均約0.45kg体重が増加し、腹囲も増加しました。
●睡眠不足のときに食べる量が増えていないのに、なぜ太るのですか?
主な原因は、無意識のうちに日中の活動量が低下し、座っている時間が増えるためです。研究では、睡眠制限中に座りがちな時間が1日平均約17分(男性や閉経後の女性では約30分)増加しました。一方で、食欲を促すホルモンや代謝(消費カロリー)には大きな変化は見られませんでした。
●体重増加を防ぐためには、具体的に何時間の睡眠が必要ですか?
米国睡眠医学会は成人に対して毎晩7時間以上の睡眠を推奨しており、今回の研究結果もそれを支持しています。毎晩約7.5時間の睡眠を維持していた期間には、体重の増加は見られませんでした。
●ダイエットや運動よりも、まず睡眠を改善すべきでしょうか?
睡眠は食事や運動と並ぶ重要な要素として位置づけるべきです。睡眠不足による活動低下が体重増加の原因である場合、睡眠を改善せずに食事制限や運動だけで解決しようとするのは、根本原因を放置して症状だけを治療することになりかねません。
元記事: Losing 80 Minutes of Sleep Per Night Causes Weight Gain via Inactivity, Not Appetite
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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