超大質量ブラックホールはどのように生成? 謎解明に繋がる発見 早大らの研究

2023年12月21日 10:08

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すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC) で撮影されたブルドッグの画像。3種類のフィルターで撮った画像をそれぞれ青、緑、赤の擬似カラーで表した合成画像。ブルドッグで青い光の超過があることが分かる。(画像: 早稲田大学の発表資料より)(c) NAOJ / HSC Collaboration

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC) で撮影されたブルドッグの画像。3種類のフィルターで撮った画像をそれぞれ青、緑、赤の擬似カラーで表した合成画像。ブルドッグで青い光の超過があることが分かる。(画像: 早稲田大学の発表資料より)(c) NAOJ / HSC Collaboration[写真拡大]

  • クェーサーの進化に対する理論的な予想シナリオ。(画像: 早稲田大学の発表資料より)(c) 登口ら

 銀河の多くはその中心に超大質量ブラックホールが存在する。だがそれがなぜ誕生するのかについては、まだよくわかっていない。

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 この疑問の解決の糸口になるかもしれない天体として、クェーサーの存在があげられる。クェーサーとは、銀河中心の超大質量ブラックホールが周りにある物質を吸い込み、凄まじい量のエネルギーと光を放出しているもので、100億光年を超える彼方にあったとしても、その存在をはっきりと確認できるほどだ。

 超大質量ブラックホールがクェーサーとして輝くまでのプロセスを、時間をさかのぼって探っていけば、最終的には超大質量ブラックホールがどのようにして誕生したのか解明できるかもしれない。早稲田大学は15日、このようなアプローチに関する研究成果を発表した。

 今回の研究は、早稲田大学、信州大学、愛媛大学、国立天文台、台湾中央研究院天文学・天体物理学研究所らによるもので、その成果は12月14日、米国「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されている。

 クェーサーが光を放つ前段階と考えられている、ドッグ (Dust-obscured galaxy: DOG)という天体がある。クェーサーもドッグもこれまでの観測により、それらを特徴づけるスペクトルが判明しているが、両者のスペクトルの特徴を有する天体も存在する。

 今回の研究では、そのような天体が青く光る特徴を持つことから、ブルドッグ(Blue-excess DOG: BluDOG)と名付け、詳しい観測を実施。その結果、8個のブルドッグを特定し、それらがクェーサーとして輝く前段階で塵を外部に放出している天体であることを突き止めた。

 このブルドッグのスペクトルは、2022年から観測開始したジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって、120~130億光年彼方の宇宙で発見された極めて赤い天体 (Extremely red object: JWST-ERO) のスペクトルと、よく似ていることを突き止めたという。つまり、クェーサー形成が130億光年前の宇宙初期の段階で既に始まっていたことが明らかになったわけだ。

 現在、超大質量ブラックホールの生成は、ガスを多く持つ銀河同士の合体に端を発し、塵に覆われた爆発的な星の形成段階を経て、ドッグ、ブルドッグ、クェーサーへと進化をたどるシナリオが予想されている。今回の研究により、それらのプロセスを説明するデータの骨組みが整ったことになる。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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