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2024年業績総括
石橋秀一氏(以下、石橋):代表執行役Global CEOの石橋です。2024年業績総括と2025年事業計画について、ご説明します。
まず、2024年業績です。中国EV攻勢などによる自動車業界構造変化や、南米、欧米を中心とした廉価輸入品の増加など、タイヤ業界構造変化の加速が「新たな脅威」となる中、為替の追い風もあり、対前年では増収増益となりました。売上収益が約4兆4,000億円、調整後営業利益が4,833億円、調整後営業利益率が10.9パーセントとなりました。
継続事業からの当期利益は2,850億円、ROICは8.2パーセント、ROEは再編・再構築費用の計上が約1,000億円あり8.1パーセントと、いずれも前年を下回る着地となりました。
再編・再構築(第2ステージ)に早期に着手し、プレミアムフォーカスの徹底と、販売MIXの改善を推進し、強固なプレミアムタイヤビジネス基盤を強化中です。また、グローバルビジネスコストダウン活動において、約750億円の効果を創出し、業績を下支えしました。
しかしながら、ビジネス悪化が顕著となった南米ブラジル事業を中心に、業績回復スピードに課題を残しています。加えて、日本タイヤ・化工品・多角化事業の収益性悪化などにより、2024年8月に発表した通期業績見込みを下回る結果となりました。
株主還元については、1株当たりの配当金は210円を想定し、2月の計画から変更しません。これらの結果を踏まえ、2025年を「緊急危機対策年」と位置づけ、質を伴った成長に向けて「守り」を固めつつ、「攻め」の活動で将来への布石を打っていきます。
2024年業績総括:グローバル全体像
業績推移を見ると、2021年以降、調整後営業利益率、ROIC、ROEといった、稼ぐ力や資本効率が下降しています。強い危機感を持って、2025年を「緊急危機対策年」として、強いビジネス体質を築くことに注力します。
2024年業績総括/2025年事業計画:北米
2024年業績について、重点経営課題エリア別に詳細をご説明します。課題となっていた北米事業は、為替の追い風もあり、対前年で増収増益となりました。乗用車用タイヤでは、新車・市販用の双方で、販売本数が対前年で減少しましたが、市販用ブリヂストンブランドの20インチ以上の超高インチタイヤについては、販売本数が対前年112パーセントと拡売しました。
TBタイヤでは、市販用ブリヂストンブランドにおいて、対前年108パーセントの拡売となり、業績が回復しました。プレミアムタイヤビジネスの基盤を強化し、プレミアムタイヤ事業全体では、調整後営業利益率14パーセントレベルを確保しました。
2025年には、事業拠点とコストを最適化し、収益性を改善していくとともに、米国消費財ビジネスの再構築や、TBタイヤのフリートビジネス強化など、成長路線に舵を切り、再び質を伴った成長をスタートします。
2024年業績総括/2025年事業計画:南米
南米事業は多くの課題があり、対前年で減収減益、赤字の着地となりました。アルゼンチンでは、ダメージコントロールにより、ブレイクイーブンレベルまで業績を改善することができました。
しかし、ブラジルでは、廉価輸入品の増加による構造変化に対応不足があり、赤字が継続しています。2025年1月には、アルゼンチン・ブラジルの各拠点で、生産能力と人員の削減を発表しました。「南米事業の形を変える」再構築をもう一段強化し、2025年の黒字化を図ります。
2024年業績総括/2025年事業計画:欧州
課題となっていた欧州事業は、対前年で増収増益となり、最悪期を脱却しました。プレミアムタイヤ事業では、市販用パッセンジャータイヤで増収増益となりました。課題の多かったTB・小売・リトレッドにおいても、赤字幅が改善しています。また、小売のオペレーション改善、減損など、早期に着手した事業再構築が、業績に貢献し始めています。
2025年には、プレミアムフォーカスをさらに強化し、「欧州事業の形を変える」再編・再構築(第2ステージ)の検討を続けるとともに、TB・小売・リトレッドの黒字化を図り、より“質"にフォーカスします。
2024年業績総括/2025年事業計画:Specialties プレミアムタイヤ・ソリューション事業
強みである鉱山・航空機などのSpecialtiesタイヤソリューションは、増益を達成しました。鉱山用タイヤでは堅調な販売を継続し、航空機用タイヤにおいても拡販し、収益性が大幅に向上しました。2025年においても、高収益を維持し、プレミアムタイヤとソリューションとの連動を深めることで、質を伴った成長を推進していきます。
2024年業績総括:事業ポートフォリオ別
2024年の事業ポートフォリオ別の業績です。コア事業であるプレミアムタイヤは、調整後営業利益率で約14パーセントレベルを維持し、成長事業であるソリューション事業は、対前年で増収増益を達成しました。一方で、化工品・多角化事業は課題が深く、大幅な減益となりました。2025年は再構築に取り組んでいきます。
2025年「緊急危機対策年」から、「強いブリヂストン」、稼ぐ力の強化、2026年「真の次のステージ」への道筋
以上の結果を踏まえ、2025年の事業計画をご説明します。2025年は「緊急危機対策年」と位置づけ、新たなグローバル経営チームで熟慮断行します。「守り」と「攻め」の活動を両輪で回すことにより、2026年には「真の次のステージ」へ、歩みを進めていきたいと考えています。
事業再編・再構築(第2ステージ)進捗:グローバル全体像
「守り」の活動については、2024中期経営計画で実行した第1ステージに続き、2024年には再編・再構築(第2ステージ)へ着手しました。2025年はもう一段強化していきます。米欧を中心に構成するBRIDGESTONE WEST(以下、WEST)では、一部収益性への貢献がスタートしています。
