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SKハイニックス、26年ぶりにサムスンを一時逆転:HBM4増産を抑えDDR5の「高利益」を優先する戦略へ
韓国の半導体大手SKハイニックスが、時価総額で一時サムスン電子を上回る歴史的な局面を迎えた。同社は次世代AIメモリ「HBM4」への移行ペースを意図的に落とし、供給不足で価格が高騰している汎用DDR5 DRAMの利益確保を優先する方針と報じられている。この戦略転換は、2027年にかけてサーバー調達を計画する企業にとって、DDR5の高値維持という直接的な影響をもたらす可能性がある。
■26年ぶりの首位交代と市場の激震
韓国のKOSPI市場において、25年以上にわたり首位に君臨し続けてきたサムスン電子の牙城が、一時的に崩された。2026年6月22日、メモリ半導体大手のSKハイニックスの株価が5.6%上昇し、普通株の時価総額が2,080兆ウォン(約1.35兆ドル、約218.7兆円)に達した。これにより、サムスン電子の2,067兆ウォン(約217.3兆円)を上回り、2000年11月以来初めて首位に躍り出た。
この逆転劇はわずか1取引日ほどで幕を閉じた。翌6月23日にはKOSPI市場全体が急落してサーキットブレーカーが2回発動し、両社の株価はともに12%以上下落。同日午後の取引終了までにサムスンが時価総額首位を奪還した。しかし、この出来事は単なる一時的な株価の節目にとどまらず、世界のAIサーバーやエンタープライズ向けラック、高性能計算(HPC)クラスターに搭載されるメモリコンポーネントに波及する、韓国半導体経済の構造変化を浮き彫りにした。
サムスン側は、時価総額の比較には優先株を含めるべきだと即座に反論した。優先株を合算した場合、サムスンの総時価総額は終値時点で約2,246兆ウォン(約236.1兆円)となり、SKハイニックスを大きく上回る。しかし市場はこの主張を受け入れず、韓国取引所のインデックスランキング基準である普通株時価総額において、SKハイニックスが首位として記録された。
この逆転劇は、驚異的な1年を象徴している。6月22日の終値時点で、SKハイニックスの株価は年初来で340%以上上昇していたのに対し、同期間のサムスンの上昇率は約193%にとどまっていた。メリッツ証券のシニアアナリストであるキム・ソンウ氏は、ロイター通信が引用した声明の中で「カスタマイズされたAIメモリの登場が業界の収益構造を根本的に変え、SKハイニックスが市場リーダーとしての地位を確立することを可能にした」と指摘している。
■HBMの製造アーキテクチャがもたらす供給のボトルネック
この財務的な動きの背景には、一般的な市場報道で見落とされがちな、半導体エンジニアリング上の厳しい現実がある。それは、1ギガバイト(GB)の高帯域幅メモリ(HBM)を製造するには、1GBのDDR5を製造するのに比べて約3倍のウェハー容量を消費するという事実だ。
HBMは単に高速化したDDR5ではない。アーキテクチャが根本的に異なる製品であり、製造プロセスもはるかに複雑である。従来のDDR5モジュールは、シリコンウェハー上にプリントされた平面的(2次元)なDRAMダイを回路基板にハンダ付けして構成される。これに対し、HBMは8〜12層のDRAMダイを垂直に積層し、「シリコン貫通電極(TSV)」と呼ばれる数千本の微細な銅チャネルを介して接続する。
さらに、この積層されたダイは「Chip-on-Wafer-on-Substrate(CoWoS)」と呼ばれる高度なパッケージング技術を用いて、GPUやAIアクセラレータと同じシリコンインターポーザー上に直接接合される。パッケージングされたHBMは、製造後に汎用メモリと交換することができず、アクセラレータの設計に構造的に組み込まれる。これが、SKハイニックスの強力な価格決定力の源泉となっている。
このアーキテクチャによって実現する1024ビットのバスインターフェースは、1スタックあたり毎秒1テラバイト(TB)を超える帯域幅(DDR5チャネルの約20倍)を提供するが、その分だけ多くのシリコン面積と追加の製造工程を必要とする。垂直積層プロセスは歩留まりを低下させ、TSV形成は工程を増やし、CoWoSパッケージング自体がボトルネックとなっている。結果として、HBM生産に投入されるウェハー1枚につき、DDR5の供給チェーンから同等のウェハー3枚分が失われることになる。SKハイニックス、サムスン、マイクロンなどのメモリメーカーが2024年から2025年にかけて生産能力をHBMに振り向けたため、DDR5の需要が増えなくても供給が急激に縮小し、現在の深刻な不足が生じることとなった。
■DDR5の高マージンが変えるHBMの経済学
2026年4月23日に発表されたSKハイニックスの第1四半期決算は、売上高52.58兆ウォン(前年同期比198%増)、営業利益37.61兆ウォン(同405%増)、営業利益率72%と、半導体製造業界の過去最高記録を樹立した。これは同期間のエヌビディアの利益率(65%)を上回ると報じられている。
