利上げを見送った英国は、深刻な貧困問題も!?

2023年10月28日 08:59

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●英国中銀が利上げ見送り

 英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は9月21日の会合で、政策金利を5.25%に据え置くと発表し、2021年12月の会合から続いた利上げが14回連続でストップした。

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 英国経済の減速と鈍化を受けてのことだが、ベイリー総裁は利上げがまだ終了していないことを強調した。会合は5対4の僅差で決まり、5.5%への利上げを主張する委員もいた。

 一時は消費者物価指数(CPI)が前年同月比10%で上昇していた英国は、先進国で最も貧困化しているとも言われている。

 英国の状況は、日本や他国にとっても対岸の火事ではないのだろうか?

●貧困化する英国

 9月に発表された5-7月の賃金は前年比7.8%上昇し、実質賃金も22年3月以来のプラスへと転じた。一方で、失業率は4.3%と高い水準にあり、2021年7‐9月以来の高さとなっている。

 英国はロシアのウクライナ侵攻の影響が大きく、光熱費と食費で年間30万円以上の負担増となっている。

 ホームレスの子どもの数が2004年の統計開始以来過去最多となっており、フードバンクの利用も過去最高となっている。

 英国の7人に1人が食料を買えず、飢餓に直面しているとも言われている。働いていても貧困が解消されないという事態となっている。

●他国も同様なことが起こるのか?

 英国の場合は他国とは違う事情もある。それは2020年1月に正式にEUを離脱した、いわゆる“ブレグジット”である。

 ブレグジットによって、様々なコストが増大し、貿易障壁を嫌気されて輸出入が減少。投資も労働力も減るという悪循環に陥っている。

 長期的なGDPの落ち込みも予想され、公的収入の減少により、給付金が減らされて貧困対策に回せないという意見もある。社会保障の削減ということも今後考えられる。

 病院などの公的機関に務める労働者もフードバンクを利用せざるを得ないケースもあり、ストも発生。さらにサービスの低下や混乱も起きている。こうなれば、利上げだけで解決できる問題ではなくなる。

 日本では英国のような問題が起こることは考えにくいが、賃金が物価上昇に追いつかないことで、景気全体が悪化するということは警戒しなくてはならないかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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