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ナノサイズ端末でDNA情報をその場で読み取り可能に 東大らが開発

ヒータ内蔵型ナノポアを用いた局所熱によるDNAの一本鎖化とその場1分子検出の様子を表した図(画像: 東京大学の発表資料より)[写真拡大]
東京大学、産業技術総合研究所などは7月30日、DNAの塩基配列をその場で読み取ることができるナノデバイスを開発した発表した。
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ナノポアと呼ばれる微小な孔をDNAが通過する際に生じる、周囲を流れる電流の変化から、塩基配列を読み取るもので、非常に小型で、消費電力もごくわずかであることから、将来的には、スマートフォンや携帯型の診断装置に組み込まれる可能性もあるという。
■ナノポアとは?
ナノポアは、ナノメートルサイズの微小な孔で、ここをDNAが通過すると、その塩基配列に応じて、周囲を流れる電流が変化する。このため、この電流の変化を捉えることで、逆にDNAの塩基配列を読み取ることができる。
このナノポアには、生体ナノポアと固体ナノポアの2種類がある。生体ナノポアは特殊なたんぱく質の構造に存在する微小な孔のことだ。壊れやすく、製造におけるばらつきも大きい。
これに対して、固体ナノポアは、硬い材料でできた膜に半導体加工技術を使って開けた微細な孔だ。このため非常に頑丈で、長持ちし、製造におけるばらつきも少ない。
ただこれまでは、生体ナノポアが主に使われてきた。DNAの塩基配列を読み取るには、2本鎖であるDNAを1本鎖に分解する必要があるが、固体ナノポアでは、これができなかったからだ。
■ナノヒータでDNAを1本鎖に分解
そこで研究グループは、ナノポアの周囲に白金でできたらせん状のヒータを設置し、DNAを、ナノポアを通過する直前に局所的に加熱し、1本鎖に分解することに成功した。
このときヒータに流される電力は、2ミリワット程度のごく微量の電力で足りるという。
研究グループが、ラムダファージと呼ばれる主に大腸菌に感染するウイルスのDNA(4万8,502塩基対)など、数千から数万の塩基数のDNAで実験したところ、DNAが1本鎖に分解されたことが確認された。4万塩基を超えるDNAを固体ナノポアにおいて1本鎖に分解することに成功したのは、世界でも初めてだという。
今回の開発は、がんや感染症の診断、個人に最適な医療を提供する個別化医療、災害現場や医療機関外での迅速な遺伝子検査といった多様な医療ニーズに答えるものとなる。さらに研究グループでは、非常に小型で、消費電力もごくわずかであることから、スマートフォンなどに組み込まれ、誰もが手軽に遺伝子情報にアクセスできる時代を切り開く可能性を秘めているとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
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