韓国メディアのChosun Biz(朝鮮ビジネス)によると、HBMは現在、SKハイニックスの総売上高の40%以上を占めている。同社は世界のHBM市場で推定57〜62%のシェアを握り、エヌビディアのAIアクセラレータ向け主要サプライヤーとなっている。ゴールドマン・サックスは、エヌビディアの次世代プラットフォーム「Rubin(ルービン)」向け注文の約3分の2を同社が確保したと予測している。
こうした状況下で、6月23日に報じられた戦略は一見、逆説的に映る。Chosun Bizが業界関係者の話として報じ、TrendForceも確認したところによると、SKハイニックスはHBM3E(第5世代HBM)生産ラインの一部で予定されていたHBM4への移行を延期し、その容量を汎用DDR5 DRAMの生産に再調整しているという。
その理由は純粋に経済的なものである。アナリストの予測によると、今年のDDR5の営業利益率は90%近くに達する見通しだ。DDR5は1GBあたりの単価はHBMよりはるかに低いものの、ウェハー面積あたりの収益性ではHBMの価格決定力に匹敵する。既存のHBM3EラインをDDR5に転換すれば、HBM4への移行に伴う巨額の投資サイクルを経ることなく、供給不足の市場から高いマージンを回収できる。TrendForceによると、DDR5の契約価格は2026年第1四半期だけで前四半期比90〜95%上昇し、第2四半期もさらに58〜63%上昇した。
業界関係者はChosun Bizに対し、「容量拡大のための過度な競争に加わるよりも、供給不足が深刻な汎用DRAM市場で追加の利益を確保するために資源配分を調整している」と語った。また、SKハイニックスはマイクロソフトと3年間のDDR5供給契約を締結したとされ、RubinプラットフォームからのHBM4需要が本格化するまでの間、汎用メモリ部門から長期的な収益見通しを確保したとみられる。
■DDR5高騰の背景とサーバー調達への影響
1年前には100ドル(約1万6200円)未満で販売されていたDDR5メモリキットが、現在では小売市場で300ドル(約4万8600円)を超えることが珍しくなく、エンタープライズ向けモジュールも同様に高騰している。原因は一時的なものではなく構造的だ。AIデータセンターの需要急増に伴い、メーカーがウェハーをHBM生産にシフトしたため、DDR5の供給が急激に絞られた。
新たな供給をもたらすウェハーファブの稼働は、2027年中期まで期待できない。SKハイニックスの清州(チョンジュ)M15X施設も同様のスケジュールである。それまで、エンタープライズバイヤーはDDR5モジュールの高値を前提に予算を組む必要がある。
なお、SKハイニックスのDDR5シフトはHBMの供給を削減するものではない。HBM3Eラインの一部をHBM4に転換せずDDR5モードに維持するだけであり、HBM3Eは2026年を通じてHBM出荷全体の約3分の2を占めるとTrendForceは予測している。
■サムスンの反撃:HBM4で10億ドルの売上を達成
SKハイニックスがHBM4に対して慎重なアプローチをとる中、サムスンは迅速に動いた。サムスンは2026年2月12日に第6世代HBM4チップの量産を世界で初めて開始。6月23日までに、サムスンのHBM4の累計売上高がわずか4ヶ月で10億ドル(約1620億円)を突破し、6月末までに12億ドル(約1944億円)を超える見通しであると、Korea HeraldやKorea Timesが業界関係者の話として報じた。
サムスンのHBM4は、最下部のロジックダイに4nm FinFETプロセスを採用し、優れた性能と電力効率を実現している。顧客リストにはエヌビディア、AMD、グーグル、アマゾン、マイクロソフト、メタ、ブロードコムが含まれ、エヌビディアの「Vera Rubin」プラットフォーム向けに設計されている。
SKハイニックスは依然としてエヌビディアの主要サプライヤーであり、ゴールドマン・サックスはRubin向けHBM4ボリュームの60〜70%を同社が供給すると予測している。しかし、サムスンがエヌビディアの顧客評価プロセスを通過して勢いを維持すれば、SKハイニックスの支配的地位を脅かす可能性がある。モルガン・スタンレーは、今サイクルの半導体収益成長の主な原動力は、特定のHBMシェア争いよりも、全カテゴリーにわたるメモリ価格の上昇であると指摘しており、SKハイニックスのDDR5シフトの戦略的合理性を支持している。
■KOSPI急落の背景と投資家への示唆
6月22日の逆転劇の翌日、韓国市場は歴史的な急落を記録した。6月23日、KOSPI指数は過去最大の下げ幅となる約10%下落し、サーキットブレーカーが2回発動。SKハイニックスとサムスンはともに12%以上下落した。
しかし、この急落は事業のファンダメンタルズを変えるものではない。SKハイニックスの驚異的な利益率は、一時的なセンチメントではなく構造的な需要シフトによるものだ。急落が浮き彫りにしたのは、サムスンとSKハイニックスの2社でKOSPI全体の時価総額の50%以上を占めるという、インデックスの構造的リスクである。韓国金融サービス委員会(FSC)は、急落前にハイテク株の過熱やレバレッジ型半導体ETFについて警告を発しており、これらの強制決済が下落を増幅させたとみられる。