日本・アジア・インドなどで構成するBRIDGESTONE EAST(以下、EAST)では、経営課題が多く残る日本タイヤ事業・化工品・多角化事業での再構築を、スピード感をもって進めています。
事業再編・再構築(第2ステージ)進捗:WEST(北米・南米、欧州)
特にWESTでは、昨年「欧州事業の形を変える」再構築に着手しています。
昨年9月にベルギー ランクラーのリトレッド工場閉鎖の意図を開示しました。また、同じく欧州にて生産・販売・技術センター・コーポレート機能の効率化を進めるとともに、TBと小売の再構築の検討も加速していきます。
米国では、2025年1月24日に、TBタイヤを生産するラバーン工場の閉鎖、AGタイヤを生産するデモイン工場の生産能力及び人員削減、米国のコーポレート機能及び販売、オペレーション機能の人員削減について発表しました。これにより、米国事業拠点の最適化を図り、競争力を強化し、ビジネスの質を向上させることで、プレミアムタイヤ事業を強化します。
ブリヂストンは、1988年のファイアストン社買収以降、米国にウォーレン、エイケンといった新工場建設や、2,200店の直営小売店網、技術センターなどへの投資を通じて、米国の社会・経済、地域社会に貢献してきました。
現在では、米国内に従業員約3万4,000人、24の事業拠点と2,200店の直営小売店を構え、グローバル売上収益の4割を占めるブリヂストン最大のオペレーションとなっています。今後も米国での地産地消のポリシーは変えず、生産や小売りを含めた販売を強化・拡充していくことで、米国の社会及び経済に貢献し、人とモノの移動を支え続けていきます。
また、WEST全体の組織を統合し、ソリューション、タイヤ販売、財務、R&D、生産など、米欧の各機能をシンプル化しています。
シン・グローカル経営体制進化:厳しい規律をしっかり持った経営を実行
経営体制の面からも、「守り」を固めています。1月1日からシン・グローカル経営体制を進化させ、4人の副社長を設置しました。WEST/EASTの事業責任(Profit & Loss 責任)と、Global CTO、Global CAO、Global CSOの「横串・グローバル最適責任」を明確にしました。
それぞれが対等の立場で役割責任を果たすことで、ガバナンス強化のチェック&バランスを担保し、「実行と結果に拘る」経営をスタートしました。
2025年「攻め」プレミアムタイヤ事業-プレミアムフォーカス&グローバルビジネスコストダウン活動加速
このような「守り」を基盤に、「攻め」の活動も推進しています。
プレミアムタイヤ事業においては、プレミアムフォーカスとグローバルビジネスコストダウン活動を加速します。乗用車用OEタイヤにおいては、「ENLITEN」技術による「究極のカスタマイズ」を軸に、プレミアム車種やプレステージOE&プレミアムEVへのアプローチを強化します。2025年には、約170車種に「ENLITEN」搭載商品を新車装着する計画です。
また、高インチタイヤの新車装着も拡大し、米欧では2025年に、新車用高インチタイヤ販売比率を約75パーセントに引き上げ、その回帰需要を取り込む市販用でも、販売比率を約45パーセントとしています。
さらに、プレミアムタイヤブランドを含む販売比率を60パーセント超としていきます。「ENLITEN」は、乗用車用(市販用)タイヤで今年累計約30商品を投入し、搭載率を35パーセントへ拡大します。
さらに、グローバルビジネスコストダウン活動については、グローバル調達、グローバルサプライチェーンマネジメント物流改革、BCMA、グリーン&スマート化、地道な生産性向上の活動により、2024中期経営計画のターゲットである約1,000億円を1年前倒しで達成するスピードで、実行しています。
2025年「攻め」成長市場 “質を伴った成長”へ
今後は、米国事業、インド事業、及び生産財系BtoBソリューションを、新たに成長市場として位置づけ、質を伴った成長を牽引していきます。米国事業では、消費財ビジネス再構築に注力し、ブリヂストンとファイアストンブランドの特徴を活かした「断トツ商品」や、新たな販売体制を構築し、マルチブランド戦略を強化していきます。
特にファイアストンブランドのリバイタライゼーションでは、"America's Tire Since 1900"という米国で伝統あるブランド力を活かし、新商品を投入します。直営2,200店舗を持つファイアストンオートケアネットワークの拡充や、ファイアストンディーラー網なども強化し、ユニークポジションを確立していきます。
さらに、LTE領域でのBtoBソリューションとの連動も進めます。鉱山・航空ソリューションでは、リアルとデジタルを融合させ、お客さまとの共創をベースとしたソリューションを拡充しています。
鉱山ソリューションでは、BHP社やコマツ社との共創拡大、航空ソリューションではJAL社との共創を大型機にも拡大します。加えて、TBソリューションでは、「Bridgestone Fleet Care」を米国で拡大し、カスタマーサクセス活動を強化します。
2025年事業計画:グローバル全体像
「守り」と「攻め」を反映した2025年業績見込みをご説明します。売上収益は、「確からしさの高い」販売をベースに4兆3,300億円、為替を除く前年比では102パーセントとなります。調整後営業利益は、除く為替で前年比111パーセントの5,050億円を見込みます。調整後営業利益率は、前年比約1パーセントアップの12パーセントレベルを目指します。重要な経営指標であるROICは、9.2パーセントまで回復を見込んでいます。
一方で、2025年も、約1,000億円レベルの再編・再構築(第2ステージ)のリソースを、調整項目に計上しており、継続事業からの当期利益は前年比減の2,530億円、ROEは7.2パーセントとなる見込みです。
「緊急危機対策年」とする2025年中に、再編・再構築をやりぬきます。
2025年事業計画:前提条件
主要な前提条件として、為替は1ドル145円を想定し、天然ゴムの素原料単価においては、前年比上昇を見込んでいます。また、新たな経営課題として、トランプ政権下での追加関税の影響について注視していきます。
現状では、メキシコ・カナダへの25パーセントの追加関税、4月2日からの自動車関税導入など、動向が定まっておらず、今回の対外発表の業績予測には織り込んでいません。社内外の関係先へのインパクトも大きいため、拙速には動かず、想定されるケースを検討し、複数のシナリオを構築して、迅速に対応できる体制の整備を進めています。状況を正しく見極め、適切なタイミングで、素早く実行プランを発動していきます。
また、2025年の北米、南米を合わせた米州地域の地産地消率は、パッセンジャーが約9割、TBが約8割です。米国だけでは、パッセンジャーは約6割、TBは約7割となります。地産地消を基本とするポリシーは今後も変更なく、生産・販売ともに、成長市場である米国において強化していきます。
2025年事業計画:事業ポートフォリオ別
2025年事業ポートフォリオ別の業績見込みです。プレミアムタイヤ事業は、継続して営業利益率14パーセントレベルを確保します。ソリューション事業は、前年比140パーセントの大幅増益を見込みます。
化工品・多角化事業は深い課題がありますが、事業再構築や着実な改善活動により、調整後営業利益率は6パーセントレベルを目指していきます。
2024年業績総括/2025年事業計画 リソースアロケーション:設備投資/研究開発費 「メリハリ強化」
リソースアロケーションについても、厳選しながら将来への布石を着実に打っていきます。設備投資は、2024中期経営計画では、3年間の合計で約1兆4,000億円を計画していましたが、事業環境の激減を踏まえて、メリハリを強化しました。2025年は約4,000億円、2026年も同レベルを想定しています。修正2024中期経営計画では、2024中期経営計画1兆円レベルから、20パーセントアップの約1兆2,000億円を見込んでいます。
ブリヂストンらしいステークホルダーへの貢献の考え方-「最高の品質で社会に貢献」
ブリヂストンは、「最高の品質で社会に貢献」という使命のもと、E8コミットメントを価値創造の軸として、株主さま、お客さま、従業員、パートナー、地域社会、サステナブルな社会など、すべてのステークホルダーのみなさまへの貢献を最大化していきたいと考えています。
株主さまに向けては、資本効率アップ、株主還元強化を推進し、株主価値をアップします。従業員に向けては、経営KPIである人的創造性向上を基盤に、1人当たり人財投資額アップ、メリハリをつけた報酬アップを進めていきます。
サステナブルな社会については、CO2削減をはじめとしたカーボンニュートラル、再生可能資源比率の向上などによるサーキュラーエコノミー、事業に直結している「天然ゴム・水資源の持続可能な利用に向けた活動」に注力するネイチャーポジティブな活動を着実に前進させています。
2025年 資本政策&株主還元強化―「ブリヂストンらしさ」を軸に次のステージへ
資本政策と株主還元の強化については、「ブリヂストンらしさ」を軸に、「次のステージ」への取り組みを開始しました。「稼ぐ力の強化」を通じて収益性を向上させ、戦略的成長投資を厳選して実行することで、質を伴った成長を実現し、持続的な企業価値の向上を図ることを基本スタンスとします。
これを支えるため、2025年は、財務健全性を維持しつつ、資本効率向上との両立を図るため、自己株式取得を3,000億円・7,500万株を上限として実施し、取得した株式の全数消却を予定しています。また、自己株式取得では、2,000億円レベルの負債と1,000億円レベルの手元流動性を活用します。
これらにより、自己資本比率は2024年の65パーセントから、2025年には60パーセントレベルとなり、中期的には55パーセントレベルを目指していきます。外部・内部環境の変化を考慮し、着実に段階的に近づけていく方針です。
株主還元については、2024年の配当予想210円から20円アップし、2025年は230円を予想しています。安定的かつ継続的に配当額を向上させていきます。また、連結配当性向は、業界トップレベルの50パーセントへ引き上げます。
“質を伴った成長”を支えるキャピタルアロケーション
“質を伴った成長"を支えるため、キャピタルアロケーションについてもアップデートしました。キャピタルアロケーションの源泉は、手元流動性や借入を活用します。2024中期経営計画から営業キャッシュ・フローは減少しますが、2024中期経営計画と同レベルの約2兆1,000億円を確保しています。
これを企業価値向上に資する施策へ配分します。戦略経費・投資で構成する戦略リソースは、2024中期経営計画期間で約6,000億円を厳選投入するとともに、株主還元の充実を図る方針へとアップデートしています。
「真の次のステージ」へ向けて
事業環境は激動の渦中にあり、今年も厳しい状況が見込まれます。グローバルで脇を締め、ビジネス体質を強化し、徹底して「守り」を固めることを最優先に、「攻め」も着実に実行することで、将来への成長に向けた道筋を切り拓いていきたいと思います。
ブリヂストン創立100周年となる2031年に実現したい姿を達成するために、「強いブリヂストン」へ進化、「稼ぐ力の強化」を推進し、2026年には「真の次のステージ」へ進みます。引き続き、ご理解、ご支援のほど、よろしくお願いします。
目次
菱沼直樹氏(以下、菱沼):2024年決算について、スライドに記載したアジェンダに沿って、ご説明します。
2024年通期 連結業績
2024年通期連結業績からご説明します。2024年通期の連結業績は、前年比で増収増益、調整後営業利益率は10.9パーセントでの着地となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は2,850億円となりました。