KB証券のピーター・キム氏は、半導体の上昇サイクルを終わらせる最大の要因である「過剰供給」が発生するのは「少なくとも数年先」であるとし、今回の急落は構造的破綻ではなくデレバレッジ(債務圧縮)イベントであるとCNBCに語った。キウム証券のハン・ジヨン氏も「利益確定の圧力による短期的な現象」と分析している。投資家が注目すべき次の指標は、米国時間6月24日の取引終了後に発表されたマイクロン・テクノロジーの決算であり、これがAIメモリ需要と価格見通しの試金石となる。
■SKハイニックス、ナスダック上場へ:7月10日を目標に申請
2026年6月24日、SKハイニックスの取締役会は、ナスダック・グローバル・セレクト・マーケットへの米国預託証券(ADR)上場(ティッカーシンボル:SKHY)を進めることを決議した。同社は米証券取引委員会(SEC)にForm F-1登録届出書を提出し、発行済み株式の約2.5%に相当する最大1779万株の新株を発行する計画を開示した。取引開始は早ければ7月10日を目指す。
これは重複上場(セカンダリー・オファリング)であり、主要上場先は韓国取引所のままである。ADR上場の目的は、韓国株を直接保有しにくいグローバル投資家へのアクセス拡大と、龍仁(ヨンイン)半導体クラスターやM15X施設などの設備投資資金の調達である。米国上場が成功すれば、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)への将来的な組み入れ対象となり、機関投資家への認知度がさらに高まる。SKハイニックスは5月下旬に時価総額1兆ドル(約162兆円)の大台を初めて突破し、TSMC、サムスンに並ぶアジアで3社目の1兆ドル企業となった。
■2027年に向けたエンタープライズバイヤーの備え
メモリ市場の現状は、価格高騰と供給制限が続き、主要メーカーが増産よりもマージン最適化を優先していることを示している。カウンターポイント・リサーチの予測によると、世界のメモリ市場(DRAMおよびNAND)は2027年までに1.5兆ドル(約243兆円)を超え、サーバーメモリのシェアは2025年の50%未満から57%に上昇する見通しだ。
新たなウェハー容量(SKハイニックスのM15Xやマイクロンのアイダホファブ)の稼働は2027年中期、サムスンの平沢(ピョンテク)P5工場は2028年まで生産開始に至らないと予測されている。したがって、高密度サーバー構成向けのDDR5モジュールは、2026年後半から2027年にかけて高値が維持される。HBM3Eが2026年を通じて供給の主流であり、まとまった量のHBM4供給は2026年第3四半期以降になる見通し(TrendForce予測)。
SKハイニックスのDDR5シフトは、HBM需要のピークアウトを意味するものではない。同社はエヌビディアの2026年向けRubinプラットフォーム用HBM割り当てをほぼ確保したとされており、サムスンとHBM4のシェア争いをする余裕がある。AIメモリの構築は依然として加速しており、半導体メーカーはかつてないほどの価格決定力を保持している。
■注目ポイントQ&A
●SKハイニックスが一時的にサムスンの時価総額を抜いたのはなぜですか?
AIアクセラレータに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)市場での圧倒的なシェアを背景に、同社の株価が2026年6月22日時点で年初来340%以上急騰したためです。半導体に特化している同社はAIインフラ投資の恩恵を強く受け、2026年第1四半期の営業利益率は業界最高水準の72%を記録しました。翌日には市場全体の急落によりサムスンが首位を奪還しています。
●高帯域幅メモリ(HBM)とは何ですか?なぜAIに必要なのですか?
複数のDRAMダイを垂直に積層し、シリコン貫通電極(TSV)で接続した特殊なメモリです。従来のDDR5の約20倍に達する毎秒1テラバイト以上の帯域幅を提供します。膨大なデータを高速で処理する必要があるAIアクセラレータ(GPUなど)のボトルネックを解消するために不可欠であり、製造段階でGPUと一体化してパッケージングされるため、他製品への代替が難しい特徴があります。
●DDR5の価格は2027年に下がりますか?
2027年半ばまでは大幅な価格下落は期待しにくいとみられています。SKハイニックスがHBM4への移行を遅らせてDDR5の生産を維持する戦略をとっているほか、主要メーカーの新規ファブの稼働が2027年中期から2028年にかけてとなるため、供給不足が長期化する見通しです。
●SKハイニックスのナスダック上場はいつ予定されていますか?
同社取締役会は2026年6月24日にナスダックへのADR上場を決議し、米証券取引委員会(SEC)に申請書を提出しました。早ければ2026年7月10日にも取引が開始される予定です。
元記事: SK Hynix Dethroned Samsung After 26 Years: Now Choosing DDR5 Profits Over HBM4 Ramp
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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