第2四半期において、固定資産売却益として約630億円を調整項目に計上しました。一方で、将来の収益性改善のための再編・再構築(第2ステージ)を加速させ、関連損失費用を計上したことにより、前年比で減益の着地となっています。
なお、調整項目の内訳については、後ほどご説明します。ROICについては8.2パーセントと、前年比0.5ポイントのダウンとなりました。
2024年通期 調整後営業利益増減要因:前年差
調整後営業利益の対前年増減要因について、ご説明します。販売MIXの改善や生産現場改善活動を含むビジネスコストダウンに加え、為替円安の追い風もあり、南米事業の悪化や販売本数減少の影響を吸収し、対前年で若干の増益で着地しました。
2024年通期 セグメント別業績
セグメント別業績です。アジア・大洋州・インド・中国及び欧州・中近東・アフリカでの収益性は、前年比改善した一方、日本、米州での収益性は、前年比低下での着地となりました。米州では、北米において、トラック・バス用タイヤの販売が回復したものの、乗用車/ライトトラック用タイヤの販売数量の減少、南米事業における対前年大幅減益などを背景に、収益性が低下しました。
欧州・中近東・アフリカでは、高インチタイヤの拡販によるMIX改善に加え、再編・再構築の効果も一部貢献し、収益性が向上しました。
2024年通期 財別業績
財別業績についてご説明します。乗用車/ライトトラック用タイヤは、販売数量が減少した一方で、市販用における高インチタイヤの拡販・構成比アップを背景に、前年並みの利益率を維持しています。
トラック・バス用タイヤは、通期では前年並みの業績となっていますが、北米市販用を中心に前年比で販売伸長が継続しており、第3四半期に続き、第4四半期も、前年比で収益性改善が継続しています。
Specialtiesについては、収益性の高い鉱山用タイヤソリューションの堅調な販売、航空機用タイヤソリューションビジネスの伸長に加え、為替円安の追い風もあり、前年比で増益となりました。利益率も0.7ポイント改善して22.3パーセントと高い収益性で着地し、連結全体の業績を下支えしています。
化工品・多角化事業については、次でご説明します。
2024年通期 化工品・多角化事業 事業別業績
化工品事業については、油圧ホース・クローラ事業において、建機需要減を背景に前年比で販売減の影響が大きく、減収減益となり、利益率も低下しています。
スポーツ・サイクル事業については、サイクル事業の減益の影響が大きく、前年比で減益、営業赤字での着地となりました。米州多角化事業については、大型トラック・トレーラー向けなどの事業環境の厳しさに加え、EV関連の新規ビジネス立ち上げコストの負担が重なり、前年比で減益での着地となりました。
2024年通期「調整項目」について
調整項目です。通期で400億円の費用方向で着地しており、主な内訳はスライドに記載したとおりです。第2四半期に六本木社宅の売却益633億円を計上した一方で、再編・再構築(第2ステージ)を加速しており特に、欧州、中国、南米等において、減損損失や事業再編・再構築関連費用を計上しています。
2024年通期 財政状態計算書およびキャッシュ・フローハイライト
財政状態計算書及びキャッシュ・フローの状況です。資産合計は5兆7,235億円となり、前年比(除く為替)で減少しました。特に、商品及び製品については、リーンな在庫管理を継続徹底し、前年比(除く為替)で減少しています。
現金及び現金同等物の月商比や自己資本比率に関しては、効率性の観点から改善を計画しており、後ほどご説明します。
フリーキャッシュ・フローについては、営業キャッシュ・フローが前年比で悪化したものの、固定資産売却益などのキャッシュインもあり、2,938億円の収入となりました。設備投資については、経営資源が限られる中で、将来に向けた投資と再編・再構築の両方のバランスをとりながら厳選投入した結果、総額は3,898億円となりました。
2025年通期 連結業績予想
2025年通期の連結業績予想について、ご説明します。2025年の連結業績予想は、売上収益4兆3,300億円と、前年比(除く為替)で2パーセントの増収、調整後営業利益は5,050億円と、前年比(除く為替)で11パーセントの増益を見込んでいます。
調整後営業利益率については11.7パーセントと、前年比で0.8ポイントの改善を見込んでいます。当期利益は、事業再編・再構築による一過性の費用発生を見込んでおり、前年比11パーセントの減益で2,530億円、ROEは前年比0.9ポイントの悪化を見込んでいます。
「稼ぐ力の強化」を通じて、ROICについては1ポイントの改善を見込んでいます。
2025年通期 調整後営業利益増減要因予想:前年差
調整後営業利益予想の対前年増減要因について、ご説明します。グローバルでの市販用タイヤの販売伸長、及びプレミアムタイヤ拡販による販売数量MIX改善を進め、再編・再構築の効果も織り込み、調整後営業利益は前年比(除く為替)で547億円の増益を見込んでいます。
2025年通期 セグメント別業績予想
セグメント別業績予想についてご説明します。米州セグメントについては、前年比(除く為替)で増収増益、利益率も2ポイントの改善を見込んでいます。
北米での市販用トラック・バス用タイヤの販売伸長、事業再編・再構築を、利益率改善の主なドライバーとして見込んでいます。
欧州・中近東・アフリカセグメントについては減収も増益となり、利益率は1.6ポイントの改善を見込んでいます。高インチタイヤ拡販によるMIX改善に加え、昨年実施した再編・再構築の効果が、2025年は面積で貢献し、収益性改善を見込んでいます。
ブリヂストンの持続的な企業価値向上に向けた取り組み
財務戦略・株主還元について、ご説明します。当社は、「収益性向上」「成長投資」といった「稼ぐ力の強化」によるROICの向上、並びに財務戦略によるWACCの低減の両面で、ROICスプレッドの向上に取り組むとともに、エクイティスプレッドの拡大を通じて、持続的な企業価値向上に取り組んでいます。
今回、財務戦略も新たなステージへと向かうべく、「ブリヂストンらしさ」を軸に、最適なバランスシートの具体化とアップデートをしました。
最適なバランスシートに向けて
スライドに、中期的にありたいバランスシートのご説明を記載しています。
2024年末時点で、自己資本比率は65パーセントと、想定を上回るペースで財務健全性が改善しています。当社は、ROICとWACCのスプレッドを拡大させること、バランスシートマネジメントを通じてエクイティスプレッドを拡大させることが、企業価値向上に資すると考え、健全性と効率性を両立した資本構成に改善していく方針です。
「ブリヂストンらしさ」を軸に最適資本構成を検討し、手元流動性を月商1.5ヶ月レベル、中期的にありたい自己資本比率の水準を55パーセントに設定しました。
ありたいバランスシートに向けて、着実に段階的に近づけていきます。また、最適なバランスシートは、事業ポートフォリオによって変化するため、今後も引き続きアップデートをしていきます。
2025年に実行する資本政策
2025年に具体的に実行する資本政策の内容です。企業価値の向上に資する投資、最適資本構成に向けた施策として、3,000億円を上限とする自己株式の取得を実施します。原資として、2,000億円レベルの資金調達と1,000億円の手元流動性を活用する予定です。
配当-株主還元
配当についてです。株主還元の充実化、また適切な水準で資本をコントロールするための施策として、今回より配当性向を50パーセントに変更しています。2024年の年間配当金は210円、対前年10円の増配、2025年についてはミニマムで230円、対前年20円の増配を予定しています。
今後も、安定的かつ継続的な配当額向上に努め、株主還元の充実を図っていきます。
質疑応答:タイヤ業界の外部環境について
質問者:非常に厳しい環境下で、御社の施策で打ち返そうとしていることを理解しました。昨年は、四半期ごとに「環境が厳しい」という発表が続いていたと思いますが、現状、タイヤ業界の外部環境として、好転の兆しがある地域や財などはありますか?
相変わらず逆風を受ける2025年になるのでしょうか? 環境的にもう少し改善すれば、御社の施策も非常にポジティブなほうに効いてくると思うので、期待も込めておうかがいしたいです。
石橋:おっしゃるとおり、「厳しい、厳しい」という話ばかりでしたが、ようやく昨年から米国でのトラック・バスの需要が上がってきて、我々のビジネスも上がってきました。
1月に、私も米国のディーラーミーティングに参加しました。生産財系のディーラーやフリートが非常に堅実な印象でしたし、我々の施策もしっかりと浸透してきたと思っています。米国の、特に生産財系は期待できると思っています。
米国の消費財は、確かに厳しいです。まさに関税の関係で、どのようなかたちになっていくのか、不透明なところがありますが、米国の生産財系は良くなると考えています。
また、大きくはありませんが、インドのビジネスも着実に伸びています。我々はトップポジションをキープしていますので、期待しているところです。
そのような意味では、環境としては、北米が今後少し良くなっていくと感じています。ただ、我々のアクションとしては、消費財についてもマルチブランドで、特にファイアストンをさらに活用して、ティア(tier)2だけではなくティア3にも対抗していきます。新しいブランドで舵を切っていきますので、それを期待したいです。
質疑応答:関税が上昇した場合の施策について
質問者:関税がかかるようになった際、業界のトップの会社として、関税上昇分をカバーするためにどのような施策をとっていくのでしょうか? 先ほどの説明にもう少し追加してご説明をお願いします。
石橋:関税については、さまざまなプランを想定しながら、シミュレーションをしている最中です。価格の転嫁にも、やり方があります。最終消費者や、当然カーメーカーもある中で、価格の転嫁の問題となります。
どのような国に、どのようなかたちで、実際に関税が施行されるかわからないので、グローバルにあるサプライチェーンネットワークの中で、どのようにうまく組み立てていくかを検討しています。これは我々の1つの強みなので、上手に活用していきたいです。
当然、米国の現地の生産性向上のために、さらにモノを作っていくことも大前提になってきます。このような組み合わせの中で、関税のインパクトを軽減していくためのアクションや体制を、グローバルで整えているところです。
質疑応答:価格ディシプリンや価格戦略について
質問者:2025年の業績計画でご説明いただいた増減要因についておうかがいします。売値のプラス590億円について、価格の指数連動を除くと300億円強の増益を見ているとのお話でした。原材料がマイナス300億円ほどなので、原材料を吸収しようしているように見えます。これに関して、価格ディシプリンや価格戦略は、基本的には変わっていないのでしょうか?
菱沼:売値についてはご指摘のとおり、売り全体でいうと、来年は590億円のポジティブ要素です。そのうち、RMI及びR&F、つまり市況連動の部分が280億円です。差し引きすると、いわゆるリプレイスでの売値の部分が310億円です。
これに対して、原材料のマイナスが290億円ですので、確実にスプレッドを維持します。基本的な価格ディシプリンは変わっていないとご理解ください。
石橋:付け加えてお伝えします。先ほどお話ししたとおり、今年は「ENLITEN」の新商品をブリヂストンブランドで徹底的に出していきます。ファイアストンブランドは1年遅れますが、新商品を出しながら、しっかりと価値を認めていただいて、適正な価格に持っていくことを基本的な考え方としています。新商品とプレミアムブランド、そして高インチタイヤのMIXを含めて、上げていくという考え方を持っています。
質疑応答:ラバーン工場の閉鎖と供給面について
質問者:米国の生産財に関しておうかがいします。TBのラバーン工場の閉鎖と供給面については、特に問題なく、スムーズに対応できるという理解でよいでしょうか?
石橋:問題ないと思っています。我々は、生産性が非常に高く、品質の良いウォーレン工場を持っています。生産面では、そこで強めていきます。TBの場合は、まだまだ生産能力があるため、それについては北米のウォーレン工場を活用します。足りないものは、南米や日本からサポートしますが、米国にある主力のウォーレン工場はしっかりしているため大丈夫だと考えています。
質疑応答:再編・再構築の費用投入ペースと成果について
質問者:再編・再構築のリソースについて、2025年も約1,000億円というかなり高いレベルを投じると思いますが、現状の発表を見るとそこまで金額は大きくならないと想像しています。
この後、具体的な案件がアナウンスされるのかというヒントをください。また、もともと調整後営業利益率13パーセントやROIC10パーセントというターゲットがあったと思いますが、2024中期経営計画最終年度の2026年は、これをきちんと達成できる準備が整うという理解でいいのでしょうか? 投入する費用のペースと、その成果がどのようなレベルで出てくるのか教えてください。
事業環境が不透明だということは当然認識していますが、どのような姿を狙っているのかという観点でお話しいただければと思います。
石橋:実は2025年の1,000億円の中で、かなり大きな部分がラバーン工場の閉鎖にかかるリソースになります。
一方、ROICは我々の重要な指標だと思っており、2024中期経営計画最後年度の2026年に、10パーセントくらいまで持っていくベースで、いろいろな活動を組み立てています。
当然、ROEも11パーセントに近づける想いで取り組んでいますし、調整後営業利益率も次は12パーセントから13パーセントに近づけることを目指しています。こちらは2025年にしっかり取り組んで、体質を良くしていきます。現在は、次の成長に向けて種をまいていますが、体質を良くした中で拡販に向かっていきます。
そうすることで、稼働率ももう一段上がります。2026年に2024中期経営計画のトップラインは厳しいとは思いつつも、ターゲットとする数字に近づけるように取り組んでいます。
菱沼:再編・再構築の費用については、2024年、2025年はおのおの1,000億円程度で、合計約2,000億円の費用を計上しています。これはノンキャッシュの部分もあるため、そのままキャッシュというわけではありません。
2025年に関しては、約400億円のリターンを計画に織り込んでいます。当然、2026年にかけてはリターンが少し上積みされて累積で効いてきます。そして体質が良くなるイメージを持っていただければと思います。
質問者:前半で「守り」側の施策がいろいろ実行されて、後半からは成長に向けたトップライン等の改善と、2年間で取り組まれたものの成果が、400億円のプラスアルファで乗っかるという時間軸をイメージすればよいですか?
菱沼:そうですね。すでに2025年は400億円程度発現すると見込んでいます。それにプラスアルファが2026年に効いてくると思います。案件はおのおのタイムラインが決まっているため、それに応じて発表することになります。
質疑応答:今後の経営計画について
質問者:最適なバランスシートに向けて、前期末と今期末の変化をお示しいただいていますが、中期的にありたい姿として、自己資本比率55パーセントを掲げています。
「2030年 長期戦略アスピレーション」に、このような時間軸の話があるのでしょうか? 2024中期経営計画最終年度の2026年の後の中期経営計画も出てくるため、そこがスコープとして入っているのでしょうか? どのくらいでこのような姿に持っていきたいというお話をしているのか、時間軸のヒントをください。
石橋:2025年の状況についても、米国のトランプ政権の動きなどいろいろなことがあると思います。そのような意味で、「早急に、来年はこれを行っていきます」という話ではないと思っています。
我々は、きちんと議論して「中期的に」という言葉を使っています。そのような意味では、2025年は60パーセントレベルまで持っていきます。その後は3年ぐらいの話になりますが、2027中期経営計画の中で実現していくタイムフレームで考えています。
質疑応答:長期的な経営方針とプライオリティの置き方について
質問者:御社の長期的な経営方針の考え方をあらためて教えてください。例えば、2025年の計画は利益5,000億円の微増、投資は引き下げる一方、株主還元を上げるというイメージです。これまでの「1に成長、2に財務、3に還元」という明確な順番があったところから見ると、その順番が並列関係になっているように思います。
これは非常にいい意味で言うのですが、石橋さまの就任以降、成長にプライオリティを置いているように思います。実際に就任してみて、ブリヂストンの長期的経営の落としどころが「もう少しマイルドな成長がいいよね」「マージン追求よりROEかな」などと、変わってきているように思います。
「2030年 長期戦略アスピレーション」で描かれたような事業戦略や利益目線、KPIを含めて、考え方がどう変化したのでしょうか? 長期的な経営方針、プライオリティの置き方について教えてください。
石橋:基本的にビジネスであるため、質の伴った成長を大前提で行っています。資本政策面を含めて資本効率を上げていくことも、非常に大きな課題だと捉えています。
2023年、2024年と、私としては新しいソリューションなどいろいろなことに挑戦しました。しかし、リスクマネジメントを含め、足りなかったところがあると思っています。我々の経営品質や業務品質という点でも、まだ十分ではないと反省しています。
脇を締めて、経営・業務品質をしっかり立て直し、地に足着いた仕事をしながら着実に次に持っていきたいと考え、2024年の夏頃からいろいろ議論してきました。
ご存知のように、2025年1月1日から新しいグローバルの経営チームに変わりました。それもその一環です。まずは脇をしっかり締めて、規律を持って仕事をしていき、そして成長にまた持っていきたいと考えています。
米国でいろいろな課題が出てきたため、地に足着いたかたちで仕事をしながら、質を伴った成長に向けてお金を投入していきます。
少ししゃがんでいると判断されていると思いますが、これは意志を持って少ししゃがんでいきます。そして質にフォーカスして次のステージへと持っていきます。決して成長をギブアップしているわけではなく、成長、資本効率、還元の貢献をステークホルダーのみなさまに対して最大化していきます。
これらは、2024年から経営チームや取締役会で議論した内容です。我々としては、これをしっかりと行うために稼ぎ成長することを、もう一度みんなで確認して仕事に取り組もうと思います。
株主さまに対する貢献や資本効率という点についても、「次のステージにこの段階でいこう」というような議論をしています。今は「守り」に入っている中で、資本政策については次のステージに来ています。
順番の入り繰りがあるように見受けられると思いますが、基本的にはやはり人とモノと成長をベースにしていきたいと思っています。
質問者:基本的に「2030年 長期戦略アスピレーション」の、例えば15パーセント強といったマージンに対する考え方や成長に対する考え方は変わらず、ただ道筋が少し前半はスローになり、後半は確度が高くなるようにアロケーションを変えているという考え方でよろしいでしょうか?
石橋:そうです。付け加えると、アスピレーションの後、ソリューションをかなり上げていくプランにしていましたが、試行錯誤の中でBtoBは今でも3,500億円くらいのレベルになっています。これはずっと伸びていくというのは変わりませんが、BtoCはいろいろなかたちで失敗したこともありました。
その部分についてはPDCAを回して落としていきます。そして、BtoBソリューションはもっと強めていく方向に変わってきているのも事実です。
この市場環境で我々が行っていることをきちんとレビューしながら、着実にその次に持っていきます。ただ、コア事業と成長事業という大きな戦略方向は変わらないという考えです。
質疑応答:調整後営業利益について
質問者:2025年の調整後営業利益は5,050億円の5パーセント増益ということですが、事業再編・再構築効果が400億円入ったり、北米のトラック・バスが戻ってきたりする割には、少し物足りない予算に見えます。この計画について、保守性などの考え方をもう少し教えてください。
また、2026年には調整後営業利益を2024中期経営計画の13パーセントに近づけたいとのことですが、2025年から2026年の段差で、事業再編・再構築がどれくらい上積みできそうですか? 13パーセントに持っていくための施策に自信がある部分はどれくらいあるのか教えてください。
石橋:2023年、2024年は、みなさまにコミットしたトップラインが達成できなかったという反省があります。それは南米や欧州など、新しい環境のもとで変わってきたということがありますが、コミットできなかったことが大きな反省点です。
2025年は体質を良くします。トップラインを上げることで利益を増加させるよりも、トップラインは非常にコンサバティブに見て、今は102パーセントぐらいですが、体質を良くします。
要するに、グロスマージンを上げていきます。経費を落としていくことで利益を出すことを、2025年の大きな柱としています。
トランプ政権の影響は別として、2025年、2026年に向けて基本的にはトップラインを今から伸ばしていく方向に舵を切っていきます。グロスマージンや経費率などをマネージしながら、2026年は次のステージにいきたいと考えています。
営業利益、調整後営業利益、ROE、ROICが全部ポジティブになってくるという思いです。そこで事業再編・再構築の貢献も入ってきます。
菱沼:2025年に織り込んでいるのは、先ほどご指摘もあった400億円程度です。これは累積で効いてくるため、2026年にも400億円プラスアルファが入ってくると想定しています。今の段階でそれがいくらかというのは言えませんが、まずは2025年にやり遂げることが大事だと思います。今は具体的な金額を言えないことをご容赦ください。
質疑応答:今期の計画と構造改革について
質問者:2025年の計画と事業再編・再構築について質問です。スライド23ページを見ると、2025年は200億円増益ですが、ソリューション事業で300億円、化工品・多角化事業で100億円増加し、プレミアムタイヤ事業が100億円減益するかたちになっています。400億円の事業再編・再構築の効果が、どのようなところでこの計画の中に入っているのか教えてください。
また、2026年に6,400億円を目指すにあたり、従来挙げていたヨーロッパ、南米の構造改革やタイ、日本での物流網の改革などはどうなるのでしょうか? 事業再編・再構築費の1,000億円はほとんどラバーン工場閉鎖に使われるのでしょうか?
今後、損益が計画以上に膨らんで、来期に構造改革効果が出ていきますが、それを発表していないため、この計画だと1,000億円くらいの損になっています。実力ベースのところに400億円がどう入り込み、構造改革も現段階で発表していないから入れていないような状況で、2026年に弾みをつけるものが今後出てくるのか教えてください。
菱沼:400億円がどこに入っているのかについて、利益増減でいうと加工費が約400億円のうちの4割程度、営業費が約4割、南米事業で残りの2割程度が計画として織り込まれています。
石橋:2026年に6,400億円というお話でしたが、AOP、ROE、ROICのパーセンテージは大きく、それを達成するために挑戦していますが、絶対額というトップラインが当初の見込みよりも落ちているのは間違いありません。特に南米は従来300億円から400億円儲かっていたところが、今はマイナスの状態からスタートしています。欧州は、今からかたちを変えていきます。
そのような状況の中で、トップラインがどこまでいけるかというのは、今からの勝負となります。したがってROICやROE、AOPが体質というかたちで、そこに持っていくシナリオです。
北米については、かなり対外的に発表していますが、他のところで発表できないこともあります。そのようなことも含めて、今後、ビジネスの質を良くすることができるということです。
質問者:ラバーン工場閉鎖とリトレッドのランクラー工場閉鎖の影響は、2025年に行い、2026年に刈り取るというイメージでしょうか?
石橋:リトレッドの件は、2025年に黒字にしていこうと考えています。ただし、グローバルのリーガル部門と話しながら作成していますので、ここにはっきり書いていない項目もあります。できるだけ情報を共有して、IRを含めて透明性を上げていこうと思っていますが、難しいところで、お示ししているものが目一杯ということをご理解ください。
質疑応答:配当の増加と自社株買いについて
質問者:2025年の収益環境について、中国の廉価タイヤの増加など収益環境がかなり不透明な中でも株主還元策の充実に踏み切った背景を、もう一度教えてください。
また、2025年の調整後営業利益は増益の考えをお示しされていますが、その達成に向けてどのようなリスクがあると考えていますか?
石橋:まず、資本政策についてです。2020年に弊社の自己資本比率が50パーセントまで落ちました。その後、厳しい中でも着実に自己資本比率が上がり、65パーセントになりました。財務的な安定性・健全性が非常に上がってきています。
このような中で、我々が目指す55パーセントのギャップも含めて、資本政策も次のステージにいくために自社株買いを行っています。
株主還元については、従来配当性向が40パーセントくらいだったものを50パーセントにしていきます。業界でもトップレベルの配当性向だと思いますが、そのようなかたちでしっかりと株主還元を強化していきます。
それでも、我々の財務健全性は担保できると踏んで、2025年の自社株買いと配当を予想しました。2025年の業績をベースに考えていきますが、2024年、2025年は事業再編・再構築にリソースを投入します。そのため事業再編・再構築によってもたらされる利益の確実性は非常に高いと思っています。
事業再編・再構築の効果が2025年は400億円として貢献してくるとご説明しましたが、その確実性が高いものをベースにして組み上げているのが2025年の予算です。
トップラインは2パーセントしか伸びない、かつ利益を出していく組み立てになっているため、確実性の高い財務計画をベースにさまざまな判断をしています。
最大のリスクは、米国のオペレーションが売上の4割を占めていることです。トランプ政権がメキシコ、カナダからの関税を25パーセントにすると発表しましたが、当社はカナダに1工場、メキシコに2工場あります。
鉄についても、タイヤの中にはスチールコードがあります。サプライヤーを含めて、米国が輸入しているものがたくさんあるため、ネガティブインパクトもあります。
我々の大切なお客さまであるカーメーカーについても、車に対するいろいろな関税がいまだ不透明です。それが一番のリスクです。関税について無傷なわけではありませんから、どうやって影響を軽減していくかが重要なポイントになってきます。
現在、最悪の事態を想定しながら、ブリヂストンの強みを活かしてマイナスをどう軽減するかが問われており、一番のリスクだと考えています。
質疑応答:自動車のEV化について
質問者:自動車のEV化のペースについて、これからの状況をどのように予測していますか? それに伴う御社への影響と対応策を教えてください。
石橋:トヨタ自動車社が掲げるマルチパスウェイというかたちで、米国でもハイブリッドが売れています。グローバルでEVが少しトーンダウンしているのは、みなさまもご存知だと思います。
私どもは、EVではなくプレミアムの車に集中的にビジネスをしたいと考えています。EVだけでビジネスをしていくのではなく、プレミアムのところでできるだけ価値を認めていただき、貢献したいと考えています。
当然、プレミアムだけではないビジョンもありますが、そのような方向で取り組んでいます。確かにEVはトーンダウンしていますが、ハイブリッドやプラグインハイブリッドを含めた車の 高インチ化はグローバルに進んでいます。それに対してしっかりとビジネスにしていくことが、我々の基本的な考え方です。
カーメーカーに納めて、取り替え需要をアフターマーケットでしっかりビジネスを取っていくという組み合わせのため、EV化のスローダウンは我々にとって大きなネガティブインパクトではありません。
質疑応答:米国での生産能力増強について
質問者:米国の関税への対応について、現地の生産強化を大前提にどう組み立てていくかという趣旨のお話がありました。現在発表しているもの以外に、米国での生産能力の増強は新たなものが一定数出てくると考えたほうがよいですか?
石橋:基本的に地産地消を行っています。例えば、乗用車用タイヤの地産地消率は、米国だけでいうと6割です。
一方でその稼働率は100パーセントで回っていません。生産能力という点ではまだ余裕があります。生産能力には、設備能力と人的能力がありますが、需要に合わせて生産能力の最適化をグローバルで考えています。
米国でも、生産性が高くてコストの低い工場もあれば、生産性が低くてコストが高い工場もあります。グローバルで最適化することがサプライチェーンマネジメントになります。
関税がどうなるかはわかりませんが、非常に高くなった時には、米国で相対的にコストが上がっても、米国の稼働率を上げて生産することでメリットがあるということは、どのメーカーでもいえると思います。関税が上がるという前提では、米国でたくさん作っていくのが基本だということです。
質疑応答:化工品・多角化事業について
質問者:化工品・多角化事業について質問です。2025年の見通しでは、売上収益が2,900億円レベルで横ばい、調整後営業利益が400パーセント強、事業再建・再構築で利益が上がるというお話でした。
前期は油圧ホースとクローラの販売が落ちていましたが、2025年はそれらの需要をどれぐらい見込んでいますか? また、「深い課題」とおっしゃっていましたが、事業再建・再構築の部分はどのように取り組まれるのでしょうか?
石橋:化工品でいうと、2024年は残念ながら油圧ホースとクローラが期待を下回りました。多角化でいうと、自転車事業と米国の空気ばね事業が期待を下回りました。
これは、事業環境が急速に変わってきているためです。簡単に言うと、需要が落ちてきています。クローラや自転車の需要が落ちているのに対応が遅れたことになります。
空気ばねについては、乗用車系とトラック系の空気ばねがあります。乗用車系は電気自動車に多く入っていますが、これは将来を見越して投資しています。投資が先行しているため、厳しいことはわかっていましたが、現在トラックメーカーのビジネスが厳しいため、トラック向けの空気ばねが難しい状況です。
油圧ホースは、建機メーカー、農機メーカー、補修事業としてのビ